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第83回

22〜24話

2020.04.24更新

読了時間

 「超訳」本では軽すぎる、全文解説本では重すぎる、菜根譚の全体像を把握しながら通読したい人向け。現代人の心に突き刺さる「一文超訳」と、現代語訳・原文・書き下し文を対照させたオールインワン。
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22 自分の生き方を守っている人が幸せになれる


【現代語訳】
権力のある人に走り寄り、勢いのある人にとりつくことから生じる禍いは、その相手が地位を失うと悲惨であり、また、その報いはすぐにやってくる。これに対して、心やすらかで、気ままに生きることを信条として守る人は、非常に淡泊で良い目には合わないかもしれないが、安定した生活をずっと長く送ることができる。

【読み下し文】
炎(えん)に趨(はし)り(※)勢(せい)に附(つ)くの禍(わざわ)いは、甚(はなは)だ惨(さん)にして亦(ま)た甚(はなは)だ速(すみ)やかなり。恬(てん)に棲(す)み(※)逸(いつ)を守(まも)る(※)の味(あじ)わいは、最(もっと)も淡(たん)にして亦(ま)た最(もっと)も長(なが)し。

(※)炎に趨り……権力のある人に走り寄り。なお、本項の解釈は、本書の前集1条、111条、174条参照。権力者に近づき、うまく成功していくのが古来、中国的成功法則の典型であり、近時、中国で大ヒットしたドラマ(清朝時代に、中国の大商人だった胡雪岩(こせつがん)を描いたもの)もそうであった。これも中国で『菜根譚』がほとんど読まれず、日本で多く読まれてきた理由の一つであると思われる。『菜根譚』は徹底して、権力者に近づくなと教える。
(※)恬に棲み……心やすらかな生き方を守り、それを自分の住み家とする。
(※)逸を守る……気ままな生活を守る。

【原文】
趨炎附勢之禍、甚慘亦甚速。棲恬守逸之味、最淡亦最長。

 

23 自然のなかで風流に生きる


【現代語訳】
松の茂っている谷間の川のあたりを、杖を持って一人散歩する。立ち止まったところでふと見れば、私の破(やぶ)れ衣(ごろも)に雲が湧いてまとわりついている感じがする。また、竹が茂ってしまっている窓の下で、書を枕にひと眠りする。目が覚め、ふと見ると月の光が古くて粗末な敷物の上に差し込んでいる。

【読み下し文】
松㵎(しょうかん)(※)の辺(ほとり)、杖(つえ)を携(たずさ)えて独行(どくこう)すれば、立(た)つ処(ところ)、雲(くも)は破衲(はのう)(※)に生(しょう)ず。竹窓(ちくそう)の下(もと)、書(しょ)を枕(まくら)として高臥(こうが)すれば、覚(さ)むる時(とき)、月(つき)は寒氈(かんせん)(※)を侵(おか)す。

(※)松㵎……松の茂っている谷間の川。
(※)破衲……破れた衣。衲は僧衣。
(※)寒氈……古くて粗末な敷物。

【原文】
松㵎邊、携杖獨行、立處、雲生破衲。竹窓下、枕書高臥、覺時、月侵寒氈。

 

24 正しく生きていくためのコツ


【現代語訳】
色欲が火のように盛んに燃えるときも、重い病気になってしまったときのことを考えると、いきすぎた熱は冷めて冷えた灰のように落ちつくことになる。また、名誉や利益はあめのように甘いものであるが、やはり自分が死ぬときのことを考えると、その甘さも蠟をかむような味けなさとなる。こうして普段から、いつも死や重い病気のことを考えられるようにしておけば、いたずらに色欲や名誉、利益を追い求める心もなくなり、求道の心(正しい生き方を求める心)を持続させることができるようになる。

【読み下し文】
色欲(しきよく)は火(ひ)のごとく熾(さか)んなるも、而(しか)も一念(いちねん)、病時(びょうじ)に及(およ)べば、便(すなわ)ち興(きょう)は寒灰(かんかい)に似(に)たり。名利(みょうり)は飴(あめ)のごとく甘(あま)きも、而(しか)も一想(いちそう)(※)、死地(しち)に到(いた)れば、便(すなわ)ち味(あじ)は嚼蠟(しゃくろう)の如(ごと)し。故(ゆえ)に人(ひと)常(つね)に死(し)を憂(うれ)え病(やまい)を慮(おもんばか)らば、亦(ま)た幻業(げんぎょう)(※)を消(け)して道心(どうしん)(※)を長(ちょう)ずべし。

(※)一想……ひとたび考えると。なお、本項の解釈については、本書の前集26条、78条も参照。
(※)幻業……色欲や名誉、利益を追い求めること。幻のような行い。
(※)道心……求道の心。仏道を修めようとする心。

【原文】
色慾火熾、而一念及病時、便興似寒灰。名利飴甘、而一想到死地、便味如嚼蠟。故人常憂死慮病、亦可消幻業而長衜心。

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著者

野中 根太郎

早稲田大学卒。海外ビジネスに携わった後、翻訳や出版企画に関わる。海外に進出し、日本および日本人が外国人から尊敬され、その文化が絶賛されているという実感を得たことをきっかけに、日本人に影響を与えつづけてきた古典の研究を更に深掘りし、出版企画を行うようになる。近年では古典を題材にした著作の企画・プロデュースを手がけ、様々な著者とタイアップして数々のベストセラーを世に送り出している。著書に『超訳 孫子の兵法』『吉田松陰の名言100-変わる力 変える力のつくり方』(共にアイバス出版)、『真田幸村 逆転の決断術─相手の心を動かす「義」の思考方法』『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 孫子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』『全文完全対照版 老子コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』(以上、誠文堂新光社)などがある。

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