第14回
ポジティブな自己対話は、エフィカシーも高めてくれる
2019.05.16更新
臆病、意地っ張り、せっかち…。あなたは自分の「性格」に苦労していませんか? 性格は変えられないというのはじつはウソ。性格とは、人が生きていく上で身に付けた「対人戦略」なのです。気鋭の認知科学者である苫米地英人博士が、性格の成り立ちや仕組み、変え方などを詳しく解説します。
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ポジティブな自己対話は、エフィカシーのレベルも引き上げてくれます。
エフィカシー(efficacy)とは、「自分の目標達成能力に対する自己評価」のことです。
これに対し、「自分の存在そのものに対する自己評価」のことを「セルフ・エスティーム(self-esteem)」といいます。
マイナスの自己対話を行う人は、エフィカシーも低くなりがちです。
たとえば、コンペで負けたときに「やっぱりダメだった。自分の発想力のなさが嫌になる」と思ったり、同僚との出世競争に敗れたときに「自分には行動力も統率力もないからなあ」と思ったりすると、やはり脳がその情報をインプットしてしまい、どんどんエフィカシーを下げてしまうのです。
すると、この人にとっては、「ダメな自分」がコンフォート・ゾーンになり、ホメオスタシスがそこに向かって作用するため、ますます行動ができなくなり、発想も浮かばなくなるという悪循環が起こりやすくなります。
しかし、ポジティブな自己対話を繰り返していると、エフィカシーが高くなり、自分自身に対し、「発想力も行動力も統率力もある、優れた人間である」といった評価を下せるようになります。
するとホメオスタシスの作用が変わり、ますます行動力や発想力を発揮しやすくなっていきます。
それだけではありません。
エフィカシーが高まると、スコトーマのあり方も変わります。
スコトーマ(scotoma)とは、「心理的な盲点」のことです。
すでにお話ししたように、人間の脳は、重要だと判断した情報しか認識しません。
その結果、人間の認識には、知らず知らずのうちに、スコトーマが生まれます。
たとえば、「雑誌を目で追っていても、興味のない情報はまったく入ってこない」といった具合に、脳が重要だと判断しなかった情報については、見ているのに気づかなかったり、視界に入っているのに認識できなかったりするのです。
「自分は、発想力も行動力も統率力もない、ダメな人間である」という低いエフィカシーを持っている人は、「どんなアイデアを出せばいいか」「どうすれば効果的に動けるか」「人をどう束ね、どう動かせばいいか」といったことがすべて、スコトーマに隠れて、見えなくなってしまいます。
脳が、発想力や行動力、統率力に関することを「必要でないこと」「重要でないこと」と判断するからです。
ところが、「自分は、発想力も行動力も統率力もある、優れた人間である」という高いエフィカシーを持っている人の場合は、逆に「新しいアイデアなんてあるはずがない」「時間がない」「面倒くさい」など、「仕事の進行を阻むような思考」がスコトーマに隠れ、見えなくなります。
脳が、それらを「必要でないこと」「重要でないこと」と判断するからです。
このように、ポジティブな自己対話は、まず自己イメージをプラスに変え、エフィカシーを高くしてくれます。
さらに、スコトーマのあり方が変わり、入ってくる情報の内容やレベルが変わり、物事をスムーズに進められるようになります。
それによって、低いところにあったコンフォート・ゾーンが高いところに移動し、「プラスの自己イメージを持ち、エフィカシーが高く、物事がスムーズに進む状態」に居心地の良さを感じるようになり、ホメオスタシスがそこに向かって作用するようになります。
そのため、エフィカシーがますます下がりにくくなるという、前向きな循環が生まれるのです。
■ ポイント
・ポジティブな自己対話を続けていると、自己評価も高くなる。
・自己評価が低いと、いいアイデアがスコトーマ(=盲点)に隠れて見えなくなっている。
・自己評価を高めれば、ホメオスタシスの作用で、物事が前向きにうまく回りだす。
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