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胎内記憶でわかった こどももママも幸せになる子育て 産婦人科医 池川明

第16回

どうしてきょうだいは同じように育たない?

2017.11.13更新

読了時間

人間の神秘「胎内記憶」から子育てを考える。胎内記憶研究の第一人者の医師がたどり着いた境地とは? 親の論理ではなく「子どもの本音」に耳を傾けた、子どもの「才能=生きる力」を強くする胎教法と育児法を紹介。
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 子どもとお母さんというのは強い絆で結ばれていますが、きょうだいも同じように深い縁でつながっています。

「ぼくがお空の雲の上にいたとき、おじいさんが『どの人にする?』って聞いたの。ぼくは雲の下をのぞき込んで、『あの人がいい!』って、ママを指差したの。

 そのときに、隣にいた男の子もママを指差したの。でも、『ふたり一緒は無理だよ。どっちが先に行く?』と、おじいさんが言ったから、『ぼくが先がいい!』と、答えたの。隣にいた男の子も、『いいよ!』と言って、笑ったの。だから、ママのところにぼくが先に来たんだよ!」

 2歳半の男の子が話したことです。ちょうどその話をする少し前に、下の子がお母さんのお腹に宿りました。お母さんも気づいていない段階だったのに、男の子は、「ママのお腹に赤ちゃんがいる」と言ったそうです。そのころから、「ママのお腹の中は暗かった」とか「お腹の中にいるときにママの声が聞こえた」といった胎内記憶を語るようになり、雲の上のお話につながっていきました。

 この話の真偽を確認する術はありませんが、同じようなことを言うお子さんは大勢いて、性別も当てる子も珍しくありません。

 ほかにも、

「雲の上できょうだいになる約束をしてきたんだ」

「あのね、3人で順番を決めてきたの」

 と、言っている子もいます。

 おもしろいのは、きょうだいげんかをしているときに、興奮して記憶がよみがえってくるのか、そばで聞いているとはっと思うようなやりとりをしていることがあります。

「きょうだいになるって決めてきたのに、そんなことを言うのか!」

 と、弟に怒鳴る兄がいたり、

「お兄ちゃん、お兄ちゃんといばるな! 本当は、ぼくが最初に生まれるはずだったのに、お兄ちゃんが横入りしたんだ!」

 と、兄に突っかかっていく弟がいたりします。きょうだいのやりとりを見ていると、こうした雲の上の約束が垣間見られることがありますので、ちょっと耳を傾けてみるのもいいかもしれません。

 上の子はわんぱくなのに、下の子はおっとりしているというふうに、性格がまったく違うきょうだいは珍しくありません。同じお父さん、お母さんから生まれて、同じように育てられたのに、どうしてこんなにも違うの、とあきれてしまっているお母さんもたくさんいるでしょう。一卵性双生児でも、姿形は同じなのに、性格はまったく違ったりします。

 これこそ、遺伝子だけでは人は語れないということの証拠です。肉体は、お父さんとお母さんから来ています。しかし、たましいは別のところから来ています。そして、雲の上で話し合ってきたというような、たましいの物語があって、きょうだいになっているのです。

 お母さんは、きょうだいだから同じように育てたいと思うでしょうが、たましいが違うのですから、同じというわけにはいきません。彼ら同士の約束もあるでしょう。きょうだいを比較するのもやめた方がいいでしょう。それぞれ、この世でやろうとしていることが違うので、違う考え方や特性をもって生まれてきています。

 兄は兄の、弟は弟の、姉は姉の、妹は妹の持ち味を尊重してあげてください。

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著者

池川 明

1954年東京生まれ。帝京大学医学部大学院修了。医学博士。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、1989年に池川クリニックを開設。胎内記憶・誕生記憶について研究を進める産婦人科医としてマスコミ等に取り上げられることが多く、講演などでも活躍中。母と子の立場に立った医療を目指している。著書に『おぼえているよ。ママのおなかにいたときのこと』『ママのおなかをえらんできたよ。』(以上、二見書房)『笑うお産』(KADOKAWA)など多数。

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