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よみものどっとこむ

マンガでわかる 「日本絵画」の見かた 監修 矢島新 イラスト 唐木みゆ

第4回

モノクロの絵VS華麗な絵【南北朝〜安土桃山時代の水墨画とやまと絵】

2017.07.19更新

読了時間

【 この連載は… 】 誰もがわかる「凄さ」より、私が心奪われる「美しさ」が大事! リアルなものも嫌いじゃないけど、キレイなものやかわいいものが大好きで、デフォルメや比喩も進んで楽しめちゃう。そんな日本人の「好き」の結晶・日本絵画。世界も魅了したその魅力をお教えします。

鎌倉時代の末頃に禅宗と一緒に伝わった水墨画は室町将軍の周りで花開き、徐々に日本風の水墨画に変化 足利義満 中国の最新の水墨画を買ったのじゃ。ええじゃろう 8代将軍 足利義政も水墨画大好きだヨ
雪舟 しかし、拙僧はもっと線と面デザインのように描こうと思う  雪村 さすが!それですよ !! 我こそは宮廷お抱えの 絵師・土佐光信! やまと絵といえば土佐派!将軍家も顧客ですぞ 水墨画が好まれる一方で、 こうした鮮やかな絵も定番人気商品でした
豪華絢爛さが戦国武将たちに愛され!祖母は 土佐光信の娘という名門絵師の血筋! そして時は狩野派がその頂点をとったのである!!! しかし長谷川等伯が能登より現れると仕事を取り合い時代を二分
その後、 特に江戸の狩野派は将軍家御用達として絵師の頂点に君臨 長谷川派は等伯の没後勢いを失いますが、祭りや遊郭を描いた作品などに名作を残します 唐絵とやまと絵の両方を活かした新しい表現が生まれたのです わかります!いちご大福とかあんぱんとか抹茶チョコとかそういうことですよね ウーン

Keyword1 唐絵(からえ)

中国の絵画、または中国的主題を描いた絵画。特に鎌倉・室町時代は中国から輸入した水墨画をさしたが、日本で描いた中国風の水墨画も唐絵といった。和製の唐絵は中国の水墨画と区別して「漢画」ともよばれる。

Keyword2 やまと絵

日本独特の情景や表現がみられる絵画。文化の和様化が進んだ平安時代に誕生し、唐絵に対する概念して用いられた。屏風絵や絵巻物などに盛んに描かれ、室町時代以降、宮廷絵師を世襲する土佐派に受け継がれた。

Keyword3 狩野派

室町時代から幕末まで続いた日本画の一大流派。始祖は室町幕府御用絵師の狩野正信。正信は中国の水墨画を手本にした漢画を主とし、息子の元信の代に漢画とやまと絵を統合した一派の様式が確立した。

仏と神が交じり合ったように水墨画とやまと絵が融合する

日本の絵画史は、外からの刺激を受けて変容を続けた歴史です。ただし、新しいスタイルが輸入されも、それまでのスタイルを捨て去ることはありませんでした。
14世紀には墨のグラデーションで風景や人物をリアルに描く水墨画が中国よりもたらされますが、それまでの色彩豊かなやまと絵も描かれ続けます。室町時代は水墨画の「漢」とやまと絵の「和」が交じり合い、絵画表現に奥行きが生まれた時代でした。時代の後半に登場した狩野派は、両者をミックスさせた新しい画風を創造しています。
安土桃山時代には狩野永徳と長谷川等伯が画壇の覇権を競いますが、彼らは豊かな色彩とモノクロームを使い分けて、天下人の威厳を示す豪壮な画風を完成させるのです。

室町時代

日本的な水墨画の誕生 天橋立図(あまのはしだてず)

国宝 雪舟『天橋立図』 16世紀初め/紙本墨画淡彩/89.5×169.5cm /京都国立博物館
寺の名前は書かれていないが、文殊堂や多宝塔の形、石地蔵から知恩寺とわかる 成相寺(なりあいじ) は、山の上に、 本堂や五重塔、多くの伽藍(がらん) が並ぶ様子が描かれている 山の形や道の曲がり方などが 正確で、大内義興の上洛のために 描いたという説も 繊維が不連続になっていることから、紙を張り合わせていることがわかる 800mほど上空から見た、 架空の視点で描かれています 天橋立は股の下からのぞくと異界が見えるとか…

架空の視点で描かれた雪舟最晩年の代表作

大内氏のお抱え絵師だった雪舟は、他国の情報を絵で伝える役目も担っていました。『天橋立図』は大内氏の命を受けて現地を訪れた雪舟が、情報収集のために描いたものと考えられています。中国の技法を消化した雪舟が最晩年に描いた日本的な山水画の名品ですが、紙にはたくさんの継ぎ目があり、描き直しや描き足しの痕跡がみられることから、作品が下絵であり完成品ではないことが想像できます。
また、作品と同じ風景が見られる場所は実際にはなく、雪舟が歩き回ってスケッチした土地の情報を頭の中の「架空の視点」で再構成したものと推測されています。それまでの山水画は見たこともない中国の風景を描いていましたが、日本の風景を水墨画で描いたところが評価されます。

室町時代

デザイン的な風景 日月山水図屏風(じつげつさんすいずびょうぶ)

