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孫子コンプリート 全文完全対照版 野中根太郎 訳

第9回

22話~24話

2018.01.25更新

読了時間

【 この連載は… 】 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、孫子の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。

22 勝利を知るための五つの原則

【現代語訳】

勝利を知るためには五つの原則がある。
第一に、戦うべきか戦うべきでないかを正しく判断できる者は勝つ。
第二に、兵力が大きい場合と小さい場合の使い分けができる者は勝つ。
第三に、上の者と下の者が心を同じくしていれば勝つ。
第四に、こちらはよく先のことを考え、しっかりと戦いに備えておいて、よく考えもせずに、隙を見せるようになって油断している敵と戦えば勝つ。
第五に、将軍が有能で、君主がそれに干渉しなければ勝つ。
これら五つが勝利を知る原則である。

【読み下し文】

故(ゆえ)に(※)勝(かち)を知(し)るに五(ご)あり。戦(たたか)うべきと戦(たたか)うべからざるとを知(し)る者(もの)は勝(か)つ。衆寡(しゅうか)の用(よう)を識(し)る者(もの)は勝(か)つ。上下(じょうげ)欲(よく)を同(おな)じうする者(もの)は勝(か)つ。虞(ぐ)(※)を以(もっ)て不虞(ふぐ)を待(ま)つ者(もの)は勝(か)つ。将(しょう)の能(のう)にして君(きみ)の御(ぎょ)(※)せざる者(もの)は勝(か)つ。此(こ)の五者(ごしゃ)は勝(かち)を知(し)るの道(みち)なり。

  • (※)故に……第一章・計篇2話を参照。ここでも「故に」は意味がなく、独立した文章だと解する。
  • (※)虞……事前に準備すること。はかっておくこと。
  • (※)御……手綱をとってうまく馬車を制御すること。しばり干渉すること。

【原文】

故知勝有五、知可以戰、與不可以戰者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝、此五者知勝之衜也、

23 敵を知り己を知れば必ず勝つ

【現代語訳】

したがって次のことがいえる。
敵のことを知り自分のことを知るならば、百回戦っても危険なこと(負けること)はない。
敵のことは知らないが自分のことを知るならば、勝ったり負けたりする。
敵のことを知らず自分のことも知らなければ、戦うごとに必ず危険に陥る(負ける可能性が高い)

【読み下し文】

故(ゆえ)に曰(いわ)く(※)、彼(かれ)を知(し)り己(おのれ)を知(し)れば、百戦(ひゃくせん)して殆(あやう)(※)からず。彼(かれ)を知(し)らずして己(おのれ)を知(し)れば、一勝一負(いっしょういっぷ)(※)す。彼(かれ)を知(し)らず己(おのれ)を知(し)らざれば、戦(たたか)う毎(ごと)に必(かなら)ず殆(あやう)し。

  • (※)故に曰く……ここでの「故に」は「重要なもの」と解される。ここでの文章は、前項の「五つの勝利の原則」を前提にしていることが重要である。孫子で一番有名な箇所だが、前項の「勝利を知るための五つ原則」と一緒に理解しておくべきであろう。
  • (※)殆……危険に陥ること。わかりやすくいうと負けること。
  • (※)一勝一負……一回勝ち、一回負けること。「一勝一負」は、勝ったり負けたりすることで、必ずしも厳密に勝率が五割ということではない。ここで孫子がいいたいのは、自分を知っていても敵を知らなければ勝負は五分五分で、あやふやなものとなり、将軍の心得としてあってはならないことというのである。

【原文】

故曰、知彼知己者、百戰不殆、不知彼而知己、一勝一負、不知彼不知己、每戰必殆、

第四章 形篇

24 勝利が予測できたとしても実現するのは簡単ではない(まず守りを固めよ)

【現代語訳】

孫子は言った。昔の戦争がうまかった者は、まず味方の守りを固めて敵が勝てないような態勢をつくり(不敗の態勢をつくり)、その上で敵が弱いところを見せて確実に勝てるときを待った。
敵が勝てないようにしっかりとした守りの態勢をつくるのは、自分たちで行えることだが、敵が弱いところを見せて確実に勝てるようになるかどうかは敵次第である。
したがってうまく戦争を行う者においても、敵が勝てないような守りの態勢をつくることはできるが、敵が弱いところを見せて、味方が確実に勝てるような状況をつくり出せるものではない。
そうであるから、「勝利することを知ることはできるが、それをすぐに実現することはできない」といわれるのである。

【読み下し文】

孫子(そんし)曰(いわ)く、昔(むかし)の善(よ)く戦(たたか)う者(もの)は、先(ま)ず勝(か)つべからざるを為(な)して、以(もっ)て敵(てき)の勝(か)つべきを待(ま)つ。勝(か)つべからざるは己(おのれ)に在(あ)るも、勝(か)つべきは敵(てき)に在(あ)り。故(ゆえ)に善(よ)く戦(たたか)う者(もの)は、能(よ)く勝(か)つべからざるを為(な)すも、敵(てき)をして勝(か)つべからしむること能(あた)わず(※)。故(ゆえ)に曰(いわ)く、勝(かち)は知(し)るべくして、為(な)すべからず、と。

(※)敵をして勝つべからしむること能わず……敵のことをこちらの期待するように決めてかかってはいけない、という孫子の冷静で合理的な思考がここにもよく出ている。戦争は安易にすべきではないという考えであるが、とはいえ、いわゆる「非武装中立」のようないわゆる〝お花畑思考〟は孫子の採るところではない。なお第八章・九変篇55話でも「敵がやって来ないことを頼みとするのではなく」と述べている。

【原文】

孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵之可勝、故曰、勝可知、而不可爲、


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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術-相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(共に誠文堂新光社)などがある。

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