第11回
ファウスト
2018.07.03更新
「フィガロの結婚」「トゥーランドット」「椿姫」「トリスタンとイゾルデ」などなど……。オペラには、女と男の愛、騙し騙され合いの駆け引き、生死を賭けた戦い…などなど、人間のドラマが色濃く描かれています。本連載では『マンガでわかる「オペラ」の見かた』単行本出版を記念して、書籍から厳選コンテンツを特別公開!
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フランスの名作
悪魔に魂を売り、若返ったファウスト博士と純真な娘との悲恋
ファウスト
作曲:グノー
原作:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『ファウスト』
台本:ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ(フランス語)
初演:1859年3月19日/パリ/リリック劇場 構成:5幕/約3時間20分
グノーの信仰心を表したゲーテの文学作品オペラ
グノーは、有名な『アヴェ・マリア』や、荘厳ミサ曲など、信仰心に満ちた敬虔な作品を多く残しています。オペラ作品は『サフォー』からオペラ作家の道を歩み始め、本作が初めて世に認められました。元々ゲーテの『ファウスト』に傾倒していたグノーは、これを題材にしたオペラの計画に大いに乗り気で、『ファウスト』第1部が台本化されました。
この頃のフランスはドイツ文学がブームでした。『ミニョン』や『ウェルテル』などのゲーテの作品を基にしたオペラも多く上演されていました。台詞を含むオペラ・コミックとして作曲されましたが、出版社の要望で台詞にも音楽がつけられ、ドイツ各地でも人気を博します。1869年にはパリのオペラ座公演のためにグランド・オペラの慣例に合わせて第5幕にバレエが追加。現在はこの形で上演されています。有名なアリアは、悪魔メフィストフェレスが人間を悪の世界に誘う「金の子牛の歌」、ファウストの「清らかな住まい」、マルグリートの「宝石の歌」などです。
物語ではファウストとの不実の子供を殺めて牢獄に入ったマルグリートを、ファウストと悪魔は助けようとします。彼女が悪魔の救済を断り、天の救済に身を委ねて昇天する時に歌われる三重唱は、グノー自身の信仰宣言ともいえます。
プロフィール
生名:シャルル・フランソワ・グノー
誕生日:1818 年6 月17 日
出身地:フランス/パリ
死没:1893 年10 月18 日
主なオペラ作品
・血まみれの修道女(1854年 パリ)
・いやいやながら医者にされ(1858年 パリ)
・ファウスト(1859年 パリ)
・鳩(1860年 バーデン=バーデン)
・ミレイユ(1864年 パリ)
・ロメオとジュリエット(1867年 パリ)
・ザモラの貢ぎ物(1881年 パリ)
『ファウスト』の成功 オペラと宗教曲の大家
パリ音楽院で音楽を学び、カンタータ※『フェルナン』でローマ大賞を受賞したためローマに留学。パリに戻ってからはサン・トゥスタッシュ教会の聖歌隊楽長兼、教会オルガニストとなりました。
その頃、オペラをいくつも書きますが不振が続きました。しかし、『ファウスト』で大成功を収め、後の『ロメオとジュリエット』と共に広く知られることとなります。
後半生は主に宗教曲を手掛け、なかでもバッハの『平均律クラヴィーア曲集』の前奏曲に旋律を乗せた『アヴェ・マリア』は有名で、グノーのアヴェ・マリアとして現在でも親しまれています。
※カンタータ:17世紀後半にイタリアで生まれた、器楽伴奏付きの声楽曲。
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