第33回
93話~95話
2016.09.06更新
公(こう)冶(や)長(ちょう)第五
93 自分の目で人物を判断する
【現代語訳】
孔子先生が公冶長(※)について言われた。「彼は娘を嫁にやってもいい人物だ。今、嫌疑を受けて獄に入れられているようだが、無実の罪だろう」。そして、先生は自分の娘と結婚させた。
また、孔子先生は南容(※)について言われた。「彼は、国に道義が通っていてまともなときには重用され、国に道義が通らなくなってしまっても、自重して刑を受けるようなことはしない」。そして、先生は自分の兄の娘と結婚させた。
(※)公冶長……孔子の娘婿で門人とされるが、詳しいことはわかっていない。なお、本章の後段を独立の章とする解釈もある。
(※)南容……姓は何宮(なんきゅう)。名は适。魯の人。孔子の門人。
【読み下し文】
子(し)、公冶(こうや)長(ちょう)を謂(い)う。妻(め)あわすべきなり。縲絏(るいせつ)(※)の中(なか)に在(あ)りと雖(いえど)も、其(そ)の罪(つみ)に非(あら)ざるなり、と。其(そ)の子(こ)を以(もっ)て之(これ)に妻(め)あわす。子(し)、南容(なんよう)を謂(い)う。邦(くに)に道(みち)あれば廃(はい)せられず、邦(くに)に道(みち)なきも、刑戮(けいりく)より免(まぬ)かる、と。其(そ)の兄(あに)の子(こ)を以(もっ)て之(これ)に妻(め)あわせなり。
(※)縲絏……牢獄。縄は黒なわ。絏はつなぐこと。
【原文】
子謂公冶長、可妻也、雖在縲絏之中、非其罪也、以其子妻之、子謂南容、邦有道不廃、邦無道免於刑戮、以其兄之子妻之、
94 人はよき師よき友を得ることで成長できる
【現代語訳】
孔子先生が弟子の子賤(しせん)(※)について言われた。「彼は、君子である。彼がここまでになれたのは、魯(ろ)の国、つまり今いる場所に見習うべき君子たちがいて、それに刺激を得たからこそだ」。
(※)子賤……魯の人。孔子より四十九歳年下。孔子の晩年の門人。
【読み下し文】
子(し)、子賤(しせん)を謂(い)う。君子(くんし)なるかな、若(かくのごと)き人。魯(ろ)の君子(くんし)なる者(もの)なくんば、斯(こ)れ焉(いすく)にか斯(こ)れを取(と)らん。
【原文】
子謂子賤、君子哉若人、魯無君子者、斯焉取斯、
95 もっと柔軟に学び、さらに上をめざしてほしい
【現代語訳】
子(し)貢(こう)が自分についての評価をたずねた。孔子先生は言われた。「お前は器(うつわ)(※)だ」。
少々不満な子貢はさらにたずねた。「どんな器ですか」。
孔子先生は言われた。「宗(そう)廟(びょう)の祭りに欠かせない瑚璉(これん)という重要な器だ(お前は大器であるから、もっと柔軟になって学び、さらに上をめざしてほしい)」。
(※)器……「うつわ」のこと。「君子は器ならず」(28話参照)という孔子の教えもあってか、子貢は少々不満があったようだ。ここで孔子が子貢を器と評したのは、素質は大器だが、それに満足することなく、上をめざすべきだと言いたかったからであろう。
【読み下し文】
子(し)貢(こう)、問(と)うて曰(いわ)く、賜(し)(※)や如何(いかん)。子(し)曰(いわ)く、女(なんじ)は器(き)なり。曰(いわ)く、何(なん)の器(き)ぞや。曰(いわ)く、瑚璉(これん)(※)なり。(※)賜……子貢のこと(10話参照)。論語にも多く登場する孔子の門人の中でも秀才とされる。
(※)瑚璉……宗廟の祭に供える玉をかざった貴重な器。
【原文】
子貢問曰、賜也何如、子曰、女器也、曰、何器也、曰、瑚璉也、
感想を書く