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胎内記憶でわかった こどももママも幸せになる子育て 産婦人科医 池川明

第22回

病気や障がいの意味

2017.12.04更新

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人間の神秘「胎内記憶」から子育てを考える。胎内記憶研究の第一人者の医師がたどり着いた境地とは? 親の論理ではなく「子どもの本音」に耳を傾けた、子どもの「才能=生きる力」を強くする胎教法と育児法を紹介。
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 この章は、切ない話が多くなります。テーマは「何のために生まれてきたか」ですが、すべてが順調にいっていて、幸せいっぱいの中からは、それがなかなか見えてきません。人は、とても苦しいとき、悲しいとき、つらいときに、「自分は一体、何のために生まれてきたのだろう?」と考えるものです。苦しい、悲しい、つらいも、ちょっと視点を変えると、そこから、人生のとても深い部分が見えてくるのです。ネガティブなことはない方がいいと思ってしまいますが、ネガがあるからこそ、人は一歩二歩と、より深いところへ進んでいけるのです。

 子どもが病気になったら。それもとても治りにくい難病のひとつだったとしたら、親としてはつらいですよね。よくテレビドラマなどで「代われるものなら代わってあげたい」と、家族が泣きながら言っているシーンを見ることがありますが、その気持ちは痛いほどわかります。

 だけど、病気になることを単に不幸だと思ってしまうと、赤ちゃんとのコミュニケーションはそこで途絶えてしまいます。ここでは、病気になることを選んできた赤ちゃんもいるということをお話ししたいと思います。

 何人もの子が、

「雲の上では、病気のある子になるか元気な子になるか、自分で選んで生まれてくるんだよ」

 と言います。

 私たちは疑問に感じます。何のために病気のある子になることを選んで生まれてくるのか。

 ある先天性疾患のある子は、こんなことを言いました。

「ずっとずっと幸せになるためだよ」

 えっ! と思いますよね。病気があって生まれてくることとずっと幸せになることと、まったく正反対のことを言っているようにしか思えません。

 お母さんは、この子が病気があって生まれて、とても悲しみました。とても悩みました。いつも、どうして、どうしてと、天を恨むほどの気持ちだったと思います。

 しかし、その子には、お母さんのお腹に宿る前の記憶があって、一生懸命にお母さんに、自分は病気を選んで生まれてきたということを話しました。

 最初は理解できなかったでしょうが、何度も、その子の話を聞いているうち、お母さんは、この子は、自分たちが思っているような不幸な子ではないと、感じ取ります。

 そして、こんなことに気づいたのです。

「あの子が病気があって生まれたおかげで、たくさんの出会いに恵まれ、人のやさしさを知りました。生きていることのありがたさも感じることができました。あらためて振り返ると、あの子があの子で良かった。あの子のおかげで、私たちはずっとずっと幸せになれたと思います」

 この子が元気だったらとか、もっとお金があったらとか、条件付きの幸せというのは、とてももろいものです。一時的な幸せは手に入っても、ずっとずっと幸せにはなりません。

 この子は、自分が病気であっても幸せになれるということをこの世で体験するために生まれてきて、お母さんや家族にも、病気の子どもがいても幸せはあるじゃないかと伝えようとしています。

 そして、お母さんは、病気のある子をもつという体験を通して、「出会いに恵まれ」「人のやさしさを知り」「生きていることのありがたさを感じる」という幸せを手に入れました。

 お母さんが感じた幸せは、盤石の幸せです。ちょっとやそっとのことでは揺らぎません。

 ずっとずっと幸せ。この子の生まれてきた目的は、お母さんが大切なことに気づいたことで達成することができたのです。

 障がいがあって生まれる子も同じです。

 ある子どもが言ったことです。

「ぼくがお母さんのお腹の中に入るとき、すぐ横に列があったんだ。あそこに並ぶ子たちはすごく勇気があるんだ。ぼくにはその勇気はなかった。あの子たちは、障がいがあって生まれることを選んだ子たちなんだ」

 自ら、障がいというハードルを設定することでより成長しようという高い志をもって生まれてくる勇気のある子たちがいるのです。彼らは、自らが障がいを背負うことで、まわりの人たちに、命の意味、社会とはどうあるべきか、本当のやさしさとは何かといったことを伝えに来ているのです。

 私たちは、病気や障がいというと、すぐに「気の毒に」「かわいそうに」と思ってしまいます。病気も障がいも大変なことには間違いありません。少しでも、彼らの大変さを軽くしてあげることは大切です。しかし、同時に、彼らは重大なメッセージを、私たちに伝えるために、あえてハンディを背負って生まれてきた勇敢な人たちだという敬いの気持ちをもって接することも忘れないでいただきたいと思います。特に、お母さんが、そのことを認めてくれるのは、何物にも代えがたい彼らの幸せであり、喜びです。

 じつは、彼らはすごい子たちなのです。

「自分で病気や障がいを選んできたんだって。すごいわね。お母さん、あなたのことを尊敬するわ。誇りに思うわ」

 彼らを抱きしめながら、そう言ってあげてください。

 障がいを選んで生まれてきたある子どもからの、お母さんへのメッセージです。

「産んでくれてありがとう。受け入れてくれてありがとう。産まないって選択もあったのに、お母さんなら産んでくれるって信じていたよ。産んでくれてありがとう。胸を張って生きてね」

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著者

池川 明

1954年東京生まれ。帝京大学医学部大学院修了。医学博士。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、1989年に池川クリニックを開設。胎内記憶・誕生記憶について研究を進める産婦人科医としてマスコミ等に取り上げられることが多く、講演などでも活躍中。母と子の立場に立った医療を目指している。著書に『おぼえているよ。ママのおなかにいたときのこと』『ママのおなかをえらんできたよ。』(以上、二見書房)『笑うお産』(KADOKAWA)など多数。

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