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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第30回

儉武第三十

2019.01.17更新

読了時間

日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
「もくじ」はこちら

儉武第三十

30 盛んになれば、早く衰える(だめになる)

【現代語訳】

「道」にもとづいて君主を補佐する者は、武力でもって天下(世界)をおびやかしたりしない。そんなことをすると、悪い報いがおとずれることになる。軍隊のいるところは、いばらが生えて畑は荒れ、大きな戦争の後は、必ず凶作になる。
「道」に従う人は、目的を果たすだけである。目的さえ果たせば、それ以上の無駄な強行策をとらない。目的を果たせば、それ以上の自分の才を誇り自慢することはなく、目的を果たせば、それ以上の自分の功績を誇ることはなく、目的を果たせば、それ以上傲慢になることもなく、目的を果たしても、それは避けられないやむをえないことをしたまでのこととする。目的を果たしても強さを誇示するようなことはしない。
物事は勢いが盛んになれば、必ず衰えに向かうことになる。これを不動(「道」に反している)という。「道」に反している者は、早く衰える(だめになる)。

【読み下し文】

道(みち)を以(もっ)て人主(じんしゅ)を佐(たす)くる者(もの)は、兵(へい)を以(もっ)て天下(てんか)に強(つよ)くせず。其(そ)の事(こと)は還(かえ)るを好(この)む。師(し)(※)の処(お)る所(ところ)は、荊棘(けいきょく)焉(ここ)に生(しょう)じ、大軍(たいぐん)の後(のち)は、必(かなら)ず凶年(きょうねん)有(あ)り。
善者(ぜんしゃ)は果(な)すのみ(※)。以(もっ)て強(つよ)きを取(と)らず。果(な)して矜(ほこ)ること勿(な)く、果(な)して伐(ほこ)ること勿(な)く、果(な)して驕(おご)ること勿(な)く、果(な)して已(や)むを得(え)ず、果(な)して強(つよ)くすること勿(な)かれ(※)。
物(もの)は壮(さかん)なれば則(すなわ)ち老(お)ゆ(※)。是(こ)れを不動(ふどう)と謂(い)う。不動(ふどう)は早(はや)く已(や)む。

  • (※)師……ここでは軍隊のこと。
  • (※)善者は果すのみ……「道」に従う人は、目的を果たすだけである。なお、「善者」を「武力をうまく使う者」と解する説もある。「果」についても「勝」と解する説もある。ここでの老子の考え方は、『孫子』の「兵(へい)は拙速なるを聞くも、功久なるを未だ睹みざるなり」(作戦篇)、「夫れ戦勝攻取して、其の功を修めざる者は凶なり」(火攻篇)などと似ている。
  • (※)果して強くすること勿かれ……原文は「果而勿強」であるが、この四字の前に「是謂」の二字を補う説もある。すると、以上の四句を結んでいることになり、わかりやすくなる。現代語訳としては「こうしたことを目的を果たしても強さを誇示しないというのである」などとする。
  • (※)物は壮なれば則ち老ゆ……物事は勢いが盛んになれば必ず早く衰えるということ。玄符第五十五にも同じ文章がある。

【原文】

儉武第三十

以道佐人主者、不以兵強天下、其事好還。師之所處、荊棘生焉。大軍之後、必有凶年。
善者果而已、不以取強。果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕。果而不得已、果而勿強。
物壯則老、是謂不道、不道早已。

「目次」はこちら


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術-相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(共に誠文堂新光社)などがある。

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