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イヤな気分をパっと手放す「自分思考」のすすめ 他人にも感情にも振り回されない方法 元自衛隊の臨床心理士 玉川真理

第6回

自分で作ったうつは必ず自分で治せる

2017.08.01更新

読了時間

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。
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「死ぬしかない」は究極のとらわれた状態

 重いうつになると、逃げること、イコール「死」ということが一番の解決法であるかのように思えてきます。

 これは究極の「とらわれた状態」です。自分がとらわれの身になっているのです。逃げること、死ぬことにとらわれているので、まずは自分がとらわれているものとよくよく向き合ってみて、本当にそれしかないのかを考える必要があります。

 自分の敵は誰かと考えてみたときに、悩んでいる人はよく「あの人がこうだから」といいますが、一番怖いのは自分なのです。

 人は自分で自分を殺す生き物ですから、究極の敵は自分です。

 それでも、SNSなどで人に向かって「死にたい」というメッセージを送ってくる人は、本当は「助けてほしい」という期待があってそうしています。

 でも、私がその人を助けることはできません。知り合ってつながってこられた以上は死なれるのはいやだし、気持ちを知ってしまった以上は死んでほしくないですが、それは私の力ではどうにもできないと思っているし、本人にもそう伝えます。生きるか死ぬかは自分で決めるしかないことなのです。

 私はただ、ただ小さい人間なのです。「私もあなたも小さい人間である。魔法は使えない」ということを、いつも繰り返し説いているだけです。

 人は、どうしても幻想を抱きます。あっという間に回復させてくれるすごい先生や、薬や〇〇療法が見つかると思ってしまうのです。でも、そんな魔法はありません。

 そして心の不調にしろ体の不調にしろ、不快なものは必ずやってくるのです。

 それなら、「その時間をどう過ごすか、そこから何を得るのか」というところにつなげていったほうがいい、私はそれを言っているだけなのです。

人間は弱いからこそ愛おしい

 先日、職場の人間関係がうまくいかず、うつになって薬を飲んでいる人のカウンセリングをしました。もともと発達障害で人間関係が下手だという自覚のある人です。

 でも、その人の場合も、小学校ではうまくいかなかったけれど、中学高校はいいメンバーに恵まれて、トラブルは一切なかったといいます。

 うまくいく場合もそうでない場合も、そのときたまたま集まった人にどんなタイプが多かったか、感受性の似た者同士が集まっていたかどうかという、ただそれだけの話なのです。他人は他人なのです。

 いろいろな感性の持ち主がいるわけですから、使う言葉やふるまい方も、「こうしていれば100パーセント人間関係がうまくいって良い評価が得られる」というものはありません。それを追求できるのはコンピュータだけです。でも、コンピュータは愛される対象にならないですよね。

 弱くて不器用、それが人から「愛らしいね」と言われる要素なのです。

 赤ちゃんがなぜ愛らしいかというと、弱くて何もできないからです。何かしてあげようと思うから愛らしく、愛おしいのです。

 赤ちゃんが一人で歩けて、「オッパイなんかいらねえぜ」なんて言ったら、愛おしくも何ともないですね。

 だからその人にも言ったのです。

 「弱さを否定したら誰からも愛されないですよ。努力するの、やめたら?そのままでステキだと思うから」

 私は、その人は本当にそのままでいいと思ったのです。

 そもそも、うつ病って本当に病気なのだろうか?とさえ思います。

 おかしな疑問だと思いますか?

 確かに、うつ病という名前がついているので、一般的には病気だと思われていますよね。でも、赤ちゃんでうつ病の子はいません。生まれたときから「死にたい」と思っている子は誰もいません。

 だから、うつという状態は生きている中で二次的に生まれたもので、自分で思い込みを深めてイヤな気分をこじらせていった、その先に表れる症状のようなものではないか、そう思っているのです。

自分で作ったうつは必ず自分で治せる

 赤ちゃんにはすごい生命力があります。どんな状況でもなんとか生きようとする、究極的にすごい存在です。人間の生きる本能は本当に強いものです。

 それを考えたら、生きる気力を失ったりするのは、元はと言えば、生活歴の中でたまたま経験したことの中で何か思い違いがあって、それにこだわり続けた結果なのだと思います。

 「空気が読めない自分はダメだ」「こんな弱い自分はダメだ」等々。

 ということは、その思い違いを自分のプラスになるように変えてみることで、完全にその人は生きやすくなると保証されているのではないでしょうか。

 その根拠が、赤ちゃんにうつ病はない、赤ちゃんは自殺しないということなのです。

 ですから、この本の2,3,4章では、生きづらさの元になっているものの見方を、ポジティブに変換していくための方法をお伝えしたいと思っています。

 私は、うつ病になる人というのはある程度知的能力が高い人だと思います。

 なぜなら、頭を働かせて想像したり、考えたりしないとそういう状態にはならないですから。言い換えれば、生きること以外のムダなことを考える能力が高いということでしょう。

 どうやって生き延びるかという部分は、原始的な脳が司っています。そこよりも、後から発達した大脳新皮質の働きが活発になってくると、「なんで?」とか「これはこういうことでは?」とか、考え始めるわけです。

 でも、赤ちゃんは「なんで?」と思ってもすぐに忘れてしまいます。

 赤ちゃんを見ると、私たちは本来生きるようにできていること、生きて成長して考えることができる存在だということがわかります。

 逆に言うと、うつになれる人は自分でその状態を作ったのだから、自分でうつを治すことも100パーセントできると思っているのです。

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  • みんなの感想

    ポニョポニョ

    息子がうつになりました。ショックでした。就職して一人暮らし始めて二年で退職し実家に戻って来ました。引っ越しも出来ず主人と二人で無我夢中で息子の部屋を片付けました。帰ってきてすぐは、もう大丈夫と胸を撫で下ろしましたが、それもつかの間。何をどうししたらいいのか、物事を捕らえる角度がびっくりするくらい変わってしまって戸惑っています。

    返信
著者

玉川 真里

元自衛隊の臨床心理士。NPO法人ハートシーズ理事長。1973年岡山県生まれ。1991年に陸上自衛隊に入隊。女性初の大砲部隊野外通信手として活躍する。2008年、陸上自衛隊において現場初の臨床心理士として、最も自殺率の高い職業といわれる自衛隊の自殺予防対策を任される。より多くの人の心を救済したいとの思いから自衛隊を辞め、資産をすべて投入してNPO法人を設立。年間2000件を超える相談を受けている。著書に『もう、「あの人」のことで悩むのはやめる』(サンマーク出版)、『折れない 凹まない 振り回されない “心のクセ”を変える6つの方法』(大和出版)がある。

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