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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第0回

はじめに

2018.12.03更新

読了時間

日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。

はじめに

 「老子」は、「論語」と並ぶ中国生まれの大古典である。

 しかし、中国でそれぞれ儒教、道教として長く生き、政治にも応用されたが、それはあくまでも表面的なものにすぎなかった。

 特に儒教はその傾向が強く、中国とともに儒教の国と呼ばれた韓国では、儒教を形として社会制度に組み込み、その弊害の面が多く出た。一部の支配階級のために利用されてきたのだ。

 「老子」「論語」を素直に読めばすばらしい内容で、今でも哲学、思想、生活の知恵として大いに役立つのがよくわかる。

 解説でも詳述するように、「老子」は「論語」に対する批判の書として登場した。その哲学は深く、またまるで現代の宇宙論としても通用する内容から、為政者の政策、そして私たち庶民の日常の心がまえまで考えさせてくれるものである。

 このように「論語」と「老子」は対立する思想哲学を持つが、どちらも国家、社会、私たちの暮らしをよくしていくために考え抜かれて提案されたものである。

 「論語」の内容が深く日本人の精神、心に染み込んでいるのはよくわかる。新渡戸稲造の『武士道』でも仏教、神道に加え、「論語」「孟子」が武士道に影響を与えてきたとある。

 しかし、今回の執筆にあたり、「老子」を何十回と精読してみて考えさせられたことは、日本人への影響が強いということだ。「論語」もそうであるが、外面的ではなく、「老子」の内容そのものが日本人の精神、心にうまく入り込んでいるのである。

 加えて、「老子」とそれに続く道教は、日本の仏教、神道にも大きな影響を与えて、入り込んでいるのが少しずつわかってきた。その解明は、これからの大きな課題であろう。

 また、「老子」を読んでいると、日本の自然と祖先をお陽様(この世をつかさどるもの、宇宙とか天)と呼び、神が宿るという八百万神(やおろずのかみ)の信仰は、まるで「老子」の「道」とはこのようなものに近いのではないかと思わせる。

 「老子」は万物の根源たる「道」がすべて万物を生み出し、それに従って生きないと人も幸せになれないという。それなのに、人間はやれ「万物の霊長」とか、やれ「不可能はない」とかいって、原爆、人工知能(AⅠ)、遺伝子操作などの今わかっているだけの科学を絶対的なものとして重きを置き、その活動は人が宇宙、地球、自然の中で生きている原点を忘れているかのようだ。

 そんな時代の今こそ、日本の神道的発想(自然を敬う)とともに、「老子」の「道」(タオ)の意識的な学習が迫られている。

 私はさらに「老子」を読んでいて仏教を感じ、特に親鸞を思い起こした。

 高校生のとき、日本の名著シリーズ(中央公論社)の刊行が始まって、そこで親鸞を買って読んだが、よくわからなかった。「悪人正機説」などほとんど理解できなかった。そもそも浄土宗でいう「他力」さえもわからなかった。

 しかし、今、「老子」を学んでいくと、「道」の哲学や「無為」の思想などから、それがつながっているように思える。そして、親鸞や浄土宗、浄土真宗の教えが理解しやすくなった。親鸞が「老子」を愛読していたのもうなずける。いや、他の仏教者や昔の日本の知識人たちも「老子」を読み込んでいたのである。そういう意味で「老子」は、仏教ともかなりの親近性があったのだ。

 以上のことから現代人、特に今の日本人にとって原点の一つである「老子」は必読の書である。

 本書は、こうした問題意識から生まれた。だから、「老子」の内容については多くの争いがあるものの、これまで一般に形成されてきた解釈を中心としている。入門書として最適で、かつ坐右の書、基本となる本を目指した。

野中根太郞


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術-相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(共に誠文堂新光社)などがある。

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