第68回
配天第六十八
2019.03.13更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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配天第六十八
68 不争の徳
【現代語訳】
「道」を身につけた立派な人は、武に頼らない(猛々(たけだけ)しくない)。本当にうまく戦う人というのは、決して怒らない。うまく敵に勝つ人というのは、敵と正面から争うことをしない。うまく人を用いる人というのは、相手にへりくだっているものだ。こういうのを「不争の徳」といい、また「人の力を利用する」という。そしてこれを「天と合致する在り方」という。昔からの法則である。
【読み下し文】
善(よ)く士(し)たる者(もの)は武(ぶ)ならず。善(よ)く戦(たたか)う者(もの)(※)は怒(いか)らず。善(よ)く敵(てき)に勝(か)つ者(もの)は与(とも)にせず(※)。善(よ)く人(ひと)を用(もち)うる者(もの)はこれが下(した)と為(な)る。是(こ)れを不争(ふそう)そうの徳(とく)(※)と謂(い)い、是(こ)れを人(ひと)の力(ちから)を用(もち)うと謂(い)い、是(こ)れを天(てん)に配(はい)す(※)と謂(い)う。古(いにしえ)の極(きょく)(※)なり。
- (※)善く戦う者……本当にうまく戦う者。兵法書の最高峰である『孫子』にも「善く戦う者」や「善く兵を用いる者」という表現は多い。また老子と同じように、戦わないで勝つという不戦の方法もすすめている。「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」など(拙著『全文完全対照版 孫子コンプリート』謀攻篇参照)。
- (※)与にせず……関係しない。ここでは敵と正面から争うことはしないの意味。
- (※)不争の徳……争わないことでうまくいくという徳で老子の基本思想の一つ。易性第八、益謙第二十二、後己第六十六、任爲第七十三など参照。
- (※)配す……合致する。かなう。
- (※)古の極……昔からの法則。在り方。決まり。
【原文】
配天第六十八
善爲士者不武、善戰者不怒、善勝敵者不與、善用人者爲之下。是謂不爭之德、是謂用人之力、是謂配天、古之極。
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