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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第29回

82話~84話

2018.02.23更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

82 勝敗が五分五分のとき

【現代語訳】

味方の軍隊が敵を攻撃して勝利できる力があることがわかっても、敵に十分な備えがあるために攻撃してはいけないときがある。
このことを知っていないと勝敗は五分五分である。
敵の情勢が攻撃してよい状況にあるとわかっても、味方の軍隊が攻撃するのに十分でないときがある。
このことを知っていないと勝敗は五分五分である。
敵の情勢が攻撃してよい状況にあることを知り、こちらの軍隊が敵を攻撃してもよい状況であることを知っていても、地形の状況が不利で戦ってはいけないときがある。
これを知らないと勝敗は五分五分である。

【読み下し文】

吾(わ)が卒(そつ)の以(もっ)て撃(う)つべきを知(し)るも、而(しか)も敵(てき)の撃(う)つべからざるを知(し)らざるは、勝(かち)の半(なか)ば(※)なり。敵(てき)の撃(う)つべきを知(し)るも、而(しか)も吾(わ)が卒(そつ)の以(もっ)て撃(う)つべからざるを知(し)らざるは、勝(かち)の半(なか)ばなり。敵(てき)の撃(う)つべきを知(し)り、吾(わ)が卒(そつ)の以(もっ)て撃(う)つべきを知(し)るも、而(しか)も地形(ちけい)の以(もっ)て戦(たたか)うべからざるを知(し)らざるは、勝(かち)の半(なか)ばなり。

(※)勝の半ば……勝敗は五分五分であり、わからないこと。すなわち勝ったり負けたりであること。厳密な意味での勝率五割ということではない。なお、第三章・謀攻篇23話の「一勝一負す」と同じ意味となる。

【原文】

知吾卒之可以擊、而不知敵之不可擊、勝之半也、知敵之可擊、而不知吾卒之不可以擊、勝之半也、知敵之可擊、知吾卒之可以擊、而不知地形之不可以戰、勝之半也、

83 常に勝つ条件

【現代語訳】

こうした戦争のことによく通じた者は、軍隊を動かしても迷いがなく、戦っても窮することはない(常に勝つ)。
だから「敵の状況を知り、味方の状況を知っていれば勝利は確実であるし、さらに地形の状況をよく知り、天(陰陽、寒暑、時節など)をよく知り、地形のことをよくわかっていれば、常に勝つことになる」といわれるのである。

【読み下し文】

故(ゆえ)に兵(へい)を知(し)る者(もの)は、動(うご)いて迷(まよ)わず、挙(あ)げて窮(きゅう)せず(※)。故(ゆえ)に曰(いわ)く、彼(かれ)を知(し)り己(おのれ)を知(し)れば(※)、勝(かち)乃(すなわ)ち殆(あや)うからず、天(てん)(※)を知(し)り地(ち)を知(し)れば(※)、勝(かち)乃(すなわ)ち窮(きゅう)せず。

  • (※)窮せず……「窮(きわ)まらず」とも読む。困らないこと、常に勝つこと。なお、原文の「乃不窮」を「乃可全」とする説もある。この立場からは「勝(かち)乃(すなわ)ち全(まっと)うすべし」と読み、「いつでも勝てる」とか「完全に勝てる」とか訳することになる。
  • (※)彼を知り己を知れば……第三章・謀攻篇23話参照。
  • (※)天……第一章・計篇2話参照。
  • (※)天を知り地を知れば……これは原文を「知天知地」とした場合の読み方であるが、原文を「知地知天」とし、「地を知り天を知れば」と読む説も根強い。全体の意味は変わらない。

【原文】

故知兵者、動而不迷、擧而不窮、故曰、知彼知己、勝乃不殆、知天知地、勝乃不窮、

第十一章 九地篇

84 「散地(さんち)」、「軽地(けいち)」、「争地(そうち)」という地形

【現代語訳】

孫子は言った。戦争で兵を動かす法則については、戦場となる地を「散地」「軽地」「争地」「交地」「衢地」「重地」「圮地」「囲地」「死地」の九つに分けて考えるとよい。
諸侯が自国の領地内で戦うところを散地という。
敵国の領地内に入って戦うが、まだ深く入っていないところを軽地という。
味方が占領すれば有利となり、敵が占領すると敵に有利となるところを争地という。

【読み下し文】

孫子(そんし)曰(いわ)く、用兵(ようへい)の法(ほう)に、散地(さんち)有(あ)り、軽地(けいち)有(あ)り、争地(そうち)有(あ)り、交地(こうち)有(あ)り、衢地(くち)有(あ)り、重地(じゅうち)有(あ)り、圮地(ひち)有(あ)り、囲地(いち)有(あ)り、死地(しち)有(あ)り。諸侯(しょこう)自(みずか)ら其(そ)の地(ち)に戦(たたか)うを散地(さんち)(※)と為(な)す。人(ひと)の地(ち)に入(い)りて深(ふか)からざるを、軽地(けいち)(※)と為(な)す。我(われ)得(う)れば則(すなわ)ち利(り)なり、彼(かれ)得(う)るも亦(ま)た利(り)なるを、争地(そうち)と為(な)す。

  • (※)散地……兵士に里心がついてすぐ帰りたがるので離散しやすい土地とされる。
  • (※)軽地……やはり、まだ兵士が帰りたがり、戦意が固まりにくい土地とされる。

【原文】

孫子曰、用兵之法、有散地、有輕地、有爭地、有交地、有衢地、有重地、有圮地、有圍地、有死地、諸侯自戰其地、爲散地、入人之地而不深者、爲輕地、我得則利、彼得亦利者、爲爭地、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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