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イヤな気分をパっと手放す「自分思考」のすすめ 他人にも感情にも振り回されない方法 元自衛隊の臨床心理士 玉川真理

第9回

「空気が読めない人」の長所

2017.08.22更新

読了時間

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。
「目次」はこちら

 

こんな生き方が欠点をプラスに変えていく

 イヤな気分に支配されやすい人は、基本的にこの社会で「生きづらい」と感じていることが多いと思います。あなたもその一人かもしれませんね。

 多くの場合、それには今の日本が向いている方向が大きく影響しています。「みんなと同じことができて、溶け込めなければいけない」という風潮だから、それができない人は居場所がなくなってしまうのです。

 でも、それはそういう環境で生きづらいというだけで、違う場所で花開く可能性もじゅうぶんにあるのです。

 生きづらいと感じる人は、世間一般でいわれる「普通」の枠におさまろうと努力するよりも、「自分はどうすれば社会の中でいい部分を発揮できるのか、自分の個性をプラスにできるのか」という自分思考を身につければ、必ず道は開けます。

 私自身、幼い頃からずっと生きづらさを感じてきた人間です。この章で挙げた性格は「全部私のことだ」と思うくらい当てはまっています。私生活でも仕事でも数えきれないくらいつまずいて、苦しんで、試行錯誤を重ねてきました。

 その結果、すべてにプラスの側面があるとわかりました。自分思考で考えて自分力を高める方向へ行けば、欠点も失敗もすべてプラスに変えられると気づいたのです。

 私は自衛隊を辞めてからも、なぜかいただく仕事は公務員関係が多いのです。でも実際の私は朝なかなか起きられないし、みんなと同じ考え方ができないし、どう考えても公務員には適応できない人間なのです。

 そういう自分に一番合わない所が「来てほしい」と言ってくれるのは、自分の個性的な能力が買われているのかなと思います。

 そんなこともあって、私はどこに行っても自分でこれが自分の能力だと決めてそれを発揮し、「選択・決断・行動」のセットをやっていけば、その人らしく生きられると思っています。

 それに、人は生きづらければ生きづらいほど、どうしたら生きやすくなるだろうと思って本も読むし、勉強もするし、人の話も聞いて考えますよね。ですから、生きづらい人ほど生涯にわたって成長する可能性が高いのです。

 かといってあまり肩に力を入れる必要はなく、物事はなるようにしかならないので今できることをやってください。

 何もしないでグズグズ言っていても、何も変わらない。そのことだけわかっていればいいと思います。

 それでは、さまざまな生きづらい人たちが持っているプラスの側面を、これからどんどん見つけていきましょう。

「空気が読めない人」の長所

 「空気が読めないね」と言われたことがありますか?はっきり言われなくても、そういうふうに扱われて嫌だなと思ったことがありますか?

 だとしたら、今日からはそれを誇りに思ってください。

 空気が読めない人の長所は、まわりに影響されないこと。「正しいことは正しい」と言えることです。

 政治家などで、ズバッとものを言って前任者の方針をひっくり返す人もいますが、そういう人もきっとそうだと思います。

 空気を読めたら、そんなふうに言いませんよね。空気が読めないからこそ、「自分はこう思う」と表明するのだと思います。

 それであまりにも空気が凍りついたときに、「あっ、やっちゃった」とは思うかもしれませんが、影響を与える力はあるのです。そこからみんながそのテーマについて考えるようになるとか、中には怒る人もいますが、変化をもたらすことができています。

 仕事の場面でも、そういう人が画期的なプロジェクトを作ったり、何かを生み出したりできる可能性があります。著名な人たち、天才と言われている人たちは空気なんて読みません。空気を読めないし読まないのです。

