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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第18回

俗薄第十八

2018.12.28更新

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日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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俗薄第十八

18 大いなる「道」と一体化すれば仁義などの徳はいらない

【現代語訳】

大いなる「道」が廃(すた)れて仁義などの徳が主張され始めた。人のさかしらな知恵などがはたらき始めて、大いなる偽(うそ)ごとがまかり通り出した。家族の和がなくなって、親への孝行とか親の慈愛などが徳として強調されるようになった。国家がひどく乱れてしまい、そこから忠臣などが現れるようになった。

【読み下し文】

大道(たいどう)(※)廃(すた)れて、仁義(じんぎ)(※) 有(あ)り。智慧(ちえ)出(い)でて、大偽(だいぎ)有(あ)り。六親(りくしん)(※) 和(わ)せずして、孝慈(こうじ)有(あ)り。国家(こっか)昏乱(こんらん)して、貞臣(ていしん)(※) 有(あ)り。

  • (※)大道……大いなる「道」。體衟第一の「常の道」と同じ。第一章の「道の道とすべきは」は、ここで示される「仁義、孝慈、貞臣」に当たる。老子は孔子より後の人と解されているが、本章も第一章と同じく、孔子に始まる儒教に対する批判が述べられているようだ。
  • (※)仁義……愛や真心とそれを実践するときの規準(正しさ)をいう。「仁」と「義」はそれぞれの徳として孔子は述べているが、「仁義」と一つの言葉にして展開したのは孟子に始まるとされる。老子の研究で知られる楠山春樹氏によると、「老子」は、我が国の通説では、「まず前300年以降に原本が作られ、その後いくたびとなく増補改定が加えられて、現行本としての最終的成立は前漢の中期、前百年ころに下る」とされる。また、「原本の成立を前三百年以降とするのは、儒教批判の文中に、『論語』にはなく『孟子』に始まる「仁義」の語が見えること(十八章)などが主たる根拠」とされている(『老子入門』講談社学術文庫、楠山春樹著)。
  • (※)六親……親子、兄弟、夫婦の関係で、近親家族のこと。
  • (※)貞臣……原文を「忠臣」とする説も多い。貞臣と意味は同じ。忠臣、実直な臣下のこと。

【原文】

俗薄第十八

大道廢、有仁義。智慧出、有大僞。六親不和、有孝慈。國家昏亂、有貞臣。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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