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第42回

121〜123話

2020.02.26更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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121 人の短所はこと細かにうまくつくろってやる


【現代語訳】
人の短所は、こと細かにうまくつくろってやるようにすべきである。もし相手の短所を暴くようだと、自分の短所で相手の短所を攻めるようなもので、うまくいかない。また、頑固な人に対しては、上手にさとしていかねばならない。もしこちらも怒って相手に突っかかり意見を述べるようだと、こちらの頑固さが相手の頑固をさらに助長してしまうことになる。

【読み下し文】
人(ひと)の短所(たんしょ)は、曲(つぶ)さに弥縫(びほう)を為(な)す(※)を要(よう)す。如(も)し暴(あら)わしてこれを揚(あ)ぐれば、是(こ)れ短(たん)を以(もっ)て短(たん)を攻(せ)むるなり。人(ひと)の頑(がん)ある的(もの)は、善(よ)く化誨(かかい)(※)を為(な)すを要(よう)す。如(も)し忿(いか)りてこれを疾(にく)まば、是(こ)れ頑(がん)を以(もっ)て済(な)す(※)なり。

(※)曲に弥縫を為す……こと細かに、うまくつくろう。うまい具合にフォローをする。
(※)化誨……さとす。感化訓誨の意で教えさとすこと。
(※)頑を以て済す……頑固さをさらに助長させる。

【原文】
人之短處、要曲爲彌縫。如暴而揚之、是以短攻短。人有頑的、要善爲化誨。如忿而疾之、是以頑濟頑。

 

122 気持ち悪いほど無口な人と感情的で自分ばかり話す人との付き合い方


【現代語訳】
気持ち悪いほど無口で、何を考えているのかわからない人とは、こちらも本心を語らないほうが良い。また、すぐに感情的になり、自分ばかりが正しいと思い込んでいる人とは、口をきかないほうが良い(付き合わないほうが良い)。

【読み下し文】
沈沈不語(ちんちんふご)(※)の士(し)に遇(あ)わば、且(しばら)く心(こころ)を輸(いた)す(※)こと莫(な)かれ。悻悻(こうこう)(※)自(みずか)ら好(よ)しとする人(ひと)を見(み)れば、応(まさ)に須(すべか)らく口(くち)を防(ふせ)ぐべし。

(※)沈沈不語……気持ち悪いほど無口。決して本心を明かさない人。なお、『論語』では、「与(とも)に言(い)うべくして之(これ)と言(い)わざれば、人(ひと)を失(うしな)う」(衛霊公第十五)とする。つまり、良い友人はできにくいとする。基本的に無口をよしとするが、言うべきとき、語るべきときはちゃんと話す人をよしとする。
(※)心を輸す……本心を語る。心の内をうち明ける。
(※)悻悻……すぐに感情的になる。怒る。

【原文】
遇沈沈不語之士、且莫輸心。見悻悻自好之人、應須防口。

 

123 気持ちをコントロールすることを学んでおく


【現代語訳】
気持ちがぼんやりとして気が散ってしまうときは、本心を目覚めさせ、心を集中させることを知る必要がある。また、気持ちが緊張しすぎて余裕がないときは、それをゆるめて平常になることを知る必要がある。そうしないと、ぼんやりとする気の病は良くなっても、気持ちはコントロールできずに揺れ動き、また落ちつきのない状態をひき起こすことになろう。

【読み下し文】
念頭昏散(ねんとうこんさん)(※)の処(ところ)は、提醒(ていせい)(※)を知(し)るを要(よう)す。念頭喫緊(ねんとうきっきん)の時(とき)は、放下(ほうげ)(※)を知(し)るを要(よう)す。然(しか)らざれば、恐(おそ)らくは昏昏(こんこん)の病(やまい)を去(さ)って、又(また)憧憧(しょうしょう)(※)の擾(みだ)れを来きたさん。

(※)念頭昏散……気持ちがぼんやりして気が散る。
(※)提醒……目覚めさせる。
(※)放下……ゆるめる。本項は集中力を持つこととリラックスする方法を身につけておくことが大切だと述べている。この点、福沢諭吉はうまかった。『学問のすゝめ』にあるように、「鰻の蒲焼き」や「茶碗蒸し」などを食べることにも大いに興味を持ち、また岩波文庫の『福翁自伝』に載せてあるアメリカの若い娘とのツーショットを見ても、船旅と渡米の緊張感をうまく解いて、その上で西洋の知識を集中してたくさん仕入れているのはさすがである。
(※)憧憧……心が定まらず、うろうろする。

【原文】
念頭昏散處、要知提醒。念頭喫緊時、要知放下。不然、恐去昏昏之病、又來憧憧之擾矣。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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