第40回
111話~113話
2016.09.15更新
111 考えることはよいことだが、考えすぎもよくない
【現代語訳】
魯(ろ)の大夫(たいふ)(権力者である貴族)である季(き)文子(ぶんし)は三度も考えてから(慎重に考えてから)、実行に移した。
これを聞いて孔子先生は言われた。「考えすぎてはいけない。二度考えるくらいでよい」。【読み下し文】
季(き)文子(ぶんし)(※)、三思(さんし)(※)して後(のち)に行(おこな)う。子(し)、これを聞(き)きて曰(いわ)く、再(ふたた)びせば斯(こ)れ可(か)なり。
(※)季文子……季孫子三代目の人。名は行父。文子は諡。
(※)三思……三回は考えること、たびたび考えること指す。
【原文】
季文子三思而後行、子聞之曰、再思斯可矣、
112 正しい目的のためには、愚か者といわれてもいい
【現代語訳】
孔子先生は言われた。「衛(えい)の大夫(権力ある貴族)である甯(ねい)武士(ぶし)は、国が正しく治まっている時には知恵者として立派に働いた。君主が変わり、悪政が行われるようになってからは、人から愚か者と見られながらも国のために働いた。知恵者のように生きることはできても、正しい目的を達するためとはいえ、愚か者のように生きるというのは誰にでもできることではない」。
(※)甯武士……甯は姓、名は兪、武は諡。衛の大夫。
【読み下し文】
子曰(しいわ)く、甯(ねい)武士(ぶし)は、邦(くに)に道(みち)あれば知(ち)、邦(くに)に道(みち)なければ愚(ぐ)。其(そ)の知(ち)は及(およ)ぶべきなり。其(そ)の愚(ぐ)は及(およ)ぶべからざるなり。
【原文】
子曰、甯武子、邦有道則知、邦無道則愚、其知可及也、其愚不可及也、
113 後進をよく育て、未来に役立つことをしたい
【現代語訳】
孔子先生は、理想の政治実現をめざして諸国を旅し、国に仕えようとしていたが、ある時、陳(ちん)で、決意されて言われた。「帰ろう。帰ろう。我が故国、魯にはたくさんの若い弟子たちが待っている。彼らは志は大きいけれど、まだ実践できるまでにいっていない。模様あざやかなすばらしい布を織っていても、それをうまく裁断して服にできていないようなものだ。これからいっしょに学んで、将来のために役立てる人材にしていこう」。
【読み下し文】
子(し)、陳(ちん)(※)に在(あ)りて曰(いわ)く、帰(かえ)らんか、帰(かえ)らんか。吾(わが)が党(とう)の小子(しょうし)、狂簡(きょうかん)(※)にして、斐(ひ)然(ぜん)として章(しょう)を成(な)す(※)も、これを裁(さい)する所以(ゆえん)を知(し)らざるなり。
(※)陳……現在の江南省にあった小国。
(※)狂簡……「狂」は志が大きくて進取の気があること。「簡」はまだ未完成であることの意。
(※)斐然として章を成す……「斐然」は美しくあざやかな模様のことを意味する。章を成す」とは、「織られていること」で人材の基礎ができていることを指す。
【原文】
子在陳曰、歸與歸與、吾黨之小子狂簡、斐然成章、不知所以裁之也、
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