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第27回

捻挫ぐせを直そう

2019.08.05更新

読了時間

【 この連載は… 】 テレビ、雑誌などでお馴染みの「姿勢」の第一人者が、疲れない体をつくる知識とメソッドを徹底紹介。医学的理論に基づいた「全身のつながり」を意識した姿勢改善エクササイズで、腰痛や肩こり、慢性疲労などの不調を劇的に改善します。
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 今回は足首の捻挫について説明します。外側の靱帯は後距腓靱帯・踵腓靱帯・前距腓靱帯が捻挫しやすく、内側の靱帯は、三角形の形に近い三角靱帯(後脛距靱帯・脛踵靱帯・脛舟靱帯・前脛距靱帯)がありますが、捻挫しにくい構造になっています。
 特に、底屈・内転・回外によって前距腓靱帯と踵腓靱帯が捻挫しやすくなります。
 また、短腓骨筋の付着部の第5中足骨底を剥離骨折することもありますので、要注意です。

A:右足関節の解剖学的構造・外側像 B:右足関節の解剖学的構造・内側像

 捻挫は程度によって1度、2度、3度の損傷に分けられます。

1度:靱帯の微細損傷や軽度の圧痛があるが、いわゆるちょっとひねった程度であるため、当日もしくは2~3日で競技復帰が可能な状態。歩行や軽い走行も可能。

2度:靱帯の部分断裂で圧痛、腫脹が強く、歩けるが走れない。競技復帰まで2~3週間かかる。装具やテーピング、副木固定が必要です。念のために医療機関でチェックを受けてください。

3度:完全な靱帯断裂で圧痛、腫脹、熱感、皮下出血が強く、自分で歩くのがやっとです。競技復帰まで1~2ヵ月を要します。医療機関での治療(ギプスや装具による強固な固定、もしくは断裂靱帯の縫合手術)が必要です。

 1度は、非常に軽い捻挫ですが、3度になると手術適応になりますので、重い捻挫です。
 捻挫直後の急性期では、受傷部位を確認し、RICES処置にのっとって安静(Rest)にします。その状態でアイシング(Icing)して、スプリント(副木)、包帯、テーピングなどで固定(Compression)を行い、仰向けに寝た状態から捻挫側を挙上(Elevation)して、その姿勢を安定(Stabilization)させて安静を保ちます。
 歩行に際しては、足関節に強い疼痛を感じるようならば、整形外科(できればスポーツドクター)を受診しましょう。その場合は両松葉杖を使って二日間は、足に体重がかからないようにするのが大切です。
 受傷初期は足関節の運動制限をきたすため、アキレス腱の筋膜リリースまたはストレッチングが大切です。底背屈運動を可能にして内反運動の制限が要求されるため、競技復帰に際しては、テーピングや足関節装具による予防法が用いられています。

 アキレス腱の筋膜リリースは、両手でテーブルや椅子の背もたれにつかまり、片足を後ろに引きます。前の膝を後ろに引いて伸ばしながら体重を後ろに移動して、後ろの足底はぴったり床に着けたままで膝をゆっくり曲げていき20秒以上リリースします。続いて前の膝を曲げながら体重を前に移動して、後ろの足底はぴったり床に着けたままで膝をゆっくり伸ばしていき20秒以上リリースします。左右をそれぞれ3回繰り返してください。慣れてきたら時間も長くしてください。左右で伸びにくい側をじっくりと時間をかけるようにしてください。



 なお、なぜ左側を捻挫してしまったのか、ということを考えたことはありますか?
 普段、椅子に座っているときに、足を組みやすい側はどちらですか?
 もしも、左側の足を上に組むことが習慣化されている方は、立ったときに左の骨盤が右よりも高く、股関節の外旋も右より大きく、左膝は内反傾向で、足首は内側が上がっていて、捻挫しやすくなっています。



