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KEEP MOVING 限界を作らない生き方  武藤将胤

第24回

先手、先手で対処する

2018.08.21更新

読了時間

【 この連載は… 】 「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病をご存知ですか? 意識や五感は正常のまま身体が動かなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす指定難病です。2014年の「アイスバケツ・チャレンジ」というパフォーマンスで目にした方も多いでしょう。あれから約4年経過した現在、まだ具体的な解決法はありません。本連載では、27歳でALSを発症した武藤将胤さんの「限界を作らない生き方」を紹介します。日々、身体が動かなくなる制約を受け入れ、前に進み続ける武藤さん。この困難とどう向き合っていくのか、こうご期待!
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介護のプロによるサポートを具体的に考える

「このままではダメだ。どうすればいいだろうか」
 ALSの患者同士として知り合った、病気の先輩であり、人生の先輩でもある人に相談してみた。その方は気管切開をしているが、視線入力でコミュニケーションをとりながら、たいへん活発に行動していらっしゃる。
 教えられたのは、家族に頼りきらない介護体制の重要性だった。
 家族だけに介護してもらおうとすると、どうしても過剰な負担がかかってしまい、疲弊を招く。肉体的、精神的な過度のストレスが、お互いの関係性に影響を与えるというのは、どこの家庭でも起こることなのだという。これはALSに限ったことではなく、他の難病の場合でも、あるいは高齢者の介護でも同じらしい。
 僕は20代という若年で発症したため、介護保険制度による支援サービスを受けることはできない。しかし障害者総合支援法に基づいて、公的支援を受けることはできる。そういう介護サービスを有効活用したほうがいいと勧められた。
 基本的に、黙っていても行政のほうから何かをしてくれるということはなく、当事者から「どれだけ必要としているか」ということを訴えかけ、ケアマネージャーさんに動いてもらえるように働きかけていく必要がある。
 ALSの場合、症状が進めば、今後いっそうヘルパーさんの介助を必要とするようになる。自分の病状が悪化していくことからは眼を背けたくなるものだが、そこはむしろ逆転の発想で、これから起こりうることを早めに想定してその場合にどうしたらいいか、先手、先手で対応策を考えておくほうが先々に対する不安を和らげることになると、貴重なアドバイスをいただいた。
 早速、訪問介護というかたちでサポートを受けられないか、僕は動いてみた。
 その結果、2017年4月から、ヘルパーさんに来てもらえるようになった。
 先輩の言うとおりだった。「すべてを自分がやらなくてはいけない」という重荷から解放されると、妻の表情はみるみる穏やかさを取り戻していった。
 彼女の笑顔が見られるのは、僕にとって最高の幸せだ。

先手、先手で対処する

 今後起こりうることに対しての対処法は早め、早めに行う―、このことを僕は肝に銘じている。
 2017年6月末、胃ろうをつける手術をした。
 胃ろうとは、口からものが食べられない人の栄養補給のために、腹部に孔を開けて管を通して胃と直結させ、そこから流動食を流し込む装置のことだ。
 まだ、咀嚼機能も嚥下機能も、そこまで衰えていない。食事は口から摂ることができる。現時点では、胃ろうを使うのは溶かした薬を流し込むときぐらいだ。
  だが、身体機能がもっと衰えてからやるよりも、元気なうちにやっておいたほうが身体への負担が少ない。万一、口から水分や栄養が摂取できなくなってしまった場合に備え、先手を打った。

 しゃべれなくなったときのために、音声合成用の声の録音もすでに済ませたことは、Chapter4で書いたとおりだ。
 音声合成の技術が目覚ましく進歩していることは、とても大きな希望になっている。物理的に声を失っても、自分の声でコミュニケーションをとる方法は失わないんだということが、大きな安心材料になった。

 さらに今、僕が挑戦しているのは、脳波の活用だ。
  眼が動かなくなってしまっても、脳波を使ってコミュニケーションができれば、ALSの患者さんたちがいちばん恐れている外部とのコミュニケーションが断たれてしまう状態、「ひとりぼっちで、動かない身体の中に閉じ込められる恐怖」から救い出すことができる。外の世界とつながり続けることができるのだ。
 僕はそういう未来を具体的に思い描いて、次のアクションを起こしている。

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一般社団法人WITH ALS
ホームページ http://withals.com/
facebook https://www.facebook.com/project.withals/
Instagram https://www.instagram.com/withals_masa/

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著者

武藤将胤

1986年ロサンゼルス生まれ、東京育ち。難病ALS患者。一般社団法人WITH ALS 代表理事、コミュニケーションクリエイター、EYE VDJ。また、(株)REBORN にて、広告コミュニケーション領域における、クリエイティブディレクターを兼務。過去、(株)博報堂で「メディア×クリエイティブ」を武器に、さまざまな大手クライアントのコミュニケーション・マーケティングのプラン立案に従事。2013年26歳のときにALS を発症し、2014年27歳のときにALSと宣告を受ける。現在は、世界中にALSの認知・理解を高めるため「WITH ALS」を立ち上げテクノロジー×コミュニケーションの力を駆使した啓発活動を行う。本書『KEEP MOVING 限界を作らない生き方』が初の著書となる。

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