第45回
洪德第四十五
2019.02.07更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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洪德第四十五
45 大巧は拙なるがごとし
【現代語訳】
本当に優れた完全なものは、欠けているところがあるように見えるが、そのはたらきはいつまでも衰えない。本当に満ちているものは、中は空っぽのように見えるが、そのはたらきはいつまでも尽きることがない。
本当にまっすぐなものは、屈折しているように見え、本当にうまくいっているわざは拙(まず)く見え、本当に弁舌(べんぜつ)が優れているものは、口べたのように見える。
よく動くと寒さに勝ち、静かにしていれば暑さに勝つ。清らかで静かなもの(無欲なもの)こそが、天下の模範になる。
【読み下し文】
大成(たいせい)(※)は欠(か)くるが若(ごと)く、其(そ)の用(よう)は弊(すた)れず。大盈(たいえい)(※)は沖(むな)しき(※)が若(ごと)く、其(そ)の用(よう)は窮(きわ)まらず。
大直(たいちょく)は屈(くっ)するが若(ごと)く、大巧(たいこう)は拙(せつ)なるが若(ごと)く、大弁(たいべん)は訥(とつ)なるが若(ごと)し。
躁(そう)は寒(かん)に勝(か)ち、静(せい)は熱(ねつ)に勝(か)つ。清静(せいせい)は天下(てんか)の正(せい)(※)と為(な)る。
- (※)大成……本当に完成していること。本当に優れて完全なこと。同異第四十一の「大白」「大方」「大器」参照。
- (※)大盈……「大」は「偉大な「道」に合致したもの」、「本当の」を意味する。「盈」は満ちること。「大盈」は本当に満ちていること。
- (※)沖しき……「盅」の借字で空っぽの意味。無源第四「道は沖にして」参照。
- (※)天下の正……天下の主(あるじ)、長、あるいは天下の模範の意味。なお、法本第三十九の「天下の貞」とほぼ同じ意味。
【原文】
洪德第四十五
大成若缺、其用不弊。大盈若沖、其用不窮。
大直若屈、大巧若拙、大辯若訥。
躁勝寒、靜勝熱。淸靜爲天下正。
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