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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第4回

7話~9話

2018.01.18更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

7 戦争をする前に冷静に計算すれば勝敗は予測できる

【現代語訳】

戦争をする前に、宗廟(そうびょう)で、味方と敵の戦力を比べて勝つと判定できるのは、冷静に比較計算した結果、勝ち目が多いからである。
戦争する前の冷静な比較計算で勝てないと判定できるのは、計算結果による勝ち目が相手より少ないからである。
戦争は、計算の結果が多い者が勝ち、少ない者が負ける。
ましてや、事前の冷静な計算でまったく勝算が立たない者は話にならない。
私はこのように観察することによって、事前に勝ち負けをはっきりと知るのである。

【読み下し文】

夫(そ)れ未(いま)だ戦(たたか)わずして廟算(びょうさん)(※)して勝(か)つ者(もの)は、算(さん)を得(う)ること多(おお)ければなり。未(いま)だ戦(たたか)わずして廟算(びょうさん)して勝(か)たざる者(もの)は、算(さん)を得(う)ること少(すく)なければなり。算(さん)多(おお)きは勝(か)ち、算(さん)少(すく)なきは勝(か)たず。而(しか)るを況(いわ)んや算(さん)なきに於(おい)てをや。吾(わ)れ此(こ)れを以(もっ)てこれを観(み)るに、勝負(しょうぶ)見(あら)わる。

(※)廟算……「廟」とは先祖を祭る御霊屋(おたまや)のことで、ここで戦争などの重要な政治決定も行われた。その廟で先の五つの基本事項と七つの具体的な指標によって、味方の力を計算すること。なお、少々意訳的にはなるものの、経営学者の伊丹敬之氏は、「なぜ、廟での算か」について、「歴史的に恥じない算をせよ」と解される。先祖に対しても、そして後世の子孫たちに対しても恥じない算を徹底的に突き詰めること、それが廟算が要求することであるという(『孫子に経営を読む』日本経済新聞出版社)。なるほど、それほど戦争とは重要なことであるという孫子のいいたいこととよく合致していると思う。

【原文】

夫未戰而廟算勝者、得算多也、未戰而廟算不勝者、得算少也、多算勝、少算不勝、而況於無算乎、吾以此觀之、勝負見矣、

第二章 作戦(※)篇

(※)作戦……孫子の「作戦」の定義は、日本で一般に使われる作戦の定義より広い。日本では、軍隊の編成、運用の戦略、戦術の面のみに用いられることが多い。これに対し孫子ではもっと大きく、国の経済面から入り、さらに具体的な軍隊のことを検討している。

8 戦争は費用がかかることをよく知る

【現代語訳】

孫子は言った。およそ戦争の原則は、戦車千台、輜重車(しちょうしゃ)(物資を運ぶ車)千台、武装した兵士十万を動かし、さらに千里の先まで食糧を送らなくてはならない場合、国の内外の経費、外交使節応待の費用、武器を補修するためのにかわやうるしなどの材料、戦車や甲冑(かっちゅう)の供給、補充で一日に千金もの大金が必要となる。
こうしてはじめて十万の軍隊が動かせるのである

【読み下し文】

孫子(そんし)曰(いわ)く、凡(およ)そ用兵(ようへい)の法(ほう)は、馳車(ちしゃ)(※)千駟(せんし)、革車(かくしゃ)(※)千乗(せんじょう)、帯甲(たいこう)(※)十万(じゅうまん)、千里(せんり)に糧(りょう)を饋(おく)れば、則(すなわ)ち内外(ないがい)の費(ひ)、賓客(ひんかく)の用(よう)、膠漆(こうしつ)の材(ざい)、車甲(しゃこう)の奉(ほう)、日(ひ)に千金(せんきん)を費(ついや)して、然(しか)る後(のち)に十万(じゅうまん)の師(し)挙(あ)がる。

  • (※)馳車……四頭だての戦車。孫子の時代はこの戦車を中心にして、その周りに歩兵がつく形で軍を編成して戦った。一戦車の乗員は三名が一般的とされる。
  • (※)革車……輜重用の大型の戦車。皮革で装甲したとされる。
  • (※)帯甲……甲(よろい)をまとった歩兵。

【原文】

孫子曰、凢用兵之法、馳車千駟、革車千乘、帶甲十萬、千里饋糧、則內外之費、賓客之用、膠漆之材、車甲之奉、日費千金、然後十萬之師擧矣、

9 戦争は長びかせてはいけない

【現代語訳】

戦争はたとえ勝つにしても、長びくようであってはいけない。
なぜなら、長びくと軍が疲弊し、兵士の鋭気がなくなっていくことになるからである。
また、敵の城を攻めることになれば、戦力も尽きてしまい、長期間軍隊を戦地に留めることになれば、国の経済が困窮(こんきゅう)してしまう。
軍が疲弊し、兵士の鋭気もなくなり、国の財政も悪化してしまうと、他の国の諸侯たちがその弱みにつけ込んで兵を起こし、攻め込んでくることも考えられる。
そうなると、いくら知恵者がいようとも、うまく乗り切っていくことはできない。

【読み下し文】

其(そ)の戦(たたかい)を用(もち)うるや、勝(か)つも久(ひさ)しければ則(すなわ)ち兵(へい)を鈍(にぶ)らせ(※)鋭(えい)を挫(くじ)き、城(しろ)を攻(せ)むれば則(すなわ)ち力(ちから)屈(つ)き(※)、久(ひさ)しく師(し)を暴(さら)さば則(すなわ)ち国用(こくよう)足(た)らず(※)。夫(そ)れ兵(へい)を鈍(にぶ)らせ鋭(えい)を挫(くじ)き、力(ちから)を屈(つ)くし貨(か)を殫(つ)くさば、則(すなわ)ち諸侯(しょうこう)其(そ)の弊(へい)に乗(じょう)じて起(お)こる。智者(ちしゃ)ありと雖(いえど)も、其(そ)の後(のち)を善(よ)くすること能(あた)わず。

  • (※)鈍らせ……疲れさせる。つまずき倒れさせる。
  • (※)屈き……使い果たす。
  • (※)国用足らず……国の物資が不足する。経済が困窮する。

【原文】

其用戰也、勝久則鈍兵挫銳、攻城則力屈、久暴師則國用不足、夫鈍兵挫銳、屈力殫貨、則諸侯乘其弊而起、雖有智者、不能善其後矣、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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