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第5回

目標は「自分の特別なお客さん」30人

2024.05.27更新

読了時間

一生、絵だけを描くことに専念したいと考えた著者は、専業で絵を描く画家として、画商さんとの契約も、百貨店での個展も、アートフェアでの展示経験もなく、無所属でさまざまな創作活動を展開しています、本書は、創作者が活動するときに直面する「お金」の問題、接客方法など、今まで語られなかった著者の20年分の手の内を、本文から一部ですが特別公開します!
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IV 目標は「自分の特別なお客さん」30人

絵で生活するために、とても大切なポイントです

1 たった30人

あなたが個展を重ねていけば、たくさんの出会いの中から、絵を求めてくれる人にも出会えるようになります。そしてその中から、別の個展の時にも再び絵を求めてくれる(=リピートしてくれる)人に出会えるようになると思います。
私は、この「2作目以上の絵を求めてくれた人」を、「自分の特別なお客さん」と考えています。
経験では、この「自分の特別なお客さん」が30人ほどになった時、絵で生活できるようになったと感じています。この「自分の特別なお客さん」は、作家自体に価値を見いだしてくれているので、これから展開していく活動を長く支えてくれる可能性が高い方々です。そしてこの方々が、新しいお客さんや新たな展示会場へのつながりを与えてくれました。
「自分の特別なお客さん」が30人というのは、少なく感じられるかもしれませんが、実際30人の状態になると、30人のほかに、潜在的なお客さんを相当数獲得していて、1点だけ求めた方や、本当は作品を求めたいけれどまだ求めていない方、何かを依頼したいと考えている方なども獲得しているはずなのです。30人は、氷山の一角のようなものです。
この状態までくれば、個展はほぼ黒字になり、時々の注文なども含めて、ギリギリかもしれませんが生活できるだけの糧を得て、絵の制作に専念して活動できるようになっていると思います。
今、あなたの作品をリピートして求めてくれる「特別なお客さん」が何人くらいかを数えてみると、どれくらい専念して活動できる状態に近づいているかを感じてもらえると思います。

この30人という人数は、私が平均価格5万円くらいの作品で活動している時の人数です。実際には、作品の単価によってこの30人という人数は前後しますが、目安にしてもらいたいです。 そして、もし何度も個展をしているのにあなたの「特別なお客さん」が増えていない場合、もしかしたら出会いが少ない会場で展示をしているとか、出会った人へ案内ハガキなどが十分に出せていない、など何か根本的な問題がある可能性が高いと考えます。
そして、30人に達した後も、自分のお客さんづくりを続けていくことが大切です。刻々と環境は変化するので、自分のお客さんとの出会いを常に求めて、大切に育ててほしいと思います。

2 メジャーと地下(インディーズ)

*ここでは、メジャーに属さず活動している状態を 「地下(インディーズ)」と表現することとします。

若い作家さんで、制作活動で生活したいと考えている人の中には、メジャーになることが成功への近道と考えている人も多いと思います。
歌手の世界でいうと、メジャーは芸能事務所に所属し、歌手のマネージメントを事務所が行っている状態です。しかし、メジャーで活動する人がすべて十分な収入を得て、生活ができているわけではありません(メジャーCDを数枚出して活動していても、10万円ほどしか月給をもらっていない歌手に会ったことがあります)。
メジャーの世界の下層では、生活ができにくい現実があるようです。さらに、事務所によって活動の内容や範囲に制約を求められていることも多く、活動の不自由さを伴っています。
このようなことからもわかるように、メジャーになったからといって、絵で生活していけると考えるのは、安直です。

地下(インディーズ)の世界に注目してみてください。
地下の世界は、台形になっていて、プリンのカラメルソースのかかっている上部だけは、専業で生活できるエリアになっています。そして、地下の世界の中では、自分の努力だけでポジションを上昇させることができるのです。
これまで記してきたように、自分の純度を高め、工夫をし、活動を重ねてスキルアップしていけば、そこそこ上の位置まで上昇すると思います。そして、出会いのつながりやご縁に恵まれると、カラメルソースの位置にたどりつくはずです。

個人が努力できる範囲だけで、確実にメジャーになれる方法はないと考えています。なぜなら、企業やマネージメントをする人が、その作家の活動をサポートすることによって、もっとたくさんのお金が生まれるに違いないと考えた場合に、初めてメジャーの世界に入ることができるからです。

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著者

福井 安紀

画家・絵師。1970年京都府生まれ。サラリーマンを経たのち、30歳から絵だけで生活する道へ進む。土と石の自家製絵具で制作を続け、2013年、42歳で髙砂神社能舞台の鏡板の松を制作する機会をいただく。45歳のときに、江戸時代の絵師にあこがれ、安価に、すばやくふすま絵を描く「ふすま絵プロジェクト」を立ち上げる。各地の住宅、店舗、ホテル、寺院などでふすま絵、壁画、天井画などさまざまな種類の絵を描き続けている。2023年までに個展150回以上、多数のふすま絵制作など画家活動の限界に挑んでいる。

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