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第1回

はじめに

2019.02.07更新

読了時間

臆病、意地っ張り、せっかち…。あなたは自分の「性格」に苦労していませんか? 性格は変えられないというのはじつはウソ。性格とは、人が生きていく上で身に付けた「対人戦略」なのです。気鋭の認知科学者である苫米地英人博士が、性格の成り立ちや仕組み、変え方などを詳しく解説します。
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 私たち人間は一人ひとり、異なる「個性」を持っています。
 みなさんも、身のまわりの人を思い浮かべてみてください。
 明るい人、暗い人、真面目な人、不真面目な人、怒りっぽい人、穏やかな人……。
 当然のことながら、それぞれに異なる特徴があるはずです。

 そしてみなさんは、こうした違いを「性格の違い」として捉えているのではないかと思います。
 人間には、遺伝等により持って生まれた資質や気質のようなものがあり、それが性格のベースになっている。そのように考えている人がほとんどでしょうし、もしかしたら「脳科学的な見地から、苫米地が性格のメカニズムを解き明かす」内容だと思い、本書を手に取られた方もいるかもしれません。

 しかし、そうした考えは、今すぐに捨ててください。

 たとえば、あなたが、ご自身を「明るい性格」だと考えているとします。
 その根拠はどこにあるのでしょうか。
「楽観的だから」「よく笑うから」「人からよく『明るい』と言われるから」などを根拠とする人もいるかもしれませんが、「楽観的」「よく笑う」というのは、あくまでも、あなたの思考や行動の傾向にすぎませんし、ときにはひどく落ち込むこと、悲観的になることもあるでしょう。
 また他人も、あなたの行動の一部だけを見て、しかもその人の主観的な基準に従って、「明るい」という評価を下しているだけです。

 このように突き詰めて考えると、私たちがふだん、どれほど「性格」という言葉を、その正体もよくわからないまま、あいまいに使っているかが、おわかりいただけるのではないかと思います。

 では、私たちが今まで「性格」と呼んでいたものの正体は何なのか。
 何によって、どのように作られたものなのか。
 それを解き明かすのが、本書の大きな目的です。

 人間の脳の前頭前野には、過去の記憶から作られた「ブリーフシステム」と呼ばれる認識のパターンが蓄積されており、それによって人の選択や行動が左右されています。
 たとえば、過去にコーヒーを飲み、「苦くてまずい」と感じた人の前頭前野には「コーヒーを飲みたくない」というブリーフシステムが作られます。
 するとその人は、コーヒーと紅茶のいずれかを選ぶ場合、無意識のうちにコーヒーを避け、紅茶を選ぶようになるのです。

 同様に、過去の経験から「自分は明るい性格である」という自己イメージや、「明るいほうが好かれやすい」という思いを持つに至った人の前頭前野には、「自分は明るくふるまうべきである」といったブリーフシステムができ、それにふさわしい選択や行動をするようになります。
 これにより、「自分は明るい性格である」という自己イメージがますます強化され、周りの人もその人の言動を見て「この人は明るい性格だ」との評価を下すことが多くなります。
「性格」と呼ばれるものは、こうしてできあがっていくのです。

 本書のPART1では、世の中で「性格」と呼ばれているものの正体や、それができあがるプロセスなどについて、より詳しく説明しています。またPART2、PART3では、マイナスの自己イメージに縛られている人、思考や行動の傾向を変えたいと考えている人へのヒントを示し、PART4では、日本の歴史において、教育が日本人の前頭前野にどのようなブリーフシステムを作り、思考や行動の傾向にどのような影響を与えているかを明らかにしました。

 それではさっそくみなさんを、「性格」をめぐる旅にお連れしましょう。


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著者

苫米地 英人

1959年、東京都生まれ。認知科学者、計算機科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェロー。マサチューセッツ大学コミュニケーション学部を経て上智大学外国語学部卒業後、三菱地所にて2年間勤務し、イェール大学大学院計算機科学科並びに人工知能研究所にフルブライト留学。その後、コンピュータ科学の世界最高峰として知られるカーネギーメロン大学大学院に転入。哲学科計算言語学研究所並びに計算機科学部に所属。計算言語学で博士を取得。徳島大学助教授、ジャストシステム基礎研究所所長、通商産業省情報処理振興審議会専門委員などを歴任。

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