第42回
道化第四十二
2019.02.04更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら
道化第四十二
42 人を倒して力ずくで進む者は不幸になる
【現代語訳】
「道」から一が生まれ、一から二が生まれ、二から三が生まれ、三から万物が生まれる。万物は陰を背負って、陽を胸に抱いて、その二つのものを和する沖気によって調和している。
人が嫌うものは、「弧(孤児)」、「寡(一人者)」、「不穀(ろくでなし)」であるが、王や公族たちは、それを自称としてへりくだることでその身分を保っている。だから、物事は減らすことによって増えるということがあり、また増やすことによって減ることもあるのだ。
人が教えてくれたことを、私もまた教えたい。強い力で無理やり押し通していく者は、まともな死に方をしない、ということだ。私はこのことを教えの根本としたい。
【読み下し文】
道(みち)は一(いつ)を生(しょう)じ(※)、一(いつ)は二(に)を生(しょう)じ、二(に)は三(さん)を生(しょう)じ、三(さん)は万物(ばんぶつ)を生(しょう)ず。万物(ばんぶつ)は陰(いん)を負(お)いて陽(よう)を抱(いだ)き、沖気(ちゅうき)(※)以(もっ)て和(わ)を為(な)す。
人(ひと)の悪(にく)む所(ところ)は、唯(た)だ弧(こ)・寡(か)・不穀(ふこく)なるも、而(しか)も王公(おうこう)は以(もっ)て称(しょう)と為(な)す。故(ゆえ)に物(もの)は或(ある)いはこれを損(そん)じて益(ま)し、或(ある)いはこれを益(ま)して損(そん)す。
人(ひと)の教(おし)うる所(ところ)、我(わ)れも亦(ま)たこれを教(おし)う。強梁(きょうりょう)(※)者(しゃ)は其(そ)の死(し)を得(え)ず。吾(わ)れ将(まさ)に以(もっ)て教(おし)えの父(ちち)と為(な)さん。
- (※)道は一を生じ……「一」とは「道」のことを指した(能爲第十、益謙第二十二、法本第三十九参照)。ここにある一、二、三の意味は、昔からいろいろな説がある。私は本文を素直に読み、一、二、三と万物が「道」から生まれてくることを述べているのだと解する。一は「道」と同じである万物の根源のことだが、一とある以上、少し具体的なイメージがある根源(出発点)ということになろう。
- (※)沖気……気を和すること。気を調和させること。
- (※)強梁……凶暴、剛強。強い力で無理やり押し通すこと。
【原文】
道化第四十二
道生一、一生二、二生三、三生萬物。萬物負陰而抱陽、沖氣以爲和。
人之所惡、唯孤寡不穀、而王公以爲稱。故物或損之而益、或益之而損。
人之所敎、我亦敎之。強梁者不得其死、吾將以爲敎父。
【単行本好評発売中!】
この本を購入する
感想を書く