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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第34回

96話~98話

2016.09.07更新

読了時間

96 口がうまい人よりも中味がよい人をめざせ


【現代語訳】

ある人が言った。「雍(よう)(※)は仁の人といってよいほどの人格者だが、惜しいことに弁があまり立たない」。

孔子先生は言われた。「人を評価する際に、弁が立つかどうかを気にする必要はない。むしろ口がうますぎると、人に憎まれることもある。雍が仁者かどうかはわからないが、弁才がある必要はない」。


(※)雍……冉仲弓(ぜんちゅうきゅう)のこと。魯の人。孔子より二十九歳年少の門人。


【読み下し文】

或(あ)るひと曰(いわ)く、雍(よう)や、仁(じん)にして佞(ねい)ならず。子(し)曰(いわ)く、焉(いずく)んぞ佞(ねい)(※)なるを用いん。人に禦(あた)るに口給(こうきゅう)を以(もっ)てすれば、屡(しば)しば人に憎(にく)まる。其(そ)の仁(じん)なるを知(し)らず、焉(いずく)んぞ佞(ねい)なるを用(もち)いん。


(※)佞……弁才が立つこと。なお、「佞人」は、口がうまくてへつらい上手の人を指すが、「佞」という言葉だけはそこまでの悪意味はないとされる。


【原文】

或曰、雍也、仁而不佞、子曰、焉用佞、禦人以口給、屢憎於人、不知其仁也、焉用佞也、


97 よく学んでから仕事につきたい


【現代語訳】

孔子先生が、漆(しっ)雕(ちょう)開(かい)(※)に仕事を紹介し、仕えさせようとした。これに対し漆雕開は言った。「まだ、仕事に就くために必要な勉強は十分ではありません」。これを聞いて孔子先生はとても喜んだ。


(※)漆雕開……魯の人。孔子より十一歳年少の門人とされる。


【読み下し文】

子、漆雕(しっちょう)開(かい)をして仕(つか)えしめんとする。対(こた)えて曰(いわ)く、吾(わ)れは斯(こ)れをこれ未(いま)だ信(しん)ずる能(あた)わず、と。


【原文】

子使漆彫開仕、對曰。吾斯之未能信。子説。


98 勇を出すにも、準備、思慮分別は必要である


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「この国で正しい道理を行うことは難しそうだ。いっそ、いかだにでも乗って外国に行ってしまおうか。そんな時、いっしょに行ってくれるのは由(ゆう)(子(し)路(ろ))ぐらいだろうな」。子路はこれを聞いて喜び得意になった。

孔子先生は苦笑しながら言われた。「由(子路)は私以上に勇気があるな。ただ、そのいかだの材料はどこにもない(子路にいつも準備、思慮のないこと)」と冗談を言いつつたしなめられた。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、道行(みちおこな)われず。桴(いかだ)に乗(の)りて浮(う)かばん。我(われ)に従(したが)う者(もの)は其(そ)れ由(ゆう)なるか。子(し)路(ろ)、これを聞(き)きて喜(よろこ)ぶ。子(し)曰(いわ)く、由(ゆう)や、勇(ゆう)を好(この)むこと我(われ)に過(す)ぐ。材(よろしき)を取(と)る所(ところ)なし(※)。


(※)材を取る所なし……「材」を(よろしき)と読み、「裁」の意味だとする説もある(朱子など)。そうすると(子路は)「見さかいがなくて困る」という意味となる。


【原文】

子曰、道不行、乘桴浮于海、從我者其由也與、子路聞之喜、子曰、由也、好勇過我、無所取材、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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