 空気が読めてしまう人は、残念ながら一般ピープルということです。

 「空気が読めない人」という言葉は、世間ではマイナスの意味で使われることが多いですが、逆に「選ばれた人」ぐらいのつもりで生きてほしいと思います。

 ときには敵も作るかもしれないし、苦しむかもしれない。でも、自分らしさを押し殺さずに追求していけば、最先端を行ける可能性もあります。

 空気が読めないあなたには、空気を読める普通の人にできないことができるのです。

「あがり症な人」の長所

 慣れないことをするときや、人前で何かをするときにすごく緊張する「あがり症」な人は、慎重なのだと思います。

 慎重でない人は、どんどん敵陣に入っていったり、危険な場所に行って討ち死にしたり、傷つけられたりして帰ってきます。

 でも、あがり症、不安症の人は、なるべくそういうところは避けているので、人を傷つけたり人から傷つけられたりすることを予防できているのです。

 そういう人が「自己主張しないのはダメだ」と言われるような環境に置かれたり、「あなたのそういうところがね」と指摘されたりすると、すごくつらいですね。ネガティブになって自信がなくなっていきます。

 でも前述のように、あがり症の人がリスクのあることに対して慎重なのは、戦略的にはすごく理にかなっているのです。

 私自身もけっこうあがり症です。

 人前で話すときは、緊張で吐きそうになるくらいです。直前の数日間お腹を壊して前の日から眠れなくなります。

 でも今は、それをネガティブにとらえなくなりました。

 あのドキドキ感もすごくいい!と感じるようになったからです。お刺身や何かにわさびをつけて食べるのと一緒で、あのピリッとくる感じがたまらないのです。

 でも、人前で話すのが好きでも得意でもないのは事実なので、そう言うとみんなに「ウソ!?」と言われます。

 そこで私はこんなふうに説明します。

 「私は女優だと思って、わさびを楽しみながら演じているんです。ただ、聞いてくれる人が一人でもいたら、私にとって今の時間は『生きていていいんだな、生かされているな』という感謝の時間にはなり得ます」

 あなたも、あがり症を直そうと努力するより、あがっているときの感覚をしっかり味わうことや、自分がしていることそのものに意識を向けてみると、また違うものが見えてくるかもしれません。

「ネガティブ思考の人」の長所

 ネガティブ思考の人は、「もしこうなったら」「こういうことが起きたら」と想像するのが得意です。つまり想定上手なのです。

 生きていく上でいろいろなことを想定してみることは大切で、それは自分を守ることにつながります。

 たとえば山でキノコを見つけたとき、すぐに食べてしまうのは危険ですよね。

 まず、「これは毒キノコかもしれない」と思いながら色や形をよく見て、あやしいと感じたり、判断がつかない場合は食べないのが正解です。

 人間関係でもそうです。

 「あの人はこの前人の悪口を言っていたから、私も言われるかもしれない」と思ったら、そうならないように言葉や行動に気をつければいいのです。

 誰かのにらむような視線を感じて「嫌われるかもしない」と思ったら、おとなしく愛らしい人でいればいいわけです。

 ひとつだけ注意したいことがあります。

 いろいろ想定するのはいいですが、よくない想像をふくらませて「やられる前にやってやる」などと、他者に向けた攻撃に変換してはいけません。攻撃は必ず自分に返ってきますから。

 「こうなったら嫌だなあ」「またあんなことが起きたら嫌だなあ」と思ったら、どうしたらそれを防げるかを考えて、今の自分にできることをすればいいのです。

 心配事は、自分が思うほど起こらないものだといわれています。もし想定外のことが起きてしまったら、それはまたそのときに考えましょう。

 「ネガティブ思考はいけない」と思わずに、ネガティブでもいいから、そういう自分の臆病な部分を受け入れて大事にしていけばいいと思います。

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著者

玉川 真里

元自衛隊の臨床心理士。NPO法人ハートシーズ理事長。1973年岡山県生まれ。1991年に陸上自衛隊に入隊。女性初の大砲部隊野外通信手として活躍する。2008年、陸上自衛隊において現場初の臨床心理士として、最も自殺率の高い職業といわれる自衛隊の自殺予防対策を任される。より多くの人の心を救済したいとの思いから自衛隊を辞め、資産をすべて投入してNPO法人を設立。年間2000件を超える相談を受けている。著書に『もう、「あの人」のことで悩むのはやめる』(サンマーク出版)、『折れない 凹まない 振り回されない “心のクセ”を変える6つの方法』(大和出版)がある。

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