第70回
知難第七十
2019.03.15更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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知難第七十
70 粗末な服を着ていても、心のなかには宝を抱いていたい
【現代語訳】
私の言っていることは、とてもわかりやすくて行いやすいのに、天下の人はそれがわからず、行う者はなかなかいない。
私の言葉には、根本的な原理があり、行うことには要点がある。そもそも人はそれを理解しないから、私のことがわからないのだ。
私のことを知る人がまれだから、それだけ私は貴い存在なのである。こうして「道」と一体となっている聖人というのは、粗末な服を着ていても、心のなかには宝を抱いているのだ。
【読み下し文】
吾(わ)が言(げん)は甚(はなは)だ知(し)り易(やす)く、甚(はなは)だ行(おこな)い易(やす)きも、天下(てんか)能(よ)く知(し)るもの莫(な)く、能(よ)く行(おこな)うもの莫(な)し。
言(げん)に宗(そう)有(あ)り、事(こと)に君(きみ)有(あ)り(※)。夫(そ)れ唯(た)だ知(し)ること無(な)し、是(ここ)を以(もっ)て我(わ)れを知(し)らず。
我(わ)れを知(し)る者(もの)希(まれ)なるは、則(すなわ)ち我(わ)れ貴(たっと)し。是(ここ)を以(もっ)て聖人(せいじん)は褐(かつ)(※)を被(き)て玉(たま)を懐(いだ)く。
- (※)言に宗有り、事に君有り……一般論と解する説もあるが、ここでは本文の訳のように私(老子)の言葉が主語であると解する。
- (※)褐……太い獣毛、あるいは麻でつくった粗末な服のこと。
【原文】
知難第七十
吾言甚易知、甚易行、天下莫能知、莫能行。
言有宗、事有君。夫唯無知、是以不我知。
知我者希、則我者貴。是以聖人被褐懷玉。
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