第51回
養德第五十一
2019.02.18更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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養德第五十一
51 「道」と徳の偉大なはたらき
【現代語訳】
「道」が万物を生み出し、徳がそれらを養い、ものになったものが、それぞれに形を与え、「道」の自然の勢いが万物を完成させていく。そういう意味で、万物はすべて「道」を尊び、徳を貴ぶのである。「道」が尊ばれ徳が貴ばれるのは、誰かに命じられてそうなのではなく、常に自ずからそうなのである。
こうして「道」は万物を生み出し、徳はそれらを養い、それらを生育させ、またそれらを安定させ、充実させ、それらを養い保護していくのである。ものを生み出しても、それを自分のものとせず、恩恵を施しても見返りは求めず、長となっても支配し、偉ぶったりしない。以上が玄徳というものである。
【読み下し文】
道(みち)、これを生(しょう)じ、徳(とく)、これを畜(やしな)い、物(もの)、これを形(かたち)づくり、勢(いきおい)、これを成(な)す(※)。是(ここ)を以(もっ)て万物(ばんぶつ)、道(みち)を尊(たっと)び徳(とく)を貴(たっと)ばざるは莫(な)し。道(みち)の尊(とうと)きと徳(とく)の貴(とうと)きは、夫(そ)れこれに命(めい)ずる莫(な)くして、常(つね)に自(おの)ずから然(しか)り。
故(ゆえ)に道(みち)、これを生(しょう)じ、徳(とく)、これを畜(やしな)い、これを長(ちょう)じこれを育(そだ)て、これを亭(さだ)めこれを毒(あつ)くし(※)、これを養(やしな)いこれを覆(おお)う。生(しょう)ずるも(※)而(しか)も有(ゆう)せず、為(な)すも而(しか)も恃(たの)まず、長(ちょう)たるも而(しか)も宰(さい)たらず。是(こ)れを玄徳(げんとく)(※)と謂(い)う。
- (※)勢い、これを成す……「勢い」は「道」の自然の勢いが、万物を完成させていくこと。なお、「勢」を「器」とする説もあり、『帛書』ではその字になっている。
- (※)これを亭めこれを毒くし……「亭」は定と同義で安定させること。「毒」は篤と同義で充実させること。
- (※)生ずるも……「生ずるも而も有せず」以下は能爲第十と重複している。
- (※)玄徳……奥深い本当の徳。
【原文】
養德第五十一
道生之、德畜之、物形之、勢成之。是以萬物莫不尊道而貴德。道之尊、德之貴、夫莫之命而常自然。
故道生之、德畜之、長之育之、亭之毒之、養之覆之。生而不有、爲而不恃、長而不宰、是謂玄德。
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