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よみものどっとこむ

孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第30回

85話~87話

2018.02.26更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

85 「交地(こうち)」、「衢地(くち)」、「重地(じゅうち)」という地形

【現代語訳】

味方も行くことができ、敵も来ることができるところを交地という。
諸侯の国々の領地と接していて、先にそこに至って占領した者が天下の人々を掌握できるところを衢地という。
敵国に深く侵入し、背後に敵の城が多くあるところを重地という。

【読み下し文】

我(われ)以(もって往(ゆ)くべく、彼(かれ)以(もっ)て来(き)たるべき者(もの)を、交地(こうち)と為(な)す。諸侯(しょこう)の地(ち)三属(さんぞく)(※)し、先(さき)に至(いた)れば天下(てんか)の衆(しゅう)を得(う)る者(もの)を、衢地(くち)(※)と為(な)す。人(ひと)の地(ち)に入(い)ること深(ふか)く、城邑(じゅうゆう)を背(せ)にすること多(おお)き者(もの)を、重地(じゅうち)と為(な)す。

  • (※)三属……「四属」の間違いとする説もある。意味は同じで「四方が諸侯の国々とつながっている交通の要衝」を意味する。
  • (※)衢地……「衢」とは四方に通ずる道、分かれ道のことをいう。そこから、「ここを押さえることで諸侯や天下の人々を掌握できる重要地域」のことを指す。

【原文】

我可以徃、彼可以來者、爲交地、諸侯之地三屬、先至而得天下之衆者、爲衢地、入人之地深、背城邑多者、爲重地、

86 「圮地(ひち)」、「囲地(いち)」、「死地(しち)」という地形

【現代語訳】

山林や険しい地形あるいは湿地帯など、行動しづらいところを圮地という。
入っていく道が狭く、引き返す道も曲がりくねっていて遠くなり、敵が少なくても味方の大軍を攻撃できるところを囲地という。
迅速にかつ必死に戦えば生きて帰れるが、攻撃が遅れたり必死に戦わなければ全滅してしまうところを死地という。

【読み下し文】

山林(さんりん)、険阻(けんそ)、沮沢(そたく)、凡(およ)そ行(い)き難(がた)きの道(みち)なる者(もの)を、圮地(ひち)(※)と為(な)す。由(よ)りて入(い)る所(ところ)の者(もの)隘(せま)く、従(したが)って帰(かえ)る所(ところ)の者(もの)迂(う)にして、彼(かれ)寡(か)にして以(もっ)て吾(わ)れの衆(しゅう)を撃(う)つべき者(もの)を、囲地(いち)と為(な)す。疾戦(しっせん)すれば則(すなわ)ち存(そん)し、疾戦(しっせん)せざれば則(すなわ)ち亡(ほろ)ぶ者(もの)を、死地(しち)と為(な)す。

  • (※)山林險阻沮澤……この原文の前に「行」という文字を入れる説もある。一九七二年に発見された竹簡本には、これが入っている。
  • (※)圮地……「圮」は「毀」の意味で、大変困難なところを指す。なお、原文の「圮(ひ)」は「泛(はん)」であるとする説もある。意味は「うかびただよう」、つまり「足場の悪い」となり、「圮」とあまり変わらない。

【原文】

山林險阻沮澤(※)、凢難行之衜者、爲圮地、所由入者隘、所從歸者迂、彼寡可以擊吾之衆者、爲圍地、疾戰則存、不疾戰則兦者、爲死地、

(※)山林險阻沮澤……この原文の前に「行」という文字を入れる説もある。一九七二年に発見された竹簡本には、これが入っている。

87 九地それぞれの戦い方の基本原則

【現代語訳】

以上から、散地では戦わないようにする。軽地では止とどまってはならない。
争地では先にそこを占領するようにし、もし先に敵にそこを占領されたら無理に攻撃しない。
交地では軍の隊列を切り離されないようにする。
衢地ではすぐに諸侯と友好関係を結ぶ。
重地では敵の食糧、物資を奪い現地調達をする。
圮地では速やかに通過する。
囲地では早く脱出することを謀る。
死地では必死に戦う。

【読み下し文】

是(こ)の故(ゆえ)に、散地(さんち)には則(すなわ)ち戦(たたか)うこと無(な)く、軽地(けいち)には則(すなわ)ち止(とど)まること無(な)く、争地(そうち)には則(すなわ)ち攻(せ)むること無(な)く、交地(こうち)には則(すなわ)ち絶(た)つこと無(な)く(※)、衢地(くち)には則(すなわ)ち交(こう)を合(あ)わせ、重地(じゅうち)には則(すなわ)ち掠(かす)め、圮地(ひち)には則(すなわ)ち行(い)き、囲地(いち)には則(すなわ)ち謀(はか)り、死地(しち)には則(すなわ)ち戦(たたか)う。

(※)交地には則ち絶つこと無く……交通の便がよいところは敵に分断されやすい。だから部隊内の連絡を密にしておく必要がある。すなわち軍の隊列を切り離さないようにするのである。

【原文】

是故散地則無戰、輕地則無止、爭地則無攻、交地則無絕、衢地則合交、重地則掠、圮地則行、圍地則謀、死地則戰、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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