第37回
爲政第三十七
2019.01.28更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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爲政第三十七
37 無為にして為さざるはなし(無為の境地に達すべし)
【現代語訳】
「道」はいつでも無為にして為さざるはなし(何もしないでいるようだが、すべてのことを見事に成し遂げている)。諸侯や王たちが、この「道」のはたらきを守れば、あらゆるものは、自ずから感化され、うまくいくだろう。もし、感化されているのに、何か欲望を持ち始めるなら、まだ名がない素朴なあら木によってそれを静め落ち着かせたい。この名がないあら木は、無欲にさせるだろう。そしてすべてのものが欲望を持たないで平静であれば、天下は、自ずから安定するであろう。
【読み下し文】
道(みち)は常(つね)に無為(むい)にして(※)、而(しか)も為(な)さざる無(な)し。侯王(こうおう)若(も)し能(よ)くこれを守(まも)らば、万物(ばんぶつ)は将(まさ)に自(おの)ずから化(か)(※)せんとす。化(か)して作(おこ)らんと欲(ほっ)すれば、吾(わ)れ将(まさ)にこれを鎮(しず)むるに無名(むめい)の樸(ぼく)(※)を以(もっ)てす。無名(むめい)の樸(ぼく)は、夫(そ)れ亦(ま)た将(まさ)に無欲(むよく)ならんとす。欲(ほっ)せずして以(もっ)て静(せい)ならば、天下(てんか)将(まさ)に自(おの)ずから定(さだ)まらんとす。
- (※)道は常に無為にして……本章のこの部分は、忘知第四十八の「無為にして而も為さざる無し」と同じように、老子の思想を端的に表している。また、聖德第三十二には「道は常に名無し」とある。なお、一般に本章までが上篇とされている(前述のように『帛書』では上篇と下篇が逆になっている)。
- (※)化……感化される。
- (※)無名の樸……名がない素朴なあら木。あら木のような素朴。自然な「道」ということ。顯德第十五、聖德第三十二参照。
【原文】
爲政第三十七
道常無爲、而無不爲。侯王若能守之、萬物將自化。化而欲作、吾將鎭之以無名之樸。無名之樸、夫亦將無欲。不欲以靜、天下將自定。
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