第35回
仁德第三十五
2019.01.24更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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仁德第三十五
35 「道」を守れば、すべてが平穏無事で落ち着く
【現代語訳】
「道」に従いしっかり守っていくと、世の中のすべてがうまくいく。どこにいこうと害はなく、すべてが平穏無事で落ち着く。
音楽やごちそうとなれば、旅人も足を止めるものである。しかし、「道」が語る言葉は、淡白で味もない。見ようとしても見えず、聴(き)こうとしても聞こえないが、「道」のはたらきはとても大きく、尽き果てることがない。
【読み下し文】
大象(たいしょう)を執(と)れば(※)、天下(てんか)往(ゆ)く。往(ゆ)きて而(しか)も害(がい)あらず。安平大(あんぺいたい)(※)なり。
楽(がく)と餌(じ)には、過客(かかく)(※)止(とど)まる。道(みち)の言(げん)に出(い)だすは、淡乎(たんこ)として其(そ)れ味(あじ)無(な)し。これを視(み)るも見(み)るに足(た)らず、これを聴(き)くも聞(き)くに足(た)らず、これを用(もち)いて既(つく)すべからず。
- (※)大象を執れば……大象とは「道」のこと。同異第四十一には、「大象は形無し」とある。そこでも大象を形のないものとして「道」のことを説明している。なお、虛心第二十一では、「道」はおぼろげで奥深く捉えどころがないが、そのなかに何か精気があるとしている。「道」とは人が形として捉えることはできないが、そのはたらきは確かにあるもので、何かが存在しているということであろう。「執」とは、しっかり持つこと。守ること。
- (※)安平大……平穏無事であること。なお、「大」については、「太」「奉」とする説もあるが、意味は同じ。
- (※)過客……旅人のこと。
【原文】
仁德第三十五
執大象、天下徃。徃而不害、安平大。
樂與餌、過客止。道之出言、淡乎其無味。視之不足見、聽之不足聞、用之不可既。
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