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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第50回

139話~141話

2016.10.03更新

読了時間

139 人としてやるべきことをまずやれ


【現代語訳】

門人の樊(はん)知(ち)が知とは何かについてたずねた。孔子先生は言われた。「人としてやるべきことを行い、神や霊を敬うが、これに深入りして頼ってはいけない。これを知という」。また、仁とは何かをたずねた。

先生は言われた。「人がやりたがらない難しいことを率先してやり、その利益とか報酬のことは後のことで、別にそれほど関心がない。これが仁である」。


【読み下し文】

樊(はん)知(ち)、知(ち)を問(と)う。民(たみ)の義(ぎ)(※)を務(つと)め、鬼神(きしん)を敬(けい)してこれを遠(とお)ざく。知(ち)と謂(い)うべし。仁(じん)を問(と)う。曰(いわ)く、仁者(じんしゃ)は難(かた)きを先(さき)にして獲(う)るを後(あと)にす。仁(じん)と謂(い)うべし。


(※)民の義……人としてやるべきことの意。


【原文】

樊遅問知、子曰、務民之義、敬鬼神而遠之、可謂知矣、問仁、子曰、仁者先難而後獲、可謂仁矣、


140 知者と仁者の違い


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「知者と仁者をたとえてみると、知者は水のようであり、仁者は山のようである。知者は水のように動き、人生を楽しむことができる。仁者は山のようにどっしりと落ちついていて、長寿である」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、知者(ちしゃ)は水(みず)を楽(たの)(※)しみ、仁者(じんしゃ)は山(やま)を楽(たの)しむ。知者(ちしゃ)は動(うご)き、仁者(じんしゃ)は静(しず)かなり。知者(ちしゃ)は楽(たの)しみ、仁者(じんしゃ)は壽(いのち)ながし。


(※)楽……ぴったしに合う。うまくとけ合う。


【原文】

子曰、知者樂水、仁者樂山、知者動、仁者静、知者樂、仁者壽、


141 理想の国を想う


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「斉の国が少し改善されれば、魯の国ぐらいにはなれるであろう。魯の国も少し改善されれば、道義の通ったよい国になれるのだが」。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、斉(せい)(※)、一変(いっぺん)せば魯(ろ)(※)に至(いた)らん。魯(ろ)一変(いっぺん)すれば道(みち)に至(いた)らん。


(※)斉……周王朝創業の第一の功臣・太公望の建てた大国。今の山東省の大半を領有した。

(※)魯……今の山東省の一部を領した小国。周王朝を建てた武王の弟・周公旦を始祖とする。孔子が生まれたところ。


【原文】

子曰、齊一變至於魯、魯一變至於道、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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