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第72回

211〜213話

2020.04.09更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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211 他人を素直に畏敬(いけい)できる人は伸びていく


【現代語訳】
立派で偉い人に対しては、素直に大した人だと畏敬の念を持ちたい。この素直に評価できる態度が、自分のいい加減になる気持ちを抑え、伸びていける人となる。また、普通の人にも敬意を持って接したい。そうすることで、人と広く親しめることになり、横暴な人という悪評も立つこともない。

【読み下し文】
大人(たいじん)は畏(おそ)れ(※)ざるべからず。大人(たいじん)を畏(おそ)れば、則(すなわ)ち放逸(ほういつ)の心(こころ)無(な)し。小民(しょうみん)(※)も亦(ま)た畏(おそ)れざるべからず。小民(しょうみん)を畏(おそ)るれば、則(すなわ)ち豪横(ごうおう)(※)の名(な)無(な)し。

(※)畏れ……畏敬の念を持つ。敬いかしこまる。なお、『論語』で孔子は次のように言う。「君子(くんし)に三畏(さんい)有(あ)り。天命(てんめい)を畏(おそ)れ、大人(たいじん)を畏(おそ)れ、聖人(せいじん)の言(げん)を畏(おそ)る。小人(しょうじん)は天命(てんめい)を知(し)らずして畏(おそ)れざるなり。大人(たいじん)に猥(な)れ、聖人(せいじん)の言(げん)を侮(あなど)る」(季氏第十六)。また、「後世(こうせい)畏(おそ)るべし」(子罕第九)とも言っている。年下でも尊敬できる人はいるということだ。「畏友(いゆう)」とはここからきている。
(※)小民……庶民。普通の人。なお、福沢諭吉は『学問のすゝめ』十七編のなかで言う。「すなわち孔子の『道(みち)同(おな)じからざれば、相(あい)与(とも)に謀(はか)らず』(衛霊公第十五)という教えを誤解している人が多い」とし、そして次の二つの名言を述べて『学問のすゝめ』を締めくくる。本項後半の趣旨と同じである。「人(ひと)に交(まじ)わらんとするには啻(ただ)に旧友(きゅうゆう)を忘(わす)れざるのみならず、兼(か)ねてまた新友(しんゆう)を求(もと)めざるべからず」。「人(ひと)にして人(ひと)を毛嫌(けぎら)いするなかれ」。本項の解釈については、本書の前集110条も参照。
(※)豪横……横暴な人。

【原文】
大人不可不畏。畏大人、則無放逸之心。小民亦不可不畏。畏小民、則無豪橫之名。

 

212 自分の不満や悩みはまだまだ小さいと考える


【現代語訳】
物事が少し思うようにいかなくて悩み始めたときは、自分より悪い条件でがんばっている人のことを思うと良い。そうすれば、不満も悩みもぜいたくなことだと悟ることができるだろう。また、少しなまけ心が生じたと思うときは、自分より先行く優れた人のことを考えると良い。そうすれば、そんなこと思っていられないと精神が奮い立ってくるだろう。

【読み下し文】
事(こと)稍(やや)払(ふつ)逆(ぎゃく)せば、便(すなわ)ち我(われ)に如(し)かざるの人(ひと)を思(おも)えば、則(すなわ)ち怨尤(えんゆう)(※)自(おの)ずから消(き)えん。心(こころ)稍(やや)怠荒(たいこう)(※)せば、便(すなわ)ち我(われ)より勝(まさ)れるの人(ひと)を思(おも)えば、則(すなわ)ち精神(せいしん)自(おの)ずから奮(ふる)わん。

(※)怨尤……うらみとがめる。不満や悩みが出る。
(※)怠荒……なまけすさむ。

【原文】
事稍拂逆、便思不如我的人、則怨尤自消。心稍怠荒、便思勝似我的人、則精神自奮。

 

213 軽い判断、軽い行動は危険である


【現代語訳】
喜んでいるときに、調子に乗って軽はずみな承諾をしてはならない。酒に酔って、感情が高ぶってしまい怒りを爆発させてはならない。ちょっと調子良くいっているからといって、手を広げすぎてはいけない。飽きて嫌になったからといって、終わり方をいい加減にしてはならない。

【読み下し文】
喜(よろこ)びに乗(じょう)じて諾(だく)(※)を軽〻(かるがる)しくすべからず。酔(よ)いに因(よ)りて嗔(いか)りを生(しょう)ずべからず。快(かい)に乗(じょう)じて事(こと)を多(おお)くすべからず。倦(けん)(※)に因(よ)りて終(おわ)りを鮮(すくな)くすべからず。

(※)諾……承諾。なお、『老子』に「夫(そ)れ軽(かる)く諾(だく)せば必(かなら)ず信(しん)寡(すくな)く、易(やす)しとすること多(おお)ければ必(かなら)ず難(かた)きこと多(おお)し」(恩始第六十三)とある。
(※)倦……飽きてなまける。倦怠。

【原文】
不可乘喜而輕諾。不可因醉而生嗔。不可乘快而多事。不可因倦而鮮終。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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