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第74回

217〜219話

2020.04.13更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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217 口は心の門である。意識は心の足である


【現代語訳】
口は心の門である。だから口をしっかり守っていないと、つまり言葉を慎んでいないと、つい心のなかの機密を漏らすことになる。また意識は、心の足である。だから意識を厳しくしっかりとさせていないと、すぐに間違った道に逸れていってしまうことになる。

【読み下し文】
口(くち)は乃(すなわ)ち心(こころ)の門(もん)なり。口(くち)を守(まも)ること密(みつ)ならざれば、真機(しんき)(※)を洩(も)らし尽(つ)くす。意(い)は乃(すなわ)ち心(こころ)の足(あし)なり。意(い)を防(ふせ)ぐこと厳(げん)ならざれば、邪蹊(じゃけい)(※)を走(はし)り尽(つ)くす。

(※)真機……心のなかの機密。
(※)邪蹊……間違った道。横道。

【原文】
口乃心之門。守口不密、洩盡眞機。意乃心之足。防意不嚴、走盡邪蹊。

 

218 他人の責任追及と自己反省


【現代語訳】
人の責任を追及するときには、過失とともに、同時に過失のない部分、評価すべき部分を指摘しつつやるべきである。そうすれば相手も不平を抱かず、よく納得する。自分を反省するときは、過失がないと思えるなかにも、過失を見出すことに努め、よく自分を省みるようにしたい。そうであれば人間的によく成長できていく。

【読み下し文】
人(ひと)を責(せ)むる者(もの)は、無過(むか)を有過(ゆうか)の中(なか)に原(たず)ぬれば、則(すなわ)ち情(じょう)平(たい)らかなり(※)。己(おのれ)を責(せ)むる者(もの)は、有過(ゆうか)を無過(むか)の内(うち)に求(もと)むれば、則(すなわ)ち徳(とく)進(すす)む(※)。

(※)情平らかなり……不平を抱かず、よく納得する。
(※)徳進む……人間的によく成長できる。徳を身につけていく。本項の解釈については、本書の「反省」、「反求」による人間的成長については『孟子』の次の有名な文がある。「人(ひと)を愛(あい)して親(した)しまれずんば、其(そ)の仁(じん)に反(かえ)れ。人(ひと)を治(おさ)めて治(おさ)まらずんば、其(そ)の智(ち)に反(かえ)れ。人(ひと)を礼(れい)して答(こた)えられずんば、其(そ)の敬(けい)に反(かえ)れ。行(おこの)うて得(え)ざる者(もの)有(あ)れば、皆(みな)諸(これ)を己(おのれ)に反求(はんきゅう)す。其(そ)の身(み)正(ただ)しければ、天下(てんか)之(これ)に帰(き)す」(離婁上篇)。このように反省して原因を自己に求めるということは、儒家の伝統の一つである。著者の洪自誠も儒家であることを自称しているため、この考えが強い。ただ、儒家にとって反省は、他人への忍従を意味しないことに注意したい。自分こそがすべての事象の主体であるという誇りから「反省」が生まれてくるのである。本書の前集80条、146条参照。

【原文】
責人者、原無過於有過之中、則情平。責己者、求有過於無過之內、則德進。

 

219 若者は未来の宝物。心して鍛えるべし


【現代語訳】
子どもは未来の宝物であり、大人になっていく存在である。そのなかでも才能に恵まれた人は、やがて世の指導者となり社会に役立たなくてはならない。しかし、このときに鍛え方が不十分であったなら、陶器や金物をつくるときに火力が不足し、陶鋳にぬかりがあったように、いざ世に出したとき、役立たないものになってしまう。本人もまわりの大人も、心して鍛えていかねばならない。

【読み下し文】
子弟(してい)(※)は大人(たいじん)の胚胎(はいたい)(※)なり。秀才(しゅうさい)(※)は士夫(しふ)の胚胎(はいたい)なり。此(こ)の時(とき)、若(も)し火力(かりょく)到(いた)らず(※)、陶鋳(とうちゅう)(※)純(じゅん)ならざれば、他日(たじつ)、世(よ)を渉(わた)り朝(ちょう)に立(た)ちて、終(つい)に個(こ)の令器(れいき)(※)と成(な)り難(がた)し。

(※)子弟……子ども。青少年。子弟の教育は難しい。『孟子』は「善(ぜん)を責(せ)むれば即(すなわ)ち離(はな)る」ことになるため、君子は我が子を直接教えず、他の教育者に頼むとする(離婁上篇)。昔から我が子の教育は大変なことであったようだ。
(※)胚胎……たまご。未来の宝物の存在。
(※)秀才……才能に恵まれた人。高等文官の登用試験に合格した者。
(※)火力到らず……火力が十分でない。十分に焼きがはいっていない。
(※)陶鋳……粘土をこねて陶器をつくり、鋳型に入れて金物をつくること。
(※)令器……立派な器。良い人材。社会に役立つ人物。

【原文】
子弟者大人之胚胎、秀才者士夫之胚胎。此時、若火力不到、陶鑄不純、他日、涉世立朝、終難成個令器。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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