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第7回

メジャーでない絵描きだからできること

2024.06.10更新

読了時間

一生、絵だけを描くことに専念したいと考えた著者は、専業で絵を描く画家として、画商さんとの契約も、百貨店での個展も、アートフェアでの展示経験もなく、無所属でさまざまな創作活動を展開しています、本書は、創作者が活動するときに直面する「お金」の問題、接客方法など、今まで語られなかった著者の20年分の手の内を、本文から一部ですが特別公開します!
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メジャーでない絵描きだからできること

私は基本的に、メジャーでない地下絵描き、インディーズ的絵描きとして、自分の活動を自分でマネージメントして、独自に展開してきました。
画商がついているわけではないので、活動の量や方向性を自分で決めます。その時々の自分の本当に描きたいことに挑んで制作してきました。
また、直接の依頼にも、すぐに対応しています。
この自由度が、メジャーでない活動の最大のメリットだと考えています。私はこの自由度を生かしていろいろな活動をし、いろいろな出会いを得て、より大きく活動を継続してきました。
まとめてみると、
1.自分の描きたい「美」をそのまま鮮度よく追求する(テーマにこだわりがない)
2.観光客の多い京都の路面の画廊で展示をする
3.出会いの多い貸し画廊では、年に2回以上展示をする
4.全国のいろいろな街で展示する
5.自分で名簿を管理して、大切なお客さんには案内や手紙を送る
6.SNS(主にFB)上でも活動して、出会いのチャンスを広げる
7.「ふすま絵プロジェクト」を発案して、お客さんの新しい入口をつくる
8.「話します会」や技術的な講習会などを行い、自分の考えを伝える
メジャーのように大きなプロモーションで知名度を高くすることや、多くのお客さんを対象とすることは難しいです。しかし、小さくても多面的に活動することは、とても大切だと考えています。

私の選択

メジャー画家、メジャーでない画家、どちらの世界でも自分のしたい活動で専念できるのであれば、私はどちらの選択も十分だと考えています。
メジャーでの活動は個人の努力だけで実現するのではなく、その人を支えることで、より大きな仕事ができると考えた人や組織によって、メジャーの世界へ引き上げられます。収入が多くなる可能性もある反面、自由度が低くなるということは先にも記しました。
そのようなことも理解した上で、私はできるならメジャーでない地下の世界でがんばりたいと考えています。
私が描く上で一番大切にしている目標は、「未来の人の文化力を支える小石の一つぶ」になることです。そのためには、たくさんの作品を日本のさまざまな土地に残す必要があると考えています。そして、私は、たくさんのアイデアと技術によって、刻々と変わる自分の考え、想い、この世の社会的な傾向を踏まえた「美」を表現したいのです。
そのような時に、価格の決定権(主に価格を上げない権利)は自分にあってほしいし、私が生きている間は作品を求めてくれる人、依頼してくれる人とは「直接」かかわり続けたいのです。また、明日にでも描いてほしいと依頼してくれれば、時間さえ空いていれば組織的なことを気にせずにすぐ描きに行ける、そのような反応力も大切にしたい。
そうして、たくさんの絵たちを日本各地へ種を蒔くように送り届けることができたら、そのうちのいくつかの作品は、運よく200年の歳月を乗り越え、きっと未来の人に届くと思うのです。その未来がどのように今の時代を評価してくれるのか、楽しみにしています。
「未来の人の文化を支える小石の一つぶ」になれるように、メジャーではない絵描きとして、たくさん描いてがんばります。
無所属だからこそ、「作家活動を継続するためのポイントを話します会」や、「寒い空間でも、水干絵具でたっぷり描ける練り方講習会」など、私が得たノウハウや技術を伝えることも、自由に行えています。この自由度は大切にしたいです。
とは言え、私の活動の内容や想いが本になるという、ある意味「メジャーの世界」で活動する機会をいただけたことを、強く感謝しています。

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著者

福井 安紀

画家・絵師。1970年京都府生まれ。サラリーマンを経たのち、30歳から絵だけで生活する道へ進む。土と石の自家製絵具で制作を続け、2013年、42歳で髙砂神社能舞台の鏡板の松を制作する機会をいただく。45歳のときに、江戸時代の絵師にあこがれ、安価に、すばやくふすま絵を描く「ふすま絵プロジェクト」を立ち上げる。各地の住宅、店舗、ホテル、寺院などでふすま絵、壁画、天井画などさまざまな種類の絵を描き続けている。2023年までに個展150回以上、多数のふすま絵制作など画家活動の限界に挑んでいる。

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