第21回
「子育てを通して何を学びたいか」を親が自覚することが大事
2017.11.30更新
人間の神秘「胎内記憶」から子育てを考える。胎内記憶研究の第一人者の医師がたどり着いた境地とは? 親の論理ではなく「子どもの本音」に耳を傾けた、子どもの「才能=生きる力」を強くする胎教法と育児法を紹介。
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土橋(つちはし)さんは、「お母さんの幸せというのはどういうものか知りたいので、それを教えてくれる赤ちゃん、来てください」とお願いしたそうです。
やがて、その声を聞いて手を挙げた赤ちゃんが、土橋さんのお腹に宿りました。さてさてどんな体験をさせてくれるのだろうとワクワクして出産を迎えましたが、その子は、生まれてすぐに黄疸が出たので、新生児室に連れて行かれて、お母さんは抱っこもできませんでした。幸せを教えてくれるなら、生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしてうれしくてたまらないというシチュエーションを作ってくれてもいいはずですが、そうじゃなかったのです。
今、その子は13歳で、胎内記憶があるし、もちろん、生まれたときの状況もよく覚えています。彼女は、そのときの自分の気持ちを、お母さんに教えてくれるのだそうです。
「赤ちゃんは、だいたいお母さんに会うために生まれてくるのだから、お母さんと引き離されるという考え方はまったくないの。だから、離されちゃうと、びっくりして泣くの。お母さんどこにいるの? って」
成長した彼女は、ものすごくあがり症でした。それも、生まれたときにすぐに母親と引き離されたのが原因だったようです。出産時は、母子共にかなりの興奮状態となります。それゆえ、彼女はその興奮状態の中で自分の意に反して母親と引き離されたことによって、自分が興奮状態になるとなにか嫌なことが起こるかもしれない、と感じてしまって、あがり症になったのです。
でも、彼女は中学生になって、自分でそれを克服すべく、人前に出る機会をつくるため、ダンスをしたりドラムを叩いたり、ピアノを習ったりしています。「お母さんは見守ってくれていればいいよ」と言われているそうです。
土橋さんは、「いろいろと悔いのある出産、子育てでしたが、私にとっては大きな学びであったし、子どもたちもそれを解消するように成長していくものですね」と言います。そういうことを、娘さんから学びました。その学びは、土橋さんにとっては、とても幸せに感じられることでした。完璧な子育てをすることが幸せとは限りません。不十分なことがたくさんあっても、たくましく育っていく長女を見て、土橋さんは母親になって良かった、この子が娘として生まれてきてくれて良かったと、とても幸せを感じているのです。
表面的な幸せではなく、本質的な幸せを、彼女はお母さんに伝えようとしているのです。まだ13歳ですから、これから、もっともっとたくさんのことを教えてくれるだろうと、土橋さんはとても楽しみにしていると言っています。
この話は、お母さんと赤ちゃんの関係を考える上では、とても参考になります。お母さんも子どもも、妊娠、出産、子育てを通して成長していきます。成長にとってもっとも適切な相手が選ばれているのです。
これからお母さんになる人は、生まれるから育てる、という受け身の姿勢ではなく、自分は、赤ちゃんを産んで育てていくという体験を通してこんなことを学びたい、という積極的な気持ちをもつことが大切です。
今、子育てをしているお母さんは、自分にも目的があって、この子を育てているということを自覚してください。
お母さん自身にもプログラムがあって、そのプログラムを次に進めていくためには、今、目の前にいる子どもが大切な役割を果たしてくれます。この子がいるからこそ、自分のプログラムは次のステージへ進展していけるのです。
自分の生まれてきた目的を達成するためにこの子がいるのだと考えたら、また違った子育てができるのではないでしょうか。子育てというのは、日々の慌ただしさに振り回されることが多くて、そんなことまで考えるのは難しいことかもしれませんが、どうぞ、赤ちゃんが眠っていて少しだけほっとできるときにでも、そんなことを考えていただければと思います。
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