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全文完全対照版 老子コンプリート 野中根太郎 訳

第53回

益證第五十三

2019.02.20更新

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日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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益證第五十三

53 多すぎる蓄財、ぜいたくすぎる暮らしは「道」にはずれている

【現代語訳】

もし私にしっかりとした知恵があるならば、大きな道を歩くときに、わき道にそれることを恐れる。大きな道はとても平坦なのに、人々は近道たる小道を行きたがる。
官廷はとてもきれいに掃(は)き清められているのに、畑はとても荒れていて、米倉はすっかり空っぽなのに、それでもきらびやかな服を着て、立派な剣を腰に差し、たらふく飲食した、あり余る財貨を持っている輩(やから)がいる。これを盗人の親玉という。「道」からはずれている生き方である。

【読み下し文】

我(われ)をして介然(かいぜん)(※)として知(ち)有(あ)らしめば、大道(だいどう)を行(い)くに、唯(た)だ施(し)(※)を是(こ)れ畏(おそ)る。大道(だいどう)は甚(はなは)だ夷(たい)らか(※)なるも、而(しか)も民(たみ)は径(けい)を好(この)む。
朝(ちょう)は甚(はなは)だ除(きよめ)(※)られ、田(た)は甚(はなは)だ蕪(あ)(※)れ、倉(くら)は甚(はなは)だ虚(むな)しきに、文綵(ぶんさい)を服(ふく)し、利剣(りけん)を帯(お)び、飲食(いんしょく)に厭(あ)き、財貨(ざいか)は余(あま)り有(あ)り。是(こ)れを盗夸(とうか)(※)と謂(い)う。道(みち)に非(あら)ざる哉(かな)。

  • (※)介然……しっかりした。堅固。なお、微細の意味に解する説もある。
  • (※)施……邪の意で、邪道、わき道のこと。
  • (※)夷らか……平坦なこと。
  • (※)除……掃除のこと。なお、汚濁と解する説もある。
  • (※)蕪……荒れること。
  • (※)盗夸……盗人の親玉。大盗。

【原文】

益證第五十三

使我介然有知、行於大衜、唯施是畏。大道甚夷、而民好徑。
朝甚除、田甚蕪、倉甚虛、服文綵、帶利劍、厭飮食、財貨有餘。是謂盜夸、非道也哉。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 菜根譚コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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