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第43回

124〜126話

2020.02.27更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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124 激しい雨や暴風も一時のものにすぎないが、人の心の変化もこのようにありたい


【現代語訳】
よく晴れ渡った青空も、たちまち変わって激しく雷鳴がとどろくことがある。激しい風や雨も急にやんで、夜空を月がきれいに照らすこともある。このように大自然は変化してやまない。滞りは一時である。大空も常はなく、いつも変化している。塞がることがあって、雨風もあるが、それはしばしのことである。人の心もこのようにありたいものである。

【読み下し文】
霽日(せいじつ)(※)青天(せいてん)も、倏(たちま)ち変(へん)じて迅雷(じんらい)(※)震電(しんでん)と為(な)り、疾風怒雨(しっぷうどう)も、倏(たちま)ち転(てん)じて朗月晴空(ろうげつせいくう)と為(な)る。気機(きき)(※)何(なん)の常(つね)あらん(※)、一毫(いちごう)の凝滞(ぎょうたい)なり。太虚(たいきょ)(※)何(なん)の常(つね)あらん。一毫(いちごう)の障塞(しょうそく)なり。人心(じんしん)の体(たい)も、亦(ま)た当(まさ)に是(かく)の如(ごと)くなるべし。

(※)霽日……雨がやんでからりと晴れた日。
(※)迅雷……激しい雷鳴。
(※)気機……自然の気象。自然のはたらき。
(※)何の常あらん……変化してやまない。何の常があろうか、ない。なお、『老子』の虛無第二十三は、「天地(てんち)すら尚(な)お久(ひさ)しきこと能(あた)わず、而(しか)るを況(いわ)んや人(ひと)に於(お)いてをや」とし、「道」とともに一体化して生きるこことを勧める。
(※)太虚……大空。

【原文】
霽日靑天、倏變爲迅雷震電、疾風怒雨、倏轉爲朗月晴空。氣機何常、一毫凝滯。 太虚何常、一毫障塞。人心之體、亦當如是。

 

125 自分に打ち勝つための自覚する力と意志の力を持つ


【現代語訳】
自分に勝ち私欲を抑える術(すべ)は、早くそれを知って自覚しなくては難しいといわれる。また、その術を知って自覚しても意志の力が弱くては、やり遂げられないともいわれる。つまり、その術を知ることは、私欲という魔物を照らし出す明玉であり、やり遂げる意志力は、魔物を斬り捨てるひと振りの名剣のようなものである。この二つはなくてはならないものなのである。

【読み下し文】
私(わたくし)に勝(か)ち欲(よく)を制(せい)する(※)の功(こう)(※)は、識(し)ること早(はや)からざれば力(ちから)易(やす)からずと曰(い)う者(もの)有(あ)り。識(し)り得(え)て破(やぶ)るも忍(しの)び過(す)ごされずと曰(い)う者(もの)有(あ)り。蓋(けだ)し識(しき)は是(こ)れ一顆(いっか)の照魔(しょうま)の明珠(めいしゅ)(※)にして、力(ちから)は是(こ)れ一把(いっぱ)の斬魔(ざんま)の慧剣(けいけん)(※)なり。両(ふた)つながら少(か)くべからざるなり。

(※)私に勝ち欲を制する……自分に勝ち私欲を抑える。なお、『孟子』は、「心(こころ)を養(やしな)うは寡欲(かよく)より善(よ)きは莫(な)し」(尽心下篇)という。『老子』も、「罪(つみ)は欲(ほっ)すべきより大(だい)なるは莫(な)く。禍(わざわ)いは足(た)るを知(し)らざるより大(だい)は莫(な)く」(儉欲第四十六)としている。アメリカ建国の父といわれるベンジャミン・フランクリンも『自伝』で、吉田松陰も『講孟箚記』で、十代のころから私欲を抑える鍛錬をあれこれ試してきたと述べているが参考になる。私欲を抑える術を身に付けることは、意志の力をつけることにもつながるようだ。
(※)功……術(すべ)、工夫。
(※)一顆の照魔の明珠……私欲という魔物を照らし出す明玉、宝石。
(※)一把の斬魔の彗剣……私欲という魔物を斬り捨てるひと振りの名剣。

【原文】
勝私制欲之功、有曰識不早力不易者。有曰識得破忍不過者。蓋識是一顆照魔的明珠、力是一把斬魔的慧劍。兩不可少也。

 

126 計り知れない力のある人、できる人となる


【現代語訳】
相手が自分をだましていると気づいても、言葉には出さない。相手が自分をばかにしていても、平気な顔をしていて怒りは顔に見せない。これらは難しいことだが、できるようになると、言い尽くせない深みと、計り知れない力のある人(本当にできる人)になれる。

【読み下し文】
人(ひと)の詐(いつわ)りを覚(さと)るも、言(げん)に形(あらわ)さず(※)。人(ひと)の侮(あなど)りを受(う)くるも、色(いろ)に動(うご)かさず(※)。此(こ)の中(なか)に無窮(むきゅう)の意味(いみ)が有(あ)り、亦(ま)た無窮(むきゅう)の受用(じゅよう)(※) 有(あ)り。

(※)形す……言葉に出す。
(※)色に動かさず……平気な顔をしていて、怒りは顔に出さない。
(※)受用……できる。役立つ。

【原文】
覺人之詐、不形於言。受人之侮、不動於色。此中有無窮意味、亦有無窮受用。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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