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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第48回

忘知第四十八

2019.02.13更新

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日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら

忘知第四十八

48 さかしらな世俗的な学問、知識は不要である

【現代語訳】

さかしらで余計な学問を修めていくと、世俗的などうでもいい知識は増えていくが、「道」を修めていくと、余計な知識は減っていく。余計な世俗的知識をどんどん減らしていくと、無為の境地にまで至ることができる。無為にまでなると、できないことなどなくなるのである。
天下を取る者は、常に何もしないことを心がける。何かしようとして(欲も出ると)、天下など取ることはできない。

【読み下し文】

学(がく)を為(な)せば日(ひ)に益(ま)し(※)、道(みち)を為(な)せば日(ひ)に損(そん)す。これを損(そん)し又(また)損(そん)し、以(もっ)て無為(むい)に至(いた)る。無為(むい)にして而(しか)も為(な)さざる無(な)し。
天下(てんか)を取(と)る(※)は、常(つね)に無事(むじ)を以(もっ)てす。其(そ)の事(こと)有(あ)るに及(およ)びては、以(もっ)て天下(てんか)を取(と)るに足(た)らず。

  • (※)学を為せば日に益し……一般的に、本章にいう「学」は世俗的な余計な学問、知識のことをいう。特に老子は儒教を批判しているものと解される(異俗第二十参照)。異俗第二十の注釈でも述べたように、老子はすべての学問を否定しているとは解されない(そうすると老子の教えもよくわからない)。それでも、さかしらな世俗的な学問を身につけて、いばっているような人を見ると、この老子の説はとても納得させられるところがある。
  • (※)天下を取る……本書ではそのまま「天下を取る」と訳したが、「天下を治める」「世界を制覇する」と訳す説もある。無爲第二十九参照。

【原文】

忘知第四十八

爲學日益、爲道日損。損之又損、以至於無爲。無爲而無不爲。
取天下常以無事。及其有事、不足以取天下。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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