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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第8回

19話~21話

2018.01.24更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

19 味方と敵の兵力を考えて戦う

【現代語訳】

そういうわけであるから、戦争における戦い方の原則は、味方の兵力が敵の十倍であれば敵を包囲し、五倍であれば敵を攻撃し、二倍であれば敵を分裂させて戦い、等しければ敵とうまく戦い、味方の兵力が敵より少なければうまく逃れるようにし、すべての面で力が及ばなければ敵との戦いを避けるようにする、ということになる。だから、小さい兵力なのに無理に敵と戦ってしまえば、最後は大きな兵力の敵の捕虜となるだけなのである(敵に一方的にやられてしまう)。

【読み下し文】

故(ゆえ)に用兵(ようへい)の法(ほう)は、十(じゅう)なれば則(すなわ)ちこれを囲(かこ)み、五(ご)なれば則(すなわ)ちこれを攻(せ)め、倍(ばい)なれば則(すなわ)ちこれを分(わ)かち、敵(てき)すれば則(すなわ)ち能(よ)くこれと戦(たたか)い、少(すく)なければ則(すなわ)ち能(よ)くこれを逃(のが)れ、若(し)かざれば則(すなわ)ち能(よ)くこれを避(さ)く。故(ゆえ)に小敵(しょうてき)の堅(けん)(※)は、大敵(たいてき)の擒(とりこ)なり。

(※)小敵の堅……「堅」はあくまでも強気に戦うこと。ここでは小さい兵力にもかかわらず大敵に挑んでいくことをいう。

【原文】

故用兵之法、十則圍之、五則攻之、倍則分之、敵則能戰之、少則能迯之、不若則能避之、故小敵之堅、大敵之擒也、

20 君主と補佐役たる将軍は密接な関係でなければいけない

【現代語訳】

そもそも将軍というのは、国の補佐役である。その補佐役たる将軍と君主が密接でよい関係にあれば、その国は必ず強くなり、補佐役たる将軍と君主との間にすき間ができ、よい関係でなくなると国は必ず弱くなる。

【読み下し文】

夫(そ)れ将(しょう)たる者(もの)は、国(くに)の輔(ほ)(※)なり。輔(ほ)、周(しゅう)(※)なれば則(すなわ)ち国(くに)必(かなら)ず強(つよ)く、輔(ほ)、隙(げき)あれば則(すなわ)ち国(くに)必(かなら)ず弱(よわ)し。

  • (※)国の輔……国の補佐役。ここで孫子が「君の輔」でなく、「国の輔」としていることに、意味があるように思える。
  • (※)周……密接であること。すき間がなく、よい関係であること。この反対が「隙」である。

【原文】

夫將者國之輔也、輔周則國必强、輔隙則國必弱、

21 君主はみだりに軍に介入してはいけない

【現代語訳】

君主によって軍に問題が起こってしまう心配には三つのことがある。
第一は、軍隊が進むべきでないことを知らないのに進めと命令し、軍隊が退却してはいけないことを知らないのに退却せよと命令してしまうことである(作戦への介入)。これを縻軍(びぐん)といい、軍隊の行動を束縛することを指す。
第二は、軍隊の事情を知らないのに、将軍と同じように軍政に介入すると、兵士はどちらの命令にしたがえばよいか迷ってしまい、軍隊がまとまりをなくしてしまうことである(軍政への介入)。
第三は、軍隊の臨機応変の処置がわからないのに、軍隊の具体的な指揮まで将軍と一緒にしてしまうと、兵士はどうしてよいか疑問を持ってしまうようになることである(指揮権への介入)。
軍隊が迷い、かつ疑うようなことになれば、外国の諸侯が兵を挙げて攻めてくることにもなる。これを軍隊を混乱させて自ら勝利を「引き去る」(勝利を失う)という。

【読み下し文】

故(ゆえ)に君(きみ)の軍(ぐん)に患(うれ)うる所以(ゆえん)の者(もの)には三(さん)あり。軍(ぐん)の以(もっ)て進(すす)むべからざるを知(し)らずして、これに進(すす)めと謂(い)い、軍(ぐん)の以(もっ)て退(しりぞ)くべからざるを知(し)らずして、これに退(しりぞ)けと謂(い)う。是(これ)を縻(び)(※)軍(ぐん)と謂(い)う。三軍(さんぐん)(※)の事(こと)を知(し)らずして、三軍(さんぐん)の政(せい)を同(おな)じうすれば、則(すなわ)ち軍士(ぐんし)惑(まど)う。三軍(さんぐん)の権(けん)を知(し)らずして、三軍(さんぐん)の任(にん)を同(おな)じうすれば、則(すなわ)ち軍士(ぐんし)疑(うたが)う。三軍(さんぐん)既(すで)に惑(まど)い且(か)つ疑(うたが)うときは、則(すなわ)ち諸侯(しょこう)の難(なん)至(いた)る。是(こ)れを軍(ぐん)を乱(みだ)して勝(かち)を引(ひ)くと謂(い)う。

  • (※)「縻」……「きずな」や「つなぐ」という意味である。つまり、「軍が君主に拘束されて不自由になること」を意味する。
  • (※)三軍……古代において天子は六軍、諸侯は三軍を持つとされた。すなわち三軍とは、三万七千五百人の兵力を指す(一軍は一万二千五百人)。ここでは、三軍は軍隊全体のことを意味している。

【原文】

故君之所以患於軍者三、不知軍之不可以進、而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退、是謂縻軍、不知三軍之事、而同三軍之政者、則軍士惑矣、不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍旣惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。著書に『超訳孫子の兵法』、『吉田松陰の名言100』、『武士道の名言100』、『真田幸村の凛とした生き方』(以上、アイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術』(誠文堂新光社)などがある。

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