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第1回

イントロダクション

2024.05.13更新

読了時間

一生、絵だけを描くことに専念したいと考えた著者は、専業で絵を描く画家として、画商さんとの契約も、百貨店での個展も、アートフェアでの展示経験もなく、無所属でさまざまな創作活動を展開しています、本書は、創作者が活動するときに直面する「お金」の問題、接客方法など、今まで語られなかった著者の20年分の手の内を、本文から一部ですが特別公開します!
「目次」はこちら

私は30年間、個展を中心とした活動を続けてきました。これまで133回の個展(2021年3月時点)を重ねることで、通りすがりに展示を見てくれた人や画廊のお客さん、画廊オーナーなど、多くの人々に出会いました。そのたくさんの出会いがきっかけとなって、何作も作品を求めてくださる方、何年もお付き合いを重ねさせていただいている方など、大切なご縁に恵まれています。そして、絵描きとして、ほかに職業をもたない専業の状態で生活をして、毎日24時間、「美」に向き合っています。
しかし世間的には、「美の創作だけで生活していくことは難しい」という雰囲気があります。また、裕福な育ちや有力者とのつながりがある人だけが、絵で生活できると考える人もいます。
しかし、私は一般的な自営業(街の日用品の問屋)の家庭に生まれ、ふつうに育ち、大学でデザインを中心に学び、卒業後は企業でデザインを担当しました。在学中の20歳から土と石で日本画的な絵を描き続け、サラリーマンの間も個展を開いていました。学生時の出会いを実らせ、24歳で結婚し、27歳で一人娘に恵まれました。
「絵を描き続けることのできる生活」を求めていた私は、30歳でサラリーマンの生活を終わりにし、個展活動を加速させ(年に4~8回)、お客さんなどとの出会いにも恵まれました。35歳頃には、安定して絵に専念する生活ができるようになり、43歳のころ、それまであまり交流してこなかった同世代の画家仲間と交流を再開し、個々の活動に対する考えや画廊のこと、よりよい創作をするためのアイデアなどについて情報交換をしたいと思いました。
ところが会って話してみると、ほとんどの人が絵だけで生活をしていないことがわかりました。魅力的な作品をつくり、百貨店で企画展をするなど、華やかな活動をしていると感じていた作家さんたちも、学校の先生を兼業するなど、絵の創作だけに専念していませんでした。私は強いショックを受けると同時に、なぜ彼らが絵に専念していないかということについて、考えるようになりました。
「絵だけで生活することは、よほどの売れっ子作家でない限り無理だ」、と考える人も多くいました。私は絵だけで生活をしていますが、自分とご縁のあった人だけに知られている存在なので「売れっ子作家」ではありません。
そこで私は、今まで工夫してきた個展の展示方法、個展で出会った人に住所を芳名帳に書いてもらうための方法、絵の価格のつけ方などをオープンに話していこうと考えました。画家が手の内を話さず、情報交換しないことは、お互いにとってマイナスだと感じたからです。
京都・東京・名古屋・福岡など各地での個展開催時を中心に、閉廊後の夜、若い作家さんや同年代の作家さんを対象にして「作家活動を継続するためのポイントを話します会」(以下、「話します会」)の活動をはじめました。


福岡での「話します会」のチラシ 会場を提供してくださった「アトリエカフェいえ」さんの制作




福岡での「話します会」のチラシ 会場を提供してくださった「アトリエカフェいえ」さんの制作

その中で、初めから絵で生活することを諦めている人、自分の絵を知人でない他人が求めるはずがないと考えている人に多く出会いました。そして私の個展活動に対する考え方と彼らの間に、大きな溝があることも感じました。
そこで私は、これまでの活動で経験してきたことをあらためて検証し、自分にとっては当たり前で、活動の基盤になっている事柄について、人に伝えることを模索しはじめました。その結果、展示のノウハウのような表面的なこと以前の、画家としての心の持ち方や生き方というような、より根元的なことを「話します会」で話すようになりました。
この本には、その「話します会」で話したことを中心に、「画家がどうすれば制作に専念して絵で生活ができるようになるのか」について、私なりの考えや実行していることを記しました。お客さんとの出会い、ご縁を深めていく方法など、「商い」の根源に近い話もしています。絵画表現や、描き方などについては、それほど記してません。反面、若い作家にとって、特に大切なお金や生活設計に関する情報については、詳しく、素直に記しました。
「話します会」には、絵を描く人のほかに、実業家の人や一般の方々が参加することもあり、興味をもってくださいます。絵を描かない方々にも、一人の画家がどのようにして画業を切り開いてきたかを楽しんでもらえたらうれしいです。

本書は、「天の章 活動の基礎となる心について」「地の章 お金のこと」「人の章 お客さんとのつながりについて」、という構成で話を展開しています。
活動を継続する上で、また「生きる」という営みを考える上で、参考にしていただければ幸いです。

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著者

福井 安紀

画家・絵師。1970年京都府生まれ。サラリーマンを経たのち、30歳から絵だけで生活する道へ進む。土と石の自家製絵具で制作を続け、2013年、42歳で髙砂神社能舞台の鏡板の松を制作する機会をいただく。45歳のときに、江戸時代の絵師にあこがれ、安価に、すばやくふすま絵を描く「ふすま絵プロジェクト」を立ち上げる。各地の住宅、店舗、ホテル、寺院などでふすま絵、壁画、天井画などさまざまな種類の絵を描き続けている。2023年までに個展150回以上、多数のふすま絵制作など画家活動の限界に挑んでいる。

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