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論語 全文完全対照版 野中根太郎

第38回

107話~109話

2016.09.13更新

読了時間

107 上に立つ者の心得


【現代語訳】

孔子先生が鄭(てい)の宰相であった子(し)産(さん)(※)について言われた。「彼は君子の徳を四つ備えていた。その態度はうやうやしくて謙そんがあり、上の者(君主)に対しては敬いの心があり、人民には恵み深く、その人民を使役する時も、よろしきを得て無理ないようにと考えた」。


(※)子産……公孫僑の字。鄭の公族の生まれで大夫。名臣として有名で、今でも小説の題材とされることがある。


【読み下し文】

子(し)、子産(しさん)を謂(い)う。君子(くんし)の道(みち)、四(し)あり、其(そ)の己(おのれ)を行(おこな)うや恭(きょう)、其(そ)の上(かみ)に事(つか)うるや敬(けい)、其(そ)の民(たみ)を養(やしな)うや恵(けい)、其(そ)の民(たみ)を使(つか)うや義(ぎ)。


【原文】

子謂子産、有君子之道四焉、其行己也恭、其事上也敬、其養民也惠、其使民也義、


108 親しくなっても敬意を失ってはいけない


【現代語訳】

孔子先生は言われた。「斉の名宰相・晏(あん)平仲(べいちゅう)(※)は人との交際の仕方がよくわかっていた。長くつき合ってもお互いを尊重し合えるように心がけていたものだ」。


(※)晏平仲……晏は姓。名は嬰(えい)。字は仲。平は諡である。斉の大夫で名臣とされる。子産とともに小説にもよく使われる。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、晏(あん)平仲(べいちゅう)は善(よ)く人(ひと)と交(まじ)わる。久(ひさ)しくしてこれを敬(けい)す(※)。


(※)久しくしてこれを敬す……「人これを敬す」とする説もあり、そう読むと人が晏平仲を尊敬するという意味になる。そうすると大した意味がなくなるので、本書本文のように解したい。


【原文】

子曰、晏平仲善與人交、久而人敬之、


109 知者は礼を大切にする

【現代語訳】

孔子先生は言われた。「魯(ろ)の大夫(権力ある貴族)の臧(ぞう)文(ぶん)仲(ちゅう)(※)は知者と評判のようだが、私は違うと思う。なぜなら諸侯しか持てない卜(うらない)に用いる大亀を持ち、宗(そう)廟(びょう)の室の柱の上に山の模様を彫刻し、梁の上の小柱に藻(から)文(くさ)の模様を描いている。こんな礼を知らない者が知者のはずがない」。


(※)臧文仲……姓は臧孫(ぞうそん)。名は辰。字は仲。文は諡である。魯の大夫。


【読み下し文】

子(し)曰(いわ)く、臧(ぞう)文(ぶん)仲(ちゅう)は、蔡(さい)(※)を居(お)き、節(せつ)に山(さん)し、梲(せつ)に藻(そう)す。如何(いかん)其(そ)れ知(ち)ならんや。


(※)蔡……亀人のこと。国の大事ある時に甲を焼いて、その割れ方により占う。「蔡」は地名であるが、大亀の産地だったことから亀人の意味となった。


【原文】

子曰、臧文仲居蔡、山節藻梲、何如其知也

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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