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それはきっと必要ない 曇った思考がクリアになる”絞り込む”技術 印南敦

第0回

“当たり前”は、本当に当たり前なのか?

2017.09.06更新

読了時間

めまぐるしくトレンドが変化する現代。改めて自分に必要なものは何かを見つめなおしてみませんか? 本連載では、作家・書評家の印南敦史さんが、大きなことから小さなことまで、日々の生活で気になった事柄をテーマに「なにが大切で、なにが大切でないか」を考えていきます。
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はじめまして。

今回から連載をすることになりました、作家・書評家の印南敦史(いんなみあつし)といいます。

本を書いたり記事を書いたり、その一方でさまざまな本を紹介したりもしている人間です。もともとキャリアのスタートラインは音楽ライターで、そちらもまだ細々と続けてはいるのですけれど、仕事の比率としては現在、書評の仕事が中心になっています。

ただ数年前までは、まさか自分が書評を書くことになるだなんて思ってもいませんでした。子どものころから本は大好きだったのですが、だから書評が書けるかといえば、そういう問題でもないだろうと思っていましたし。

なのに、いまではそれは自分の顔みたいになっているので、なんだか不思議な気分ではあります。

きっかけは、2012年の夏にウェブメディア「ライフハッカー [日本版]」から「書評を書いてみませんか?」と声をかけていただいたことでした。

「なるほど、書評を書くという選択肢もあったのか。では、やってみますか(自信ないけど)」

という具合に、不安をまとったまま書きはじめたのです。でも、はじめた以上は続けるべきなので、「自信がないのだとしたら、愚直にやるしかない」と考えながら続けてきました。その結果、おかげさまで好評をいただくことになったわけですが、いまでもまだ、「これでいいのかな」と悩みながら続けているような状態です。そんなものなんだろうなとも思っていますが。

現在は他にも「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」など複数のウェブサイトに寄稿しています。また、紙媒体『ダ・ヴィンチ』では(KADOKAWA)の「7人のブックウォッチャー」という連載に参加していて、『PHP The 21』(PHP研究所)でも「ビジネス名著 仕事を変えるこの1行」というリレー連載を担当しています。

そんなわけなので、読んでは書き、読んでは書き……という毎日。日に数冊を読むペースになってしまいましたが、それはうれしいことでもあります。

作家としては、音楽関連を含めて10数冊の著作があり、2016年に発売した『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)は、おかげさまで3万部超のベストセラーになりました。今年の春にも、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)という新刊を出しています。

あっ、それから、FMおだわらで「印南敦史のキキミミ図書館」という、本と音楽の番組もやっています。ローカル局ですが、サイマルラジオやアプリで聴けますよ。

さてさて、コンパクトにまとめようと思ったにもかかわらずけっこうな文字量になってしまいました。

ところで、なにをするにしても、大切にしているスタンスが僕にはあります。

それは、「入り口」であり続けたいということ。扱うものが書籍であろうが音楽であろうが、上から目線で偉そうに語るのではなく、読者のみなさんと同じ目線に立って、「これ、知ってました? おもしろいんですよ」「これ、きっと気に入ってもらえると思うんですけど」という立ち位置で発信をしていきたいのです。理由はシンプルで、送り手が優位だとは思っていないから。もちろん、それはこのコラムも同じです。

そんな僕にとっての基本を踏まえたうえで、そろそろこのコラムについてご説明しましょう。

もちろん、ここも「入口」なのですが、それに加えて大きなテーマもあります。

端的にいえば、それは「疑問」。

日常生活のなかで、僕たちが当たり前だと思っていることがらについて、「本当にそうなの?」と疑問を投げかけることです。なぜなら、現代ほど疑問を持つことが大切な時代はないからです。

テクノロジーがどんどん進化する現代においては、新たなツールが次から次へと登場してきます。先月には最先端だと騒がれていたものが、さらに新しいなにかが現れることによって、今月には古くさく感じられるようになった――ちょっと極端ですが、そんなことも十分に考えられるでしょう。

そんななか、僕たちのライフスタイルも日々アップデートされ続けています。新しいツールが目の前に現れれば、興味を惹かれるのは無理もありません。しかも、それが日常的に行われているのです。

場合によっては、何十年も自分の内部で中心的な位置にあった価値観が、ほんの数秒で崩れてしまうようなこともあるでしょう。僕も、何度もそれを体験してきました。だから、「次はどんなものが出てくるんだろう」「なにが変化するんだろう」という期待感が常にあります。

正直なところ、現代ほど刺激的でクリエイティブな時代はないと思っています。

ただ、だからこそ見逃してはならないこともあるとも考えているのです。それは「ストック」の問題。

次から次へと新しいツールが出てきて日常生活のなかに入り込んでくるということは、そのぶん、使わなくなって放置されたツール(ストック)が増えていくということでもあります。その結果、便利だと思って使いはじめた新しいツールが、実はそれほど必要のないものだということがわかるかもしれません。

だから僕たちはこれまで以上に、「これは本当に必要なのか?」という「疑問」を持つべきだということ。

疑問を持たず、受け入れるまま進んでいたら、いずれ周囲は無駄なものだらけになってしまいます。そういう状況は、なんらかの形で日常生活のパフォーマンスを低下させるでしょう。しかし、それでは本末転倒です。

だから、そうならないために疑問を持つことはとても重要。そこで、僕が日ごろから「これ、本当に必要かな?」と疑問を感じていた物事を取り上げ、「“当たり前”は、本当に当たり前なのか?」ということについて読者のみなさんと一緒に考えていきたいのです。

「それは本当に刺激的なのか?」
「情報に毒されすぎてはいないか?」
「それは本当に必要なのか?」
「もっとシンプルでいいのではないか?」

そんなふうに本質的なところに目を向けてみれば、「本当に必要なもの」が見えてくるのではないかということです。それが基本的な考え方。

ただ、そうやって考えていく過程で、また別のことに気づきもしました。

「それはきっと必要ない」と考える姿勢は、間違いなく重要。しかし、必要ないものがあるとすれば、「でも、これは必要なのだ」と感じさせるものもあるはずだということ。だとしたら、それは本当に価値のあるものだということになります。だから、その点も見逃すべきではないと考えたわけです。

そこで、「それはきっと必要ない」と感じるものをご紹介していく一方で、たまには「これは必要なのだ」と感じたものもご紹介していきたいと思っています。

単に否定するだけではなく、「だけど、個人的にはこれって大切なんだよね」というものを提示できれば、「なにが大切で、なにが大切ではないか」がわかる気がするから。

とはいえ、別に難しいことを書く気は毛頭ありません。ですから、お茶でも飲みながら(お酒でも可)、気軽な気持ちでお読みいただければと思います。

これから、よろしくお願いします。

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著者

印南 敦史

作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。ウェブ媒体「ライフハッカー(日本版)」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。以後、驚異的な読書量を実現する。著書に『遅読家のための読書術 情報洪水でも疲れない「フローリーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)ほか多数。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)

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