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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第34回

97話~99話

2018.03.02更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

97 「絶地」という地形

【現代語訳】

およそ敵の領土内に進撃して戦う場合において、深く入り込めば兵士たちは心を一つにして戦うことだけを考えるが、浅くしか入り込んでいなければ国(自分の郷)に帰りたい兵士はばらばらとなる。
自国を去り国境を越えて敵地に進撃したところは、絶地である。四方に通じて交通の中心であるところは、衢地である。敵地に深く入り込んだところは、重地である。敵地に浅く入り込んだところは、軽地である。背後が険しく前方が狭いところは、囲地である。どこにも逃げ場がないところは、死地である。

【読み下し文】

凡(およ)そ客(かく)と為(な)る道(みち)は、深(ふか)ければ則(すなわ)ち専(もっぱ)らに、浅(あさ)ければ則(すなわ)ち散(さん)ず。国(くに)を去(さ)り境(さかい)を越(こ)えて師(し)する者(もの)は、絶地(ぜっち)(※)なり。四達(したつ)(※)する者(もの)は、衢地(くち)なり。入(い)ること深(ふか)き者(もの)は、重地(じゅうち)なり。入(い)ること浅(あさ)き者(もの)は、軽地(けいち)なり。背(はい)は固(こ)にして前(まえ)は隘(あい)なる者(もの)は、囲地(いち)なり。往(ゆ)く所(ところ)無(な)き者(もの)は、死地(しち)なり。

  • (※)「絶地」と九地の関係……先の九地の中には入っていない概念である。本国から離れた地という概念で、「散地」以外の八地を総称したものと解される(荻生徂徠説)。なお、第八章(九変篇55話)参照。
  • (※)四達……四方に通じていること。なお、一九七二年に発見された竹簡本では「四徹」となっている。「徹」も通るということなので意味は変わらない。

【原文】

凢爲客之衜、深則專、淺則散、去國越境而師者、絕地也、四逹者、衢地也、入深者、重地也、入淺者、輕地也、背固歬隘者、圍地也、無所徃者、死地也、

98 九地の戦い方

【現代語訳】

こうして九地では次のような戦い方を原則とする。
自国の領土内である散地では、(兵士たちの心が離散しやすいため)兵士の心を一つにさせるようにしていく。
軽地では、軍隊相互が離れないように連続させていかねばならない。
争地では、敵の背後から行く(後ろから攻撃する)。
交地では、守備を慎重、厳重にしていく。
衢地では、隣国諸侯との同盟関係を固めていく。
重地では、食糧補給を絶やさないようにする。
圮地では、速やかに軍隊を通過させる。
囲地では、逃げ道を自ら塞いでしまって味方の戦意を高める。
死地では、勝たねば生きられないことをよくわからせる。

【読み下し文】

是(こ)の故(ゆえ)に散地(さんち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の志(こころざし)を一(いつ)にせんとす。軽地(けいち)には吾(わ)れ将(まさ)にこれをして属(つづ)かしめんとす。争地(そうち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の後(ご)に趨(おもむ)かんとす(※)。交地(こうち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の守(まも)りを謹(つつし)まんとす。衢地(くち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の結(むす)びを固(かた)くせんとす。重地(じゅうち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の食(しょく)を継(つ)がんとす。圮地(ひち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の塗(みち)を進(すす)まんとす。囲地(いち)には吾(わ)れ将(まさ)に其(そ)の闕(けつ)を塞(ふさ)がんとす(※)。死地(しち)には吾(わ)れ将(まさ)にこれに示(しめ)すに活(い)きざるを以(もっ)てせんとす。

  • (※)争地には吾れ将に其の後に趨かんとす……この解釈の仕方には異論も多い。ある説は、「後れている部隊を急がせる」としている。また、ある説は「後の部隊を急がせる」としている。さらには原文の「爭地吾将趨其後」は「爭地吾将使不留」であり、そうすると「先に占拠している敵軍をそこに居座れないようにする」と解釈する説もある。
  • (※)囲地には吾れ将に其の闕を塞がんとす……第七章・軍争篇54話では「囲師には必ず闕き」とあるように、敵にはそうするが、味方にはその逆用を考え、自ら逃げ道をなくして結束して必死に戦う状況をつくれ、と孫子は教える。

【原文】

是故散地吾將一其志、輕地吾將使之屬、爭地吾將趨其後、交地吾將謹其守、衢地吾將固其結、重地吾將繼其⻝、圮地吾將進其塗、圍地吾將塞其闕、死地吾將示之以不活、

99 兵士の心情

【現代語訳】

このように兵士の心情としては、敵に包囲されたらそれを防ぎ、戦わざるをえない状況になれば必死に戦い、あまりにも危険な状況下となれば、将軍によく従うようになることがわかる。

【読み下し文】

故(ゆえ)に兵(へい)の情(じょう)は、囲(かこ)まるれば則(すなわ)ち禦(ふせ)ぎ、已(や)むを得(え)ざれば則(すなわ)ち闘(たたか)い、過(す)ぐれば則(すなわ)ち従(したが)う。

【原文】

故兵之情(※)、圍則禦、不得已則鬭、過則從、

(※)故兵之情……原文の「兵」を「諸侯」の間違いだとする説もある。さらにそれに続く「囲則禦」も「邃則禦」であるとする。そうすると「邃(とお)ければ則(すなわ)ち禦(ふせ)ぎ」と読み、「諸侯の心情としては、まだ遠くにいる敵国の軍隊に対してはこれを防ぎ止めようとし」と解することになる。さらには、最後の「過ぐれば則ち従う」を、「敵国の軍隊が通り過ぎると、これを追撃しようとする」などと訳す。本書では、これまで一般に採られている見方に従った。


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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