 こういった姿勢の方では、骨盤周囲の筋力のインバランスを修正することも重要となります。左の中殿筋は骨盤が高くなることで、長くなって筋力が低下し、腰の横側の腰方形筋は短くなり筋力は強くなっています。右の中殿筋は強くなり、腰方形筋は弱くなっており、左右がちょうど反対になっています。
 こうなると、左の腰方形筋をリリースして、左の中殿筋を鍛えることが大切になります。腰方形筋のリリースは、左の骨盤が挙上しないように右のお尻の後ろにウェッジやタオルを入れておきます。そこから身体を前に倒してから、右に倒して、右に身体を回すと、左の腰方形筋がリリースされます。30秒以上のリリースを3回行ってください。



 次に、左のお尻の横にある中殿筋を鍛えるには、右を下向きにした横向きで寝ます。右のウエストの下には、タオルを敷いて腰が右側屈するようにしておきます。上側の膝は伸展位のまま、股関節を中間位から伸展方向へと外転させます。大腿筋膜張筋による股関節屈曲・内旋の代償を避けるために、股関節に外旋も加えてください。左足を天井側に挙げていくときに、骨盤が早くに動いてくるのは異常なので、そうならないように骨盤を左手で触ってモニターしておくといいでしょう。外転位で最低5秒間は止めてください。10回から開始し、徐々に回数を増やしてください。5秒間保持の間に、息は止めないようにしてください(A)。
 次の段階では、右側の腰方形筋を収縮させることで、左側の腰方形筋に抑制をかけます。左側の腰方形筋は延長位で筋力低下をしているので、この筋の強化にもつながります。下側にある右側の骨盤をベッドに沿って引き上げるようにし、ウエストラインがベッドから浮き上がるように意識します。このとき胸郭も持ち上がってしまうのは間違いです。腰部のウエストラインのところだけを意識してください。上側の膝は伸展位のまま股関節を中間位から伸展方向へと外転させます(B)。このとき、上側にある骨盤が挙上しないように骨盤の代償運動をモニターしていてください。大腿筋膜張筋による股関節屈曲・内旋の代償を避けるために、股関節に外旋も加えてください。外転位で最低5秒間は止めてください。10回から開始し、徐々に回数を増やしてください。5秒間保持の間に、息は止めないようにしてください。








 さらに、足部から骨盤への運動連鎖エクササイズも追加します。

・運動連鎖エクササイズ1

 このアライメントを修正するために、まずは立位にて、左片足立ちをとります。そこから、左足部を回内するのに連鎖して左膝を内側に移動させ、さらに左股関節を外転させながら右骨盤を挙上させます。この肢位で最低5秒間は止めてください。10回から開始し、徐々に回数を増やしてください。5秒間保持の間に、息は止めないようにしてください。


・運動連鎖エクササイズ2

 次の段階では、股関節の外転に加えて外旋も強調します。まずは左片足立ちにて、体幹と骨盤を左に回旋させておきます。そこから、左足部を回内するのに連鎖して、体幹と骨盤を同時に右回旋させながら左膝も左側に開いていきます。さらに左下肢後外側からの筋・筋膜螺旋連結を用いて左股関節を外転・外旋させながら右骨盤を挙上させます。この肢位で最低5秒間は止めてください。10回から開始し、徐々に回数を増やしてください。5秒間保持の間に、息は止めないようにしてください。

 



 このように骨盤周囲の筋力を整えることで、足関節への負担を減らすことが重要になります。その上で、アキレス腱の筋膜リリースやストレッチングを実施し、さらに前脛骨筋や腓骨筋を鍛えるエクササイズ、足底の筋を鍛えるタオルギャザー、ストレッチボードを用いたアキレス腱の伸張と足趾の背屈などを追加していきます。



 要は、足関節捻挫という処方でも、そこだけの治療では、再発を防げないことが多くあり、骨盤周囲から評価して治療することが大切になります。
 次回は、意外と多い扁平足の治し方について解説します。

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著者

竹井 仁

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科教授。医学博士、理学療法士、OMT。教育機関で学生教育を実践するかたわら、病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。各種講習会も全国で展開。専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」「林修の今でしょ!講座」など多数のメディアに出演。著書多数。 

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