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よみものどっとこむ

孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第26回

73話~75話

2018.02.20更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

73 「挂」の地形、「支」の地形

【現代語訳】

挂とは、進撃は容易だが、退却が難しい地形のことをいう。
挂の地形では、もし敵に備えがなければ、先に出撃してよい態勢をつくっておけば勝つことができる。しかし、敵が先に備えていれば進撃しても勝つことができず、退却も難しいので、不利である。
支とは、こちらが出撃しても、敵が出撃してきても不利となる地形をいう。
支の地形では、たとえ敵が利益で誘ってきても出撃してはならない。そういうときは味方の軍を退却させ、それに応じて敵の半分が追撃してきたところを反攻すると有利となる。

【読み下し文】

以(もっ)て往(ゆ)くべく、以(もっ)て返(かえ)り難(がた)きを、挂(かい)(※)と曰(い)う。挂(かい)なる形(けい)は、敵(てき)に備(そな)え無(な)ければ、出(い)でてこれに勝(か)つ。敵(てき)に若(も)し備(そな)え有(あ)れば、出(い)でて勝(か)たず、以(もっ)て返(かえ)り難(がた)くして不利(ふり)なり。我(われ)出(い)でて不利(ふり)、彼(かれ)も出(い)でて不利(ふり)なるを、支(し)(※)と曰(い)う。支(し)なる形(けい)は、敵(てき)、我(われ)を利(り)すると雖(いえど)も、我(われ)出(い)ずること無(な)かれ。引(ひ)きてこれを去(さ)り、敵(てき)をして半(なか)ば出(い)でしめてこれを撃(う)つは利(り)なり。

  • (※)挂……第十章・地形篇72話の「通」の対となるもの。さまたげ、さわりのある土地のこと。「挂(ひつか)かる」と読む人もある。
  • (※)支……「支(わか)るる」と読む人もある。枝道の多い地形である。

【原文】

可以徃、難以﨤、曰挂、挂形者、敵無備、出而勝之、敵若有備、出而不勝、難以﨤不利、我出而不利、彼出而不利、曰支、支形者、敵雖利我、我無出也、引而去之、令敵半出而擊之利、

74 「隘」の地形、「険」の地形

【現代語訳】

隘とは、山の谷間などの狭い地形(いわゆる隘路(あいろ))のことである。 この隘では、先にその場所を占拠していれば、必ずその狭い出入り口に兵力を集中して敵がくるのを待つようにする。もし、先に敵がその場所を占拠し出入り口に兵力を集中していたら、攻撃してはならない。もし、敵が出入り口に兵力を集中していなければ攻撃してよい。
険とは、高く険しい地形のことをいう。険では、先にその場所を占拠しているときは、必ず見通しのよい陽が当たる高地で敵がくるのを待つようにする。もし、敵が先にそこを占拠していたら、軍隊を退却させるようにし、攻撃してはならない。

【読み下し文】

隘(あい)(※)なる形(けい)は、我(われ)先(ま)ずこれに居(お)れば、必(かなら)ずこれを盈(み)(※)たして以(もっ)て敵(てき)を待(ま)つ。若(も)し敵(てき)先(ま)ずこれに居(お)り、盈(み)つれば而(すなわ)ち従(したが)うこと勿(な)かれ。盈(み)たざれば而(すなわ)ちこれに従(したが)え。険(けん)なる形(けい)は、我(われ)先(ま)ずこれに居(お)れば、必(かなら)ず高陽(こうよう)に居(お)りて以(もっ)て敵(てき)を待(ま)つ。若(も)し敵(てき)先(ま)ずこれに居(お)れば、引(ひ)きてこれを去(さ)り、従(したが)うこと勿(な)かれ。

  • (※)隘……「隘(せま)き」と読む人もある。せまいこと。
  • (※)盈……「満ちる」「いっぱいにする」の意。ここでは兵を集中していっぱいにしておくこと。なお、「盈進(えいしん)」という言葉は、日本の学校や人名にもよく使われている。「努力して進歩する」「がんばって集中して進歩する」などという意味。

【原文】

隘形者、我先居之、必盈之以待敵、若敵先居之、盈而勿從、不盈而從之、險形者、我先居之、必居高陽以待敵、若敵先居之、引而去之勿從也、

75 「遠」の地形

【現代語訳】

遠とは、自国から遠く離れたところのことをいう。遠の場合、こちらと敵の戦力が互角ならば戦いをしかけるのは難しい。もし、戦えば不利となる。
以上の六つのことは地形の道理である。これらの道理の判断は将軍のなすべき重要な任務となるので、よく考えなければならない。

【読み下し文】

遠(えん)なる形(けい)(※)は、勢(せい)均(ひと)しければ以(もっ)て戦(たたか)いを挑(いど)み難(がた)く、戦(たたか)えば而(すなわ)ち不利(ふり)なり。凡(およ)そ此(この六者(ろくしゃ)は、地(ち)の道(みち)なり。将(しょう)の至任(しにん)(※)にして、察(さっ)せざるべからざるなり。

  • (※)遠なる形……自国から遠く離れたところ。「遠(とお)き形」と読む人もいる。
  • (※)至任……重要な任務、役割のこと。

【原文】

遠形者、勢均難以挑戰、戰而不利、凢此六者、地之衜也、將之至任、不可不察也、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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