第77回
天道第七十七
2019.03.27更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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天道第七十七
77 本当の賢者は、賢さを人前で示さない
【現代語訳】
天の「道」は、ちょうど弓に弦を張るときのようである。弓に弦を張るときは、弓の上の部分は押しさげ、下の部分は引き上げる。余りあれば減らし、足りなければ補う。
天の「道」も、余りあるほうを減らして、足りないほうに与える。しかし、人の道(やり方)はそうではない。足りないほうをさらに減らして、余りあるほうに差し出してしまっている。
余っているとき、いったい誰がそれを世の中のために差し出すであろうか。それは「道」と一体となっている人だけだ。
だから、そうした聖人は、大きな仕事をしても見返りを求めず、成功してもそれに安住することはないのだ。そもそも、自分の賢明なところを、人前で表すことを欲しないのである。
【読み下し文】
天(てん)の道(みち)(※)は、其(そ)れ猶(な)お弓(ゆみ)を張(は)るがごとき与(か)。高(たか)き者(もの)はこれを抑(おさ)え、下(ひく)き者(もの)はこれを挙(あ)げ、余(あま)り有(あ)る者(もの)はこれを損(そん)じ、足(た)らざる者(もの)はこれを補(おぎな)う。
天(てん)の道(みち)は、余(あま)り有(あ)るを損(そん)じて、而(しか)して足(た)らざるを補(おぎな)う。人(ひと)の道(みち)は則(すなわ)ち然(しか)らず。足(た)らざるを損(そん)じて、以(もっ)て余(あま)り有(あ)るに奉(ほう)ず。
孰(たれ)か能(よ)く余(あま)り有(あ)りて以(もっ)て天下(てんか)に奉(ほう)ぜん。唯(た)だ有道者(ゆうどうしゃ)のみ。
是(ここ)を以(もっ)て聖人(せいじん)は、為(な)すも而(しか)も恃(たの)まず、功(こう)成(な)るも而(しか)も処(お)らず(※)。其(そ)れ賢(けん)を見(あら)わすを欲(ほっ)せず。
- (※)天の道……自然の摂理のこと。
- (※)為すも而も恃まず、功成(な)るも而も処らず……第二章にも同じような文章がある。
【原文】
天道第七十七
天之道、其猶張弓與。高者抑之、下者擧之。有餘者損之、不足者補之。
天之道、損有餘而補不足。人之道則不然、損不足以奉有餘。
孰能有餘以奉天下。唯有道者。
是以聖人爲而不恃、功成而不處、其不欲見賢。
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