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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第15回

40話~42話

2018.02.02更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

40 敵の虚を衝く

【現代語訳】

こちらから進撃していく場合に、敵がそれを防ぎ止めることができないのは、敵の虚(隙、弱いところ)を衝くからである。そして、退却する場合に敵がこちらを追撃できないのは、追いつけないほどに速く退却するからである。
こちらが戦いを欲するときに、たとえ敵が砦(とりで)を高く築き堀を深く掘っていても、戦いに出てこざるをえないのは、敵が必ず助けに行かねばならないところを攻撃するからである。
こちらが戦いを欲しないときに、たとえ地面に防衛線を引いて守るだけでも敵がこちらと戦えなくなるのは、敵の向かうところと違うところにいるようにするからである。

【読み下し文】

進(すす)みて禦(ふせ)ぐべからざる者(もの)は、其(そ)の虚(きょ)を衝(つ)けばなり。退(しりぞ)きて追(お)うべからざる者(もの)は、速(すみ)やかにして及(およ)ぶべからざればなり。故(ゆえ)に我(われ)戦(たたか)わんと欲(ほっ)すれば、敵塁(てきるい)を高(たか)くし溝(こう)を深(ふか)くすと雖(いえど)も、我(われ)と戦(たたか)わざるを得(え)ざる者(もの)は、其(そ)の必(かなら)ず救(すく)う所(ところ)を攻(せ)むればなり。我(われ)戦(たたか)いを欲(ほっ)せざれば、地(ち)を画(かく)してこれを守(まも)るも、敵(てき)我(われ)と戦(たたか)うを得(え)ざる者(もの)は、其(そ)の之(ゆ)く所(ところ)に乖(そむ)けばなり(※)。

(※)其の之く所に乖けばなり……敵の向かうところと違うところにいるようにする。すなわち、敵を迷わせ、こちらの動きをわからなくすることである。

【原文】

進而不可禦者、衝其虛也、退而不可追者、速而不可及也、故我欲戰、敵雖高壘深溝、不得不與我戰者、攻其所必救也、我不欲戰、畫地而守之、敵不得與我戰者、乖其所之也、

41 敵の兵力を分散させる

【現代語訳】

敵にはっきりとした態勢をとらせてこちらによくわかるようにさせ、こちらは自軍の態勢を隠してわからないようにする。するとこちらは兵力を集中させることができるが、敵は目標がはっきりとわからないために兵力も分散するようになる。
味方が集結して、敵の兵力が分かれて十となれば、味方は敵の十倍の兵力で攻撃できるようになる。すなわち味方の兵力は多くなり敵の兵力は少なくなる。
多くの兵力で少ない兵力を攻撃できれば、味方の軍の戦う相手は弱いといえるようになるのである。

【読み下し文】

故(ゆえ)に人(ひと)を形(かたち)せしめ(※)て我(われ)形(けい)無(な)ければ、則(すなわ)ち我(われ)専(あつ)まりて敵(てき)分(わ)かる。我(われ)専(あつ)まりて一(いつ)と為(な)り、敵(てき)分(わ)かれて十(じゅう)と為(な)らば、是(こ)れ十(じゅう)を以(もっ)て其(そ)の一(いつ)を攻(せ)むるなり。則(すなわ)ち我(われ)衆(しゅう)にして敵(てき)寡(か)なり。能(よ)く衆(しゅう)を以(もっ)て寡(か)を撃(う)てば、則(すなわ)ち吾(われ)の与(とも)に戦(たたか)う所(ところ)は約(やく)なり(※)。

  • (※)人を形せしめ……相手(敵)の態勢をはっきりわかるようにさせる。固定化させる。
  • (※)約なり……「約」を「小さくして」「弱くして」と解すると本文のような訳となる。これに対して「集中して」「まとまって」と解する説もある。後者のように解すると、「多くの兵力で少ない兵力を攻撃できるのは、こちらが集中しているからである」と訳することになる。

【原文】

故形人而我無形、則我專而敵分、我專爲一、敵分爲十、是以十攻其一也、則我衆而敵寡、能以衆擊寡者、則吾之所與戰者約矣、

42 敵に決戦地をわからせないようにする

【現代語訳】

味方の軍が戦おうとする土地(戦場、決戦地)を、敵は知ることができない。
知ることができないと、敵が備えなければならない場所は多くなる。敵が備えなければならない場所が多くなると、味方が戦う相手は少なくなる。
だから前方を固めて備えると後方が手薄になり、後方を固めて備えると前方が手薄になる。左側を固めて備えると右側が手薄になり、右側を固めて備えると左側が手薄になる。もしすべてを固めて備えようとするとすべてが手薄になる。
このように味方の兵が少なくなるのは、敵の見えない攻撃に備えるからである。味方の兵が多くなるのは、敵を味方の見えない攻撃に備えさせるからである。

【読み下し文】

吾(わ)が与(とも)に戦(たたか)う所(ところ)の地(ち)(※)は知(し)るべからず。知(し)るべからざれば、則(すなわ)ち敵(てき)の備(そな)うる所(ところ)の者(もの)多(おお)し。敵(てき)の備(そな)うる所(ところ)の者(もの)多(おお)ければ、則(すなわ)ち吾(わ)が与(とも)に戦(たたか)う所(ところ)の者(もの)寡(すくな)し。故(ゆえ)に前(まえ)に備(そな)うれば則(すなわ)ち後(うしろ)寡(すくな)く、後(うしろ)に備(そな)うれば則(すなわ)ち前(まえ)寡(すくな)く、左(ひだり)に備(そな)うれば則(すなわ)ち右(みぎ)寡(すくな)く、右(みぎ)に備(そな)うれば則(すなわ)ち左(ひだり)寡(すくな)く、備(そな)えざる所(ところ)無(な)ければ、則(すなわ)ち寡(すくな)からざる所(ところ)無(な)し。寡(すくな)き者(もの)は、人(ひと)に備(そな)うればなり。衆(おお)き者(もの)は、人(ひと)をして己(おのれ)に備(そな)えしむればなり。

(※)吾が与に戦う所の地……味方の軍(自軍)が戦場(決戦地)とするところ。主導権を握ることで、戦場もこちらの思いのままになる。孫子がここで述べている教えにまったく反した守備をしたのが、太平洋戦争の時の日本軍であった。太平洋の島々を広く守って失敗した。

【原文】

吾所與戰之地不可知、不可知、則敵所備者多、敵所備者多、則吾所與戰者寡矣、故備歬則後寡、備後則歬寡、備左則右寡、備右則左寡、無所不備、則無所不寡、寡者備人者也、衆者使人備己者也、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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