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よみものどっとこむ

孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第7回

16話~18話

2018.01.23更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

16 戦わないで勝つのが理想

【現代語訳】

こういうわけだから、百戦して百勝するというのは最高の勝ち方とはいえない。戦わないで敵軍を屈服させるのが最高の勝ち方なのである。

【読み下し文】

是(こ)の故(ゆえ)に百戦(ひゃくせん)百勝(ひゃくしょう)は善(ぜん)の善(ぜん)(※)なる者(もの)に非(あら)ざるなり。戦(たたか)わずして人(ひと)の兵(へい)を屈(くっ)するは善(ぜん)の善(ぜん)なる者(もの)なり。

(※)善の善……最高の善。ここでは「最高の勝ち方」を指す。前に述べたように、孫子は作戦とは国の力や経済力を含めて考えるものとしている。いわゆる戦闘行為でただ勝てばよしとする考え方は持っていない。敵国の意図を破り、自国を守り抜くための策を立て、最小限の労力で戦争に勝つことを重視している。この立場から国力、兵力を充実させて、自国民や自国経済、自国軍隊を傷つけることなく勝つことを最善としたのである。

【原文】

是故百戰百勝、非善之善者也、不戰而屈人之兵、善之善者也、

17 陰謀を陰謀のうちに破るのが最上の方法

【現代語訳】

最上の戦争での勝ち方は、敵の陰謀を陰謀のうちに破ることである。
その次のよい勝ち方は、外交戦略において敵を破ることである。
さらにその次は、敵の軍隊を破ることである。
最もまずいのは、敵の城を攻めることである。城を攻めるのは他に手段がなく、やむをえない場合に限るべきである。
城を攻めるための櫓(おおだて)や装甲の四輪車を備え、他の攻め道具を準備するには三ヵ月かかり、攻撃用の陣地をつくるのにも三ヵ月かかってしまう。
将軍が準備をしている間にいらいらして、その怒りを抑えられなくなり、一気に兵に城の壁をよじのぼらせて攻撃をさせると、兵士の三分の一が戦死して、それでも城が落ちないということにもなる。
こういうことが城攻めの危険なところである。

【読み下し文】

故(ゆえ)に上兵(じょうへい)は謀(ぼう)(※)を伐(う)つ。其(そ)の次(つぎ)は交(こう)(※)を伐(う)つ。其(そ)の次(つぎ)は兵(へい)を伐(う)つ。其(そ)の下(げ)は城(しろ)を攻(せ)む。城(しろ)を攻(せ)むるの法(ほう)は已(や)むを得(え)ざるが為(ため)なり。櫓(ろ)、轒轀(ふんおん)(※)を修(おさ)め、器械(きかい)(※)を具(そな)うること、三月(さんげつ)にして後(のち)に成(な)り、闉(いん)(※)を距(きず)くことまた三月(さんげつ)にして後(のち)に已(や)む。将(しょう)、其(そ)の忿(いきどお)りに勝(た)えずしてこれに蟻附(ぎふ)(※)すれば、士(し)を殺(ころ)すこと三分(さんぶん)の一(いち)にして、而(しか)も城(しろ)の抜(ぬ)けざるは、此(こ)れ攻(こう)の災(わざわ)いなり。

  • (※)謀……陰謀。謀りごと。敵の意図。
  • (※)交……外交。同盟関係。
  • (※)轒轀……城攻めで使う四輪車。中に人が入って押し進める革張りの車。
  • (※)器械……城を攻めるための各種の道具。
  • (※)闉……敵城を攻めるために築く土塁。高台地。
  • (※)蟻附……一気に兵が壁をよじのぼること。まるで蟻がはいのぼっているかのようで、こうした表現が使われた。

【原文】

故上兵伐謀、其次伐交、其次伐兵、其下攻城、攻城之法、爲不得已、修櫓轒轀、具器械、三⺼而後成、距闉又三⺼而後已、將不勝其忿、而蟻附之、殺士三分之一、而城不拔者、此攻之災也、

18 戦争は知恵と謀略で行うべきである

【現代語訳】

うまく戦争を行う者は、敵の軍隊を屈服させるのにも、敵軍と戦うことなしに行い(武力に訴えることなく成しとげ)、敵の城を落とすとしても、城を攻めることなくそれを行い、敵国を破るにおいても、長く戦うことなしにそれを行うのである。
必ず敵を傷つけることなしに完全な形で手に入れるようにして、天下を争うのである。だから自国の軍も傷つけることなく、完全な利益が得られるようになるのだ。
これが謀攻、すなわち知恵と謀略(知謀)でうまく敵を攻める戦い方の原則である。

【読み下し文】

故(ゆえ)に善(よ)く兵(へい)を用(もち)うる者(もの)は、人(ひと)の兵(へい)を屈(くっ)するも戦(たたか)うに非(あら)ざるなり、人(ひと)の城(しろ)を抜(ぬ)くも攻(せ)むるに非(あら)ざるなり、人(ひと)の国(くに)を毀(やぶ)るも久(ひさ)しきに非(あら)ざるなり。必(かなら)ず全(まった)きを以(もっ)て天下(てんか)に争(あらそ)う。故(ゆえ)に兵(へい)頓(やぶ)れずして、利(り)全(まった)くすべし。此(これ)謀攻(ぼうこう)(※)の法(ほう)なり。

(※)謀攻……力わざだけに頼らず、知恵と謀略(知謀)を使って敵を攻めること。自国や自国民を傷つけずに勝利することが最高であると考えた孫子は、これを重要視している。また、これは敵国や敵国民を傷つけることなく勝つのが望ましいということにもつながる。

【原文】

故善用兵者、屈人之兵、而非戰也、拔人之城、而非攻也、毀人之國、而非久也、必以全爭於天下、故兵不頓、而利可全、此謀攻之法也、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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