重要文化財 『 日月山水図屏風』 15 世紀後半~16 世紀前半/紙本金地着色/六曲一双/各147×316cm/金剛寺

無名の画家が描いたやまと絵の伝統の到達点

室町時代に水墨画と並んで制作されていた、やまと絵。その流れは太く、やまと絵の美しい伝統は『日月山水図屏風』でひとつの到達点に至ります。
金剛寺に伝わる本作は、密教の後継者が受ける「灌頂」(かんじょう)という儀式に使われたとされています。右隻に太陽、左隻に月が描かれ、真ん中の海を中心に陰陽説に従って春夏秋冬が循環する構図が示されています。
やまと絵の伝統に根差した日本的な風景を描いた絵ともいえますが、自然を崇高な目で捉えた表現には勢いと迫力があります。また、見えるままに描くのではなく、時間も空間もデザイン化して全世界を一画面に織り込んでいるのが一番の特色であり、自由な表現を特徴とする日本画そのものの魅力が凝縮されています。

うまいのか?これは 迫力ありますね うまくない… うまくないんですがダイナミックな想像力で時間や空間もデザイン化しています

室町時代

「漢」から「和」へ 四季花鳥図屏風(しきかちょうずびょうぶ)

重要文化財 狩野元信『四季花鳥図屏風』より右隻 1549年/紙本金地著色/六曲一双/各162.4 ×360.2cm/白鶴美術館

唐絵とやまと絵の融和次代へつながる表現世界

『四季花鳥図屏風』は、狩野派の礎を築いた2代目元信の最晩年の大作です。父正信はもともと中国の水墨画を規範とする漢画を得意としていましたが、元信はライバルの土佐派が継承していたやまと絵の画風を取り入れ、新しい表現スタイルをつくり出しました。一説では、やまと絵を学ぶために当時の土佐派の長、土佐光信の娘と結婚したともいわれています。
本作は鳥や松、岩などの表現には漢画の手法を取り入れつつ、金彩や濃彩を使うやまと絵の技法を盛り込み、日本の四季を鮮やかに描いています。画面を覆う雲に金箔を貼るなど、全体的にやまと絵の要素が濃く、「漢」から「和」への移行を感じさせます。のちの安土桃山時代の金碧障壁画へつながる作品といえるでしょう。

狩野派初代 狩野正信 室町幕府の御用絵師にはなったけど、立場弱いなぁ 唐絵(水墨画)が得意なんじゃが… 狩野派2代目 狩野元信 どんな注文にも対応できるスタイルを確立!皆、しっかり覚えたら分業で制作するよ! 力強く 華麗 唐絵とやまと絵のコラボ 金箔を! 狩野派4代目 狩野永徳 えっ!? 天才?たしかに天下一だけど元信おじいちゃんが 土台を築いてくれた おかげっていうか… 天下一だけど元信おじいちゃんが 土台を築いてくれた おかげっていうか… 天下一だけど元信おじいちゃんが 土台を築いてくれた おかげっていうか… 天下一だけど元信おじいちゃんが 土台を築いてくれた おかげっていうか… 天下一だけど

御用絵師:朝廷や幕府、大名家に仕えた絵師のこと。お抱え絵師とも

安土桃山時代

単純に、豪快に描く覇者の絵 唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)

狩野永徳『唐獅子図屏風』(右隻) 16世紀後半/六曲一隻/紙本金地着色/222.8×452cm/宮内庁三の丸尚蔵館

時代をよむ天才が気迫を込めて描いた大作

『唐獅子図屏風』は、豊臣秀吉が講和のために毛利家に贈った陣屋屏風だと伝えられてきました。しかし高さ2m を超える異例の大きさから、近年では聚楽第(じゅらくだい)の障壁画として描かれたものとも推測されています。
作者は天才の名をほしいままにし、織田信長や秀吉から重用された狩野永徳です。永徳は狩野派の様式を確立した狩野元信の孫にあたり、信長に見いだされ、時代の空気をよむ鋭さと祖父ゆずりの才能で天下人の求めに応える豪快な絵を描き上げました。その代表例が、画面全体に金箔を貼り付けて描く金碧障壁画です。永徳は金地の上に権力のシンボルとしての獅子を実物大に描き、覇者の威厳になぞらえました。迫真みなぎる時代の雰囲気が、画面全体に表されています。

足利義輝 名門狩野派に生まれ十歳の頃には祖父と一緒に将軍に会ったことも 織田信長 この間の屏風はでかした!次は安土城の障壁画をまかせる 豊臣秀吉 これは毛利さんにあげるから大坂城に壁画描いてね 聚楽第も頼むね 豪快でスケールの大きい作風が当時の権力者に超人気でした

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著者

【著者】矢島新 【絵】唐木みゆ

監修:矢島 新(やじま・あらた) 跡見学園女子大学教授。東京大学大学院博士課程中途退学。渋谷区立松濤美術館学芸員を経て現職。専門は近世を中心とする日本宗教美術史。近年は日本美術を「素朴」や「かわいい」の視点で考察し、注目されている。著書に『日本の素朴絵』(ピエ・ブックス)、『かわいい禅画:白隠と仙厓』(東京美術)、『近世宗教美術の世界』(国書刊行会)、共著に『かわいい仏像 楽しい地獄絵』(パイ・インターナショナル)、『日本美術の発見者たち』(東京大学出版会)など。 イラスト:唐木みゆ イラストレーター。美術家。雑誌・書籍のイラストのほか店舗の壁紙、キャラクターデザインなどで幅広く活躍中 http://tubakiyamall.com/

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