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第7回

先を読む力

2019.07.11更新

読了時間

齋藤孝先生の最新刊は「頭のよさ」の本! 6月5日発売!「頭がいい」とは脳の「状態」なのです。頭のはたらきがいいときは、目の前の問題が簡単に解決できるし、未来を楽しく創り出していくことができる。すっきりと気分もいい。そんな状態のときをどんどん増やしていくにはどうしたらいいか?本書で詳しく解説します。
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 身体を使って俊敏に運動をするとき、人は、自分が次に何をしたらいいかわかっているのです。
 その一瞬で成功するには、そのときだけうまくやれてもダメで、次、その次と、先のことも考えられて、それにはいま何をしたらいいかが「読めている」んです。
 先が読める予測力は、生き物にとって重要なサバイバル能力です。
 危険な敵が目前に迫ってから初めて気づくよりも、はるか先にいるときに気づけたほうが、より早く逃げられる。対処の方法もいろいろ考えられる。
 いま、よりよく動けるということは、先が読めるからできるんです。
 どうしたらうまくなれるか、強くなれるか、勝てるかを考えつづけ、そのためにいま何をしたらいいかを考えられるって、すごく頭のいいことなんですよ。

 囲碁や将棋でもそうですね。
 自分が次の一手をどうすると、相手はどう出てくるかということが、いく筋も見えてくる。この場合に自分がこうしたら、相手はどう出るか。こっちの手を打った場合、相手はどう出るか。先を読みながら戦っているわけです。
 自分がいま、何をしたらいいかがわかっている。それを考えて、次の行動をとることができる。それが頭のいい生き方っていうものなんです。

 中学生くらいだと、「将来のことを考えるといっても、大人になるのはまだまだ先のこと」と思っている人も多いです。
 だからといって、具体的に考えることを手放してしまってはダメです。
 将来のことを考えるって、夢を描くだけじゃない。いまの自分と、将来の自分との間に、道をつくっていくことなんですね。
 細かな点を打っていく、と言ってもいい。
 一本の線というのは、点が連なったものです。ひとつ、またひとつと小さな点を打っていくことで、線ができていく。いまの行動が、将来へつながる点のひとつになっていくわけです。

 たとえば、医者になるには、大学は医学部に行かなければいけません。
 医学部は難関です。だから、医者を目指す人は、中学ぐらいから準備を始めている人が多いです。
 先のことをあまり考えずに中学、高校時代を過ごして、大学を選択する時期になって、「いやあ、医者という選択肢もいいかもしれないなあ」と、そこからいきなり医学部を目指しても、非常にむずかしい。
 そこで初めて、「数学Ⅲを取ってないと、受けられる医学部ってほとんどないんだ」と気づく人がいたとしたら、ずいぶんボーッとしていたということになります。
 自分の目ざす方向に心と体をしっかり向ける。
 ちょっとした角度ですが、ひとつの点の打ち方で、その後の線の進む方向は変わっていくんです。

 
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著者

齋藤 孝

1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)などベストセラーも多数。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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