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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第37回

104話~106話

2016.09.12更新

読了時間

104 まずはやさしい、具体的なことから学ぶ


【現代語訳】

子貢は言った。「孔子先生からは、実生活における徳のあり方や国家の礼楽制度についての具体的なことをよく教わった。しかし、人の生まれと運命、天の道などの抽象的な問題は、奥深く難しいこともあってか、なかなか教わることができない」。


【読み下し文】

子(し)貢(こう)曰(いわ)く、夫子(ふうし)(※)の文章(ぶんしょう)(※)は得(え)て聞(き)くべきなり、夫子(ふうし)の性(せい)(※)と天道(てんどう)とを言(い)うは、得(え)て聞(き)くべからざるなり。


(※)夫子……先生。

(※)文章……今日使う「文章」の意味とは異なる。その人に具体的に表れた徳や礼楽を意味する。

(※)性……生まれつき持ったものや運命を指す。


【原文】

子貢曰、夫子之文章、可得而聞也、夫子之言性與天道、不可得而聞也巳矣


105 教わったよいことはすぐに実践する


【現代語訳】

誠実な男であった子路は、孔子先生から教えられたことの実践を心がけており、まだそれができていない時には、新しいことを教わることを恐れた。


【読み下し文】

子(し)路(ろ)は聞(き)くことありて、未(いま)だこれを行(おこな)うこと能(あた)わざれば、唯(た)だ聞(き)くあらんことを恐(おそ)る。


【原文】

子路有聞、未之能行、唯恐有聞、


106 後輩、部下にも学べる人は本当にできる人


【現代語訳】

子(し)貢(こう)がたずねた。「孔(こう)文(ぶん)子(し)(※)は、どうして文(※)という諡(おくりな)をつけられたのでしょうか」。

孔子先生は言われた。「何事もよいことはすぐに実践し、よく学んで、たとえ後輩、部下にもよくたずねていた。だから文というよい諡名をつけられたのだ」。


(※)孔文子……衛の大夫。姓は孔、名は圉、文は諡である。

(※)文……諡で文を使われるのは最上とされる。文は学を好み、問いをよくするとの意味がある。


【読み下し文】

子(し)貢(こう)、問(と)うて曰(いわ)く、孔(こう)文子(ぶんし)は、何(なに)を以(もっ)てか之(これ)を文(ぶん)と謂(い)うや。子(し)曰(いわ)く、敏(びん)にして学(がく)を好(この)み、下問(げもん)を恥(は)じず。是(これ)を以(もっ)て之(これ)を文(ぶん)と謂(い)うなり。


【原文】

子貢問曰、孔文子何以謂之文也、子曰、敏而好學、不恥下問、是以謂之文也、

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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