Facebook
Twitter
RSS
全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第17回

淳風第十七

2018.12.27更新

読了時間

日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら

淳風第十七

17 上(トップ)の者は誠実であり、余計な口出しはしない

【現代語訳】

最高によい君主(為政者)というのは、余計な政治や干渉はしないことから、人々はそういう君主がいることを知っているだけである。その次によい君主は、人々が親しみ誉めたたえる人である。その次の君主は、人々が恐れてしまう人だ。その次の君主は、人々が侮る人である。
君主に誠実さが足りないと、人々は信頼しない。
君主が悠然(ゆうぜん)としていて、言葉も慎重にして、余計なことに口出さなければ、仕事はうまくいく。人々は、誰もが、自分がやるべくしてやったと言うのである。

【読み下し文】

太上(たいじょう)(※)は、下(しも)、これ有(あ)るを知(し)るのみ。其(そ)の次(つぎ)はこれを親(した)しみ誉(ほ)む。其(そ)の次(つぎ)はこれを畏(おそ)る。其(そ)の次(つぎ)はこれを侮(あなど)る。
信(しん)足(た)らざれば、焉(ここ)に信(しん)ぜられざること有(あ)り。
悠(ゆう)として其(そ)れ言(げん)を貴(たっと)ぶ(※)。功(こう)を成(な)し事(こと)を遂(と)げて、百姓(ひゃくせい)皆(みな)我(わ)れ自(おの)ずから然(しか)り(※)と謂(い)う。

  • (※)太上……最高の君主、為政者。最高の時代とする説もある。なお、原文の「太上下知有之」を「太上不知有之」とする説もある。これによると「君主(為政者)の存在を知らない」と訳することになる。
  • (※)言を貴ぶ……言葉を慎重にする。余計なことに口出さない(介入しない)。
  • (※)自ずから然り……他の力を借りることなく、自分の力で自然にできること。

【原文】

淳風第十七

太上下知有之。其次親而譽之。其次畏之。其次侮之。
信不足焉、有不信焉。
悠兮、其貴言。功成事遂、百姓皆謂我自然。

「目次」はこちら


【単行本好評発売中!】

この本を購入する
シェア

Share

感想を書く感想を書く

※コメントは承認制となっておりますので、反映されるまでに時間がかかります。

著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

